第53話 とある少女は遠征から帰宅する

 翌日レイ達は北海道を後にし、昼頃には自宅に帰っていた。


 雫は一度実家に戻るという事なので、その後の予定が特になかったレイは八王子ダンジョンへと足を運んだ。

 そこでレイはこの間の戦闘から相手の魔力を利用して戦闘する練習をしていた。


「うーん……やっぱり極端にステータス差があるとおんなじ魔物同士を戦わせても威力が弱いから時間がかかるなぁ」


 レイは岩を魔法で生成して撃ってくる狼の魔物の一体を操ってもう一体と戦わせていた。


 レイは練習を切り上げるとそのまま転移せず走って階層を進んで行った。


 そして何階層か進んだ先で何やら言い争っている声がレイの耳に入ってきた。

 森のエリアだったのでレイは気に隠れてその言い争いの現場を覗き見る。


 するとそこには1人の女の人に男3人が絡んでいるところだった。


「ちょっと私は一緒に探索しないって言ってるじゃないですか!」


「ねぇいいじゃん俺ら強いからさ、もっと強い階層にまでいけちゃうぜ?」


「だから必要ないって言ってるでしょう! それに私今配信中なのにこんなにしつこく言い寄ってきてタダじゃすまないですよ!」


「チッめんどくせぇなぁ、ほら行くぞ!」


 男が女の人の手首を掴んだのでレイは木の影から飛び出て助けに行く。

 そして女の人の手を掴んでいる手を上から掴むと力を込めた。


「いててててて!!!」


 男はたまらず手を離した。


「チッ何すんだよテメェ!」


「いや、無理やり男三人で女の人一人に絡んで連れていこうとしたから止めに入ったんだよ」


 レイの声を聞いた男はニヤリと笑い始めた。


「お前も女じゃねぇか、この際二人とも連れて行くか」


 男達はレイと女の人の周りを囲むように立つ。レイは女の人を庇うように立ち一人の男の腹部を剣の鞘で殴る。

 すると殴られた男は地面に倒れた。


「ぐぁっ!?」


「なっ……てめぇ!」


 残りの二人が激昂して襲いかかってくるのでレイは一人の頭を剣の鞘で殴り、もう一人に回し蹴りを入れて気絶させた。


「よし、ほら逃げな」


「あっありがとうございます!」


 女の人はそのまま森の中を走り去っていった。


「うーん! 人助けもしたしこのまま帰りますかね」


 レイは男三人の首根っこを掴むと引き摺りながら地上に戻り常駐するダンジョン協会の職員に引き渡して帰宅した。


 レイはこの時自分がまさか助けた探索者はとてつもない有名人で、レイはその影響でさらに有名になって行くことを知る由もなかった。



 これにて魔王誕生編は終わりとなります!

 次の章も楽しみにしていてください!

 現在体調があまり良くない日が続いているので更新ペースは少し落ちますのでご了承ください!

 それではまたお会いましょう!

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