第32話 とある少女は地獄を見た後学校で顔合わせをする

「ふぁ〜めんどくさいよお」


 現在レイは雫の家のソファーに顔を埋めていた。


 レイの在籍している学校は明日から交流イベントがある。

 内容としては1週間Sクラス一人とCとDクラスから二人ずつでパーティーを組み、渋谷ダンジョンで一層から順番に攻略していくというものだ。

 その狙いとしては、CとDはダンジョン経験が少ない生徒で構成されているため、Sクラスはいわば護衛のような役割になっていて、ダンジョンに慣れさせるためのイベントらしい。

 そしてレイは学校の生徒なので絶対に参加しないといけないイベントに気が落ち込んでいた。


「レイ、嘆いていても何も変わらない。大人しくやるしかない」


「わかってるけどぉ……護衛っていっても1層とか絶対にやることないじゃん。絶対暇じゃん!それを1週間なんて……」


「それは私もめんどくさい。だから一緒に頑張ろう?」


「わかったよ……」


 雫に諭されなんとか納得したレイだが、気持ちが落ち込んでいてそのまま家に帰るのは面倒で、お風呂にも入ってから来ていたのでそのまま雫の家に泊まることにした。


 二人でベッドに入り、しばらくして眠ろうと目を瞑っているといきなり雫が抱きついてきた。


「ちょっ、ちょっと?雫ちゃん、暑いんだけど……」


「むにゃむにゃ……………」


「ねっ寝てるしっ」


 実は抱きつき癖があった雫はレイに抱きつき安心したように眠っていた。

 そしてレイは振り解けずに暑苦しさに耐えながら眠ることになるのだった。

 翌朝、雫はレイよりも先に目を覚ました。


(うーん……あれ、なんでレイが……そうだ、確かうちに泊まったんだった。それにしてもレイの匂い、なんか落ち着く……)


 そうしてまた雫はレイに抱きつき二度寝を始めたのだった。


ぎゅうううううう……


「…………んっ?────痛い痛い痛い!!」


 そうして朝から地獄の目覚ましをくらったレイは起き上がり、逃げるようにボサボサの髪で自分の部屋に一旦帰るのだった。


 そして学校に向かっている時に雫がレイに話しかける。


「レイと寝ると睡眠の質が良かった。また今日も泊まっていく?」


「いや…………私はたまにでいいかな……」


 そうして学校に着きホームルームが終わると、チーム分けが発表された。

 レイは顔合わせのためにDクラスの教室、雫はCクラスの教室に向かった。


 レイは教室に入り書かれている席に向かった。そしてそこにいた今回のメンバーに挨拶をする。


「初めましてレイです。今回はよろしくね」


 レイが挨拶をすると今回のメンバーも続いて挨拶をする。


「Dクラスの桜です!」

「同じくDクラスの誠です!」

「Cクラスの真田だ」

「……正人だ」


 今回は報告を効率化する為にお互いにニックネームで呼び合うため、自己紹介は簡潔に終わったのだった。


 そしてパーティーの役職を決めることになったレイ達は話し合うことにした。

 レイは紙を見ながらみんなに希望の役職を聞いていく。


「パーティーの配置だけど、タンクは誰がやる?」


「俺がやる。俺は盾と片手剣を使う」


 真田だけが立候補したのですぐにタンクは決まった。


「じゃあ次にアタッカーだけど、これは二人必要だから誰がやる?」


「はいっ!僕が行きます!」

「俺がやる。コネだけのSクラスは後ろで見とけ」


 元気な誠とレイに敵意剥き出しの正人が立候補した。


「おっけー、じゃあそれでいいこうかじゃあ桜さんは私と後方支援だね」


「はい!お願いします!」


 そうしてレイ達の役割が決まり、レイ達はグラウンドに出た。


「それじゃあ、一応みんなの実力を見たいんだけど……」


「ハッ! コネ入学のお前が見てわかるのかよ」


 正人はバカにするような表情でレイに言った。しかしレイはそれを全く気に留めず話を進める。


「それじゃあまずはタンクの真田くんから私と模擬戦してみようか。今みんな制服だから軽くでいいよ」


「おい! 無視してんじゃねえよ!」


 正人が怒りながら言うとレイはため息をつく。


「……なに?」


「まずは俺からやらせろ。配信でヤラセやるようなヤツに負けるわけねえし、もし俺が勝ったらこのパーティーから抜けろ」


「いいよ、でもその威勢はBクラスくらいの実力にならないとあんまり効果ないよ」


「なんだと!?」


 正人は顔を真っ赤にして両手に剣を持ちレイに斬りかかる。レイはその攻撃を簡単に防いだ。


「なっ!?」


「これに驚くなんて……よく私に喧嘩売ってきたね」


「くそおぉぉぉぉ!!!」


 正人は冷静さを失いがむしゃらに攻撃を繰り出すが、レイはその攻撃を弾き足を引っ掛けて正人を転ばす。

 正人が起き上がりまだ攻撃してこようとするので剣を正人の手から吹き飛ばし、首元に自分の剣を添える。


「まだまだだね。もう少し強くなってから挑んできな」


 正人は悔しそうに顔を歪ませながら剣を拾い後ろに下がった。

 その後他3人は無事に模擬戦を終え、今日の顔合わせは終了したのだった。


 その頃雫も顔合わせをしていた。

 しかし雫は一人の生徒を睨みつけていた。

────時は遡ること1分前。


「いやぁ、雫さんも大変ですね。あんな金魚のフンに付き纏われて」


 模擬戦を始める前にいきなり一人の生徒が雫にニヤニヤしながら言った。


「…………どう言う意味?」


「いやいや、深い意味はないですよ。

 せっかく雫さんはもっと有名になれるのに

 どうせそんなに強くないのにヤラセしてまで強く見せようとする人に付き纏われてる雫さんがかわいそうだと思ったんですよ」


 レイをバカにされた雫は内心怒り狂っていた。そして現在に至る。


「……あなたに人を見る目がないことがわかった。あなたに教えてあげる、私の師匠の強さを」

 雫が睨みつけながらその生徒に言うと相手は怖気付く。

 そして模擬戦をして相手を地面に倒し睨みつけながら雫は忠告する。


「次私の前でレイを馬鹿にする発言をした瞬間、次はあなたの首を飛ばす」


 雫に脅された生徒は、涙を浮かべながら必死に頷くのだった。

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