208.神官長との面会
昼食は、大変滞り無く終了した。
パンにコンソメスープにサラダに白身魚のバターソテー、食後はアイスクリームが出てきた。
「よ、良かった普通で……普通に美味しかった……」
「うむ。妙に豪勢なものが出てきたら、そっちの方が怖かったな」
「魚は近海物だから、新鮮で美味しかった」
感想はこんな感じ。最後のムラクモの一言が、結構でかいものである。
さすがに周りが海だからってことで、この島には神官さんとかだけじゃなくて漁師さんも住んでるらしい。で、その漁師さんが取ってきてくれたお魚がこうやって食卓に並ぶ、とのこと。まあ、お刺身やお寿司はないんだけど、そこら辺は文化違うししょうがねえ。
さて、俺らはまあある程度気分転換できたんだが。
『そーだくんといっしょに、ごはんたべたかったよう』
「はいはい。帰ったら一緒に食おうな」
タケダくんが相変わらずこうである。仲良しだもんなあ、と思いつつもうちょっとしっかりさせないとな、とも思う。……もしかして、シノーヨの大公さんとこでどこ行っても伝書蛇がいる、ってのが影響してたり?
部屋で一服してると、テンクウさんが大きな桶とタオル数枚持ってやってきた。
「お湯とタオルをお持ちしました。面会の前にお使いください」
「済みません、ありがとうございます」
さすがに、こっちに手を出すつもりはないようで、お湯とタオル置いて出てったな。それはそれで助かるので、下着姿になって身体を拭く。……もう慣れとるわい、さすがに。しょっちゅう一緒に風呂も入ってるんだから。
と、俺たちだけ拭くのもアレだな。
「タケダくんも、身体拭くか?」
『うん』
「よし、おいで」
『はあい』
手招きしたらするするやってきたんで、タオルで丁寧に拭いてやる。ついでに喉のとことかくすぐってやると、んーと目を細めた。お前は猫か。
翼も綺麗にしてやったところで、タケダくんは大きく広げてぱたぱたと羽ばたいた。手っ取り早く乾燥させるため、らしい。
『あー、きもちよかったー』
「気持ち良いみたいだな。うんうん、やはり可愛い」
「ま、いくら船の中とはいえちょっとは潮風当たってたからねえ」
ムラクモの反応がいつもどおりで何よりである。
タケダくんも綺麗になったところで、とりあえず服を着替えておこう。この後、神官長さんに会うんだもんなあ。夏物ということで、ブルー系のすっきりした感じのローブにしよう。男もそうだが、女も見てくれ重要。
アオイさんは淡い紫色基調の騎士っぽいマントつけた衣装、ムラクモはネイビーのジャケットスーツに着替える。それぞれ威圧感重視と動きやすさ重視、分かりやすいなああんたら。
それぞれ着替えてよし、と気合を入れたところで、扉がノックされた。
「スメラギ様、よろしいでしょうか」
「あ、はい。どうぞ」
扉の向こうから現れたのは、やっぱりテンクウさんだった。ちょっと畏まった感じなのは、これから行く先が行く先だからだろうか。
「面会のお時間となりましたので、ご案内に参りました。ご要望通り、護衛のお二方も同席可能でございます」
「ありがとうございます」
あーよかった、一対一のガチ対決は避けられた。タケダくんがいるとはいえ、何起きるか分からないもんなあ。よし、と改めて気合を入れる。
「行くか。ムラクモ、くれぐれも暴走しないようにな」
「が、頑張ります」
護衛名目の二人、どっちも暴走しないようにお願いしたいところだけど。いや、俺自身もか。
面会の場は、建物の一番奥っぽい場所にある部屋だった。聞いてみると、神官長さんのプライベートスペースにある応接間なんだとか。あーまー、神殿のでっかい広間とかで会っても困っただろうしなあ。あー、コーリマ王城の謁見の間思い出しちまったぜ、こんちくしょう。覚えてろシオン。
「失礼致します。神官長様、スメラギ・ジョウ様と護衛の者二名、参りました」
「どうぞ」
扉の中から聞こえた声に、何か一瞬ぞくっとした。何だろ、綺麗な女の人の声なんだけど、えーとその、何というか。訳わからん。
「どうぞ、お入り下さいませ」
「いらっしゃい。遠いところをようこそ」
ま、ビビッててもしょうがないので、テンクウさんが開けてくれた扉から中に入った。
……えーと、俺の泊まってる部屋に負けず劣らず豪華な内装はさておいて。これもあれだな、寄付で何とかしちゃったもんだな、うん。
それはともかく、ソファからふわりと腰を浮かせたのは……んー、ぱっと見三十代くらい? 明るいオレンジ系の巻き毛ふわふわな、かなり巨乳なおば……お姉さんだった。ちょっと化粧が濃い気がするんだけど、もしかしてもっと年齢上なのかね。
着てるローブはテンクウさんやコンゴウさんよりも良い生地っぽくて、ゆったりしてる。ただ胸でかいのが分かるくらいには、上半身はフィットしてるんだよね。あと刺繍細かい、絶対高いぞこれ。
「太陽神様の神官長を務めております、キコウと申します。よろしくね、皆さん」
「スメラギ・ジョウです。こっちはタケダくん」
『よろしくー……』
「サクラ・アオイです」
「ムラクモです」
あ、タケダくんが全力で引いた。まあ、これはおそらく厚化粧の匂いだろうな。俺もそうだけど、アオイさんもムラクモもあんまり化粧しないしね。基本的なことはマリカさんに教わったんだけど、めんどくさくてさ。
というか、笑顔が微妙にエロい。シオンの黒いエロさじゃなくて、テレビで見てたようなエロ系タレントの明るいエロさというか。いや、神官長がそれで良いのか、太陽神さんよ。
んなこと考えてる間に、神官長さんはするすると目の前までやってきた。俺たち三人を見比べて、にっこり。おう、厚ぼったい唇真っ赤だな。
「まあまあまあ、皆さん本当に愛らしい方ばっかりで」
「……はあ」
「わたしにできることでしたら、何でもお力になりますわ。安心なさってくださいね」
「は、はいいっ」
その神官長さんは、すべすべした両手で俺の手を包んで、ゆったりと撫でた。お、落ち着け俺、相手は偉いさんだ頑張れ。
背筋を悪寒が走る、ってこういう感覚なんだな。く、くそ、セイリュウさん何とかするためだ、が、我慢しよう。
……てかさ、俺。
何で美人のお姉さんにこう手を撫でられて、サムくなるんだ? これ、もしかしてもしかしたら俺が男でも同じ行動取るとか言うか、この人。
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