第35話 とある少女は予想外を力で解決する

 レイのパーティーはみんなが素直になったことで連携がスムーズになりサクサクと階層を進んでいた。

 

 現在レイ達は第4層を探索している。

 探索中に接敵すると真田がしっかりとヘイトを稼ぎ、誠と正人がその先に攻撃をする。

 そしてそこに来た別の援軍や取りこぼしを魔法で桜とレイが処理する。

 そんな闘い方をスムーズにこなして探索を進めていた。


「レイさん。前方にまた魔物がいました!」


 そう言ったのは正人だ。

 先程レイが正人を救った後、他のパーティーメンバーも含めてレイのことをさん付けで呼び話し方も敬語になった。

 レイが理由聞くとどうやら彼らは効率よりも尊敬を重んじるんだそうだ。

 レイは彼らに困惑しながらもレイはそれを受け入れていた。


「よしじゃあさっきと同じようにやってみようか。でもいつもは正人が主軸の攻撃をしているから、今回は誠を軸に戦ってみよう」


「「「「はい!」」」」


 全員の返事が揃って戦闘が始まった。今回は巨大な豚の魔物で役割を正しくこなせば比較的簡単に倒せる魔物だった。

 そのため今回レイは魔力感知を行い、隠れているかもしれない魔物を広範囲で探していた。


 レイが索敵をしているうちに戦闘が終わった。そして次の階層の階段に着いたので第五層に移動した。


 そして第五層に入った瞬間魔力感知に何か不自然なものが引っ掛かった。


(ん? この魔力の塊はなんだろう。そこまで反応は強くないけど魔力は物理的にかなり大きい…… しかも結構早い速度で移動してる)


「みんなちょっと止まって」


 レイはそのまま探索を始めようとするメンバーを止め、その魔力を重点的に調べる。


(大きな魔力の前にそこそこ強いけど小さい魔力、これは……人を追いかけてる? でも追いかけられてるというよりは感じがする)


「レイさん大丈夫ですか?」


 桜が心配そうにレイを見ていた。


 思考から戻ったレイは何かがおかしいと思いメンバーに指示を出す。


「今から大事なことを言うよ、しっかり聞いてね。

 まず、君たちは横にある転移門から戻って一度先生達に『第五階層で何が不自然な動きがあって、現在氷川零が対応している』って伝えて欲しい。

それと『援軍よりも他の階層は大丈夫か見て回って欲しい』も追加で伝えておいてね」


 レイは彼らにそう伝えると彼らは困惑していた。


「ほら早く行った!」


 レイがそう促すと彼らは頷き転移門へ走って行った。

 それを見届けたレイは魔力の元へ走っていくのだった。

 そして30秒もしないうちに現場に到着すると黒いマントを被った探索者らしき人物が魔物を引き連れて走っていた。

 そしてレイを認識した瞬間素早くその場から消え、魔物達のヘイトが一斉にレイに向いた。


(この魔物達、倒さず誰かに押し付ける為に用意された気がする。

 と言うことはやっぱりあのマントの人は私を魔物で殺すために待っていた? 

 分からない…… 私を狙っての行動か、無差別か。とりあえずはこの魔物達なんとかしないといけない)


 現在レイの近くの階層には生徒達とおそらく普通の探索者がいる。

 レイが下手に魔法を使うとその人達に危害が加わる可能性がある。

 レイは剣を抜き影響が出そうな魔法を使わずに戦うことを選択する。 


「さて、どうなるかな〜」


 レイの視線の先にはおよそ50体の種類がバラバラな魔物の群れがいた。

 手始めにおよそ0.5秒でおよそ10体を絶命させて、そのまま流れるように次々と斬りながら魔力感知を展開させる。


 すると遠く離れたところに先ほどのフードと同じ魔力を感じ取った。

 そしてレイは魔物を狩り続け、残りの一体を倒した瞬間にレイはその場から消えそのフードを被った人物の目の前に現れる。


「こんにちは」


「!?」


 レイに驚いたフードはその場から逃げようとした瞬間レイに組み伏せられる。

 そしてそのフードにレイは殺気を浴びせながら尋問を始めた。


「ねえ、これは私を狙ってやったの?」


「ひっひぃぃぃぃ!!!!」


 そのフードの中身は男だった。

 その男は涙を流しながらレイから発せられる殺気に怯えて言葉すら喋れない状態だった。


「とりあえずあなたはダンジョン協会に引き渡すから」


 レイがそう言うと、その男は白目になり気を失った。


「さてと、また誰か担いだダンジョンの外に出るよ〜。こういうの何回目だっけな……」


 レイは男の首根っこを掴んで引きずって転移門へと歩いて行った。

 そして転移門をくぐるとその先には教師とレイのパーティーメンバーが心配そうな表情で待っていた。

 そして教師がレイに話しかける。


「だっ大丈夫でしたか!? それにその人は……」


「おそらく今回の件の黒幕だから、ダンジョン協会の人間を呼んでもらえますか?」


「わ……分かりました」


 教師は戸惑いながらもダンジョン協会に電話を掛けた。

 すると10分もしないうちに協会の車が姿を現し、そこから皆川が降りてきた。


「あれっ皆川さんだ」


「今回の通報は近くにいたのと探索学校からの電話だった為何か大事が起きたと判断して私がこの場にきた」


「そうなんですね。大事っちゃ大型かもしれないです」


「そうか、なら車に乗れ。本部で向こうで話を聞く。おい!その男に手錠をかけろ!」


 皆川が部下に指示を下し、レイは皆川の車に乗り込む前にその場にいた関係者に謝罪する。


「ごめんなさい。今日は帰れそうにないのでここで離脱します。詳細は話せそうな事なら後日話します」


「ああ、了解した」


 教師が返事をしたのでレイは車に乗り込んだ。

 そして犯人とレイの事情聴取をする為にダンジョン協会へと車が発進した。

 

 そうしてダンジョン協会本部に到着すると犯人は一度牢屋へ、レイは会長室に向かった。

 レイはエレベーターに乗り込んで会長室の階で降り会長室の扉をノックする。


 するとすぐに入室の許可が降りたのでレイは扉を開き中に入る。


「久しぶりだな、氷川零さん」


「お久しぶりです。会長」


 二人は挨拶をして席に座った。


「で? 今回の件だが一体何があった?」


「今回ですが、先程連れてきた男が魔物を引き連れて走っていたところを発見し、相手側が私に気づいた瞬間私にヘイトが向くようにその場を立ち去りました。

 私を狙った犯行かは分かりませんが近くで私が戦う様子を監視していたので、捕まえて連れてきました」


「そんな事があったのか……

 私の予想だが今回の犯人は一条の関係者の可能性が高い。

 君が生きていることを知り、世間に真実が露呈するのを恐れたことにより殺し屋か闇取引で君を殺すように依頼したのだろう

 おそらく今日君が渋谷ダンジョンに来る情報を仕入れていたのだろう」


「私もそんな気がします」


 宗一郎の予想にレイは賛同した。

 レイはその後の話し合いをして今後の方針を決めた。

 1つは渋谷ダンジョンを学校の生徒以外このイベント中は立ち入れないように規制する。

 2つはレイのパーティーが探索しているところよりも先を他のパーティーが探索しないようにするというものだった。


 レイは納得して話し合いが終わり、皆川に車で家まで送ってもらった。

 そしてレイは他の生徒よりも一足先に1日目が終了したのだった。

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