131.久々の友人
俺たちが宿舎に帰ってきたのは夕方。ということで、ひとまずスオウさんたちのことはほっといて夕食を取ることにする。さすがに飯食わないと腹減って腹減って。
『ままー、おなかすいたー』
と、タケダくんも言ってることだし。
でまあ、食堂で久しぶりに……ヒレカツ定食頼んでやれ。何かがっつり行きたい気分でさ。
「あら。帰ってたのね、ジョウさん。ここ空いてるわよ」
「はい、夕方に。んじゃ失礼します」
「しゃあ」
『わーい、かんだくんだー』
座る場所探してたらちょうどラセンさんを見つけたので、その隣りにおじゃますることにした。カンダくんもタケダくんと顔合わせて、嬉しそうにふらふらくねくね。この動きは伝書蛇特有なのか、そうなのか。
「太陽の神と季節に感謝します。いただきます」
いやもうマジ腹減った、ということでさっさと食事に入る。揚げたてのヒレカツうまー、これなら女の胃でもペロッと一枚行けるわ。隣のラセンさんは魚の開き定食で、これはこれで美味いんだよね。明日にでも食うかな。
あー、やっぱり帰ってきたって感じするわ。こっちに来て半年くらいだけど、もうすっかり馴染んでしまったよ。この世界にも、女の身体にも。……中身はまだまだ、男だと思うけどさ。
二人と二匹でぱくぱく食事して、一段落したところでラセンさんが尋ねてきた。
「……ジョウさん。王都見てきたのよね」
「あ、はい」
「どうだった?」
どうだった、か。うーん……結局あんまり街中とか見てないしなあ、ということでありきたりな感想しか出ないけど、そこら辺はかんべんしてくれ。さすがにお墓とか、そっちの方には言及しないことにする。
「ああ、何かすごかったですね。主にお城と湖が」
「コーリマ湖はねえ、あれは大きいものね。湖の主は見た?」
「いえ、全然」
『ぼく、ぬしさんみたかったのにー』
「しゃあ」
まだ言ってるのか、タケダくん。というか、チョウシチロウでも腰抜かしたくせにそれよりでかいの出てきたらどうするんだろうな、こいつは。
と。ラセンさんなら、フウキさんのこと言ったほうが良いのか。魔術師つながりで。
「あ、でもお城の魔術師のフウキさんにはお会いしましたけど」
「あら。フウキさん、ソーダくんも元気だった?」
「はい。いきなり頭なでられましたけど」
「相変わらずねー……」
あ、ラセンさんうんざり顔。これは王姫様と一緒で、苦手な相手だな。まあ、悪い人じゃないんだけどあれはなあ。
それに、気になることもあったし。
「ソーダくんも元気でしたよ。ただ……」
「ただ?」
「あまり王都にいるな、早く帰れって言われたんです。タケダくんが、ソーダくんに」
「え」
『うん。いわれたー』
声をひそめて、他の人には聞こえないように話す。さすがにこれには、ラセンさんもびっくりするよな。うん。
タケダくんも全身使って頷いたから、カンダくんがちょっと困った感じでラセンさんと俺を見比べる。蛇の表情分かるのか、って言われそうだけど何となくだよ、何となく。
「そうなの。……ちょっと、他の魔術師にも連絡取って調べてみるわね。直接王都に手を出すより、その方がよさそう」
「お願いします」
すぐに対処しようとするのが、さすがカサイ本家当主。俺なんかよりずっと顔広いし、頭もいいし。魔力馬鹿の俺とはえらい違いだよな。
……修行もだけど、何とかして知り合い増やしたいなあ。こういう時、知り合いに聞くってのがこっちじゃ一番簡単な情報収集方法だし。
「それで、他の人には会った?」
意図的に、ラセンさんが明るい声で尋ねる。今の話はラセンさんに任せろ、ってことだろう。なら、俺はそれに乗るしかないんだよな。
「あ、はい。王都についた時にセージュ殿下が迎えに来てくれたんですが、その時にアオイさんのお父さんにも会いました。何か、大変そうですね……」
「ああ、警備隊長ね。あの方はセージュ殿下を、幼いころから見ていらっしゃるから」
「殿下、昔からああいう性格だと聞いたんですが」
「だから、いい大人が追っかけ回さないと駄目だったのよ。同年代じゃあとても抑えきれないから」
でしょうねー、と思わず遠い目。しかし、普通小さい頃から面倒見てもらってたらその相手には頭が上がらないもんだと思うんだが、王姫様は違うんだな。オウイン王家恐ろしや。
「後、ミラノ殿下にもお会いしました。カイルさん、お兄さんやお姉さんに人気ありますよね」
「よく会えたわねえ……兄弟仲は元々いいのよ。ちょっと事情があって、隊長はコーリマを離れられたけど」
まあ、王太子殿下に会う機会なんて早々無いだろうしなあ。まさか墓参りから帰ってきたら待ち構えてました、なんて普通ねえよ。
事情ってやっぱり、カイルさんが話してくれたあのへんの事情か。あー、兄弟は仲良いのにめんどくせえよなあ、周りの大人って。
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