第34話 とある少女は1日目を迎える
レイは学校に着き、今回の交流イベントのメンバーとの合流場所に向かう。
今回の交流イベントは学校でパーティーが集合し、用意されたバスで渋谷のダンジョンに向かうようだった。
そのため生徒はグラウンドでパーティーが揃うのを待っていた。
レイは合流場所に着く頃にはレイ以外のメンバーは既に揃っていた。
「おはようみんな」
レイがメンバーに挨拶をすると全員が挨拶を返した。
昨日敵意剥き出しだった正人も挨拶を返し、今日は大人しい印象をレイは受けた。
そしてレイは他の生徒からの視線を感じ取り、同じ女子の桜にそっと耳打ちで話しかけた。
「ねえ桜さん、昨日も思ったけど私って結構噂になってるの?」
「はっはい! あの雫さんと一緒にいる上に名前とチャンネル名が一緒ということで、恐らく氷川零はダンジョン配信者のreiだという噂が学校中で広まっています!」
桜が緊張した様子でレイに事情を話した。
「なるほどねぇ」
レイは今回学校の生徒達にバレていることを知ったが、特に何か対応しようとする気はなかった。
そもそもバレた所で特に取材などがめんどくさいというだけで実生活に何も影響がないからだ。
そしてレイは思考を切り替え今回の交流イベントのことを考える。
「それじゃあみんな集まってもらっていい?」
レイが呼びかけるとメンバーが近くに寄ってくる。
「それじゃあバスが出発するまでにおさらいをしておくよ。タンクは真田くんでアタッカー二人が誠くんと正人くん。
それで私と桜さんが後方支援だね」
「ちょっといいか」
役割分担をおさらいしていると、正人から待ったがかけられる。
「どうしたの? 正人くん」
「名前の呼び方だが俺に君付けはいらない、呼び捨てで呼んでくれ」
「それはどうして?」
「報告を効率化できると思ったからだ。それと俺より強いやつに君付けされるとなんだか気持ちが悪い」
正人がそう話すと他のメンバーも自分も呼び捨てでいいと言ってきたので、レイは全員を呼び捨てで呼ぶことになった。
そしてバスに乗り込めという指示が出されたので全員乗り込み渋谷ダンジョンに向かったのだった。
レイ達のバスの席は1番後ろの5人座れる場所だった。レイが窓側に座りその隣に桜、あと男子3人が座った。
そして数十分で渋谷ダンジョンに着き、バスを降りると今回のイベントの生徒達がたくさんいた。
レイは雫を目線で探していると後ろから声をかけられる。
「レイ、今日は頑張ろう」
「あっ雫ちゃん。そうだねお互い頑張うね」
そう会話していると雫のパーティーらしき生徒から睨むような視線を感じとり、その生徒の方を向かずに雫に話しかける。
「ねえ雫ちゃん。私なんだかそっちのパーティーメンバーに睨まれてるような気がするんだけど、私何かした?」
「あぁ……それは多分昨日私の前でレイのことを馬鹿にしたから模擬戦で私がボコボコにしたからレイのことを逆恨みしてるのかも」
「そりゃまた面倒な……まあ私は特に気にしてないから雫ちゃんの好きにしてね」
「分かった、次レイを馬鹿にする発言をしたら首を刎ね飛ばすって言ってる」
「随分と思い切ったね……」
雫の発言にレイはやや困惑しつつ軽い雑談をしているうちに順番にダンジョンに入っていく時間になった。
レイはこの後の入るまでの待ち時間が長そうだと思っていたら、まさかのレイ達はトップバッターだった。
そうしてレイ達は他のパーティーからの視線を集めながら転移門に入っていくのだった。
第1層にくるとここはほとんど魔物がいないいわば待ち合わせ場所のような扱いの階層なので、レイ達は魔物に遭遇することなく第二層に到達した。
第二層から猿の魔物が出現するので、レイ達はしっかり陣形を組み階層を進んでいった。
そして少し移動すると一体の猿生物が姿を現した。
「じゃあまずは、タンクの真田があいつの気を引きつ────」
「たかが猿一体だろ? 俺に任せろ!」
そう言ってレイの指示を無視して正人が剣を抜き一人で突っ込んでいった。
「待って! そいつは一体だけじゃない!」
レイがそう言うも正人は聞いておらず一人で突っ込んでしまう。
猿が正人の存在に気づき鳴き声を発した。その瞬間に横から5匹の猿が姿を現した。
「やべっ」
襲い掛かってきた猿の鋭い爪が正人の皮膚を切り裂こうとした時、全ての猿の腹部に氷が貫通し一瞬で絶命する。
正人は一瞬何が起こったか分からずに辺りを見渡すと、正人の方向に向かって手をかざしているレイの姿が視界に映った。
レイは正人の元まで歩きデコピンをくらわせた。
「いてっ!」
「あの魔物の爪が当たっていたらこんなもんじゃ済まないからね。
第二層だからって舐めてかからないこと。みんなもわかった?」
正人に注意をした後周りに呼びかけると全員力強く頷いた。
「ほら、さっさと立つ」
レイは正人の腕を掴み起き上がらせる。
「今回みたいなことがあっても私なら助けられる。どう? Sクラスってすごいでしょ?」
その言葉を聞いた4人は人生で一番の憧れの存在が決まった瞬間だった。
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