第49話 崔は普通の交際をする!
ちょうど、1週間後、倫子と、いつもの店へ。
「女友達の方はどうなったん?」
「キッパリ縁を切ってきた。倫子を不安にさせる要素は無くなった。倫子、今日から僕と付き合ってくれ」
「うん、ええよ」
「いっぱいデートしような」
「最初のデートはどこに行くの?」
「温水プール」
「いきなり水着?」
「うん、いきなり水着、これは僕からのリクエスト」
「私の水着姿、見たいんや」
「見るだけとちゃうで、写真も撮るから」
「まあ、ええか、OK、最初のデートは屋内プールやね」
「うん、OKしてもらえて良かった。倫子はスタイルがいいから水着姿を見たかったんや」
「その後は?」
「紅葉を見に行こうか? 京都とか」
「あ、見たい。京都の名所、調べとくわ」
「任せてええかな? 紅葉の名所を調べといてね」
「それから?」
「クリスマスがあるなぁ、うちは仏教やけど」
「うちも仏教やけど、クリスマスは一緒にいようね」
「うん、倫子と一緒やったら、何をやっても楽しい気がする」
「他には?」
「春は花見に行きたいねん」
「花見、楽しそう。なんだかワクワクしてきた」
「夏は花火や、倫子、浴衣持ってる?」
「あるよ、ほな、花火と夏祭りは浴衣でデートやね」
「浴衣姿、写真に撮りまくるで」
「写真好きやなぁ、まあ、ええけど」
「後は、海とか……ドライブで琵琶湖の湖岸一周とか?」
「ええなぁ、ほな、今日は付き合った記念日やね」
「そう、記念日やから毎年お祝いするで。ということで、プレゼント持って来た」
「何?」
僕はポケットから小箱を取りだした。
「開けてみてや」
「何やろう? あ、指輪や、ありがとう」
「後で誕生日を教えてや」
「あ、そうや、誕生日もイベントやもんね、教えるわ。崔君の誕生日も教えてや」
誕生日を教え合った。2人とも、もう誕生日は過ぎていた。
「誕生日は、来年お祝いやね」
「そやなぁ、まあ、これから長く付き合えれば……」
「崔君、なんで自信無さそうなん、もっと強くなってや」
「いや、僕、女性と付き合ってもいつも短かったから。でも、うん、大丈夫」
「でも、どうしよう、付き合った記念日に崔君が指輪くれたのに、私、何も用意してない。なんか申し訳無いわ」
「ほな、これからホテルに付き合ってや」
「え? いきなり?」
「今日を初めて結ばれた記念日にするねん。付き合った記念日で、初めて結ばれた記念日。1日で2つの記念日や、これは一生忘れられへん日になるやろう?」
「え……でも……」
「倫子は僕に抱かれるのが嫌なんか?」
「そうやないよ、そうやない、崔君なら……ええよ」
「ほな、ええやん」
「帰りが遅くなるなぁと思って」
「門限があるんか?」
「短大を卒業して、今のケーキ屋の社員になってから門限は無くなったけど」
「ほな、ええやんか、家に“飲み会で遅くなる”って電話しといたら?」
「うん、わかった、そうする」
とても幸せな時間を過ごすことが出来た。
毎晩、倫子と電話で話す。最初は、お互いにその日あった出来事について話すのだが、後半はただイチャイチャしているだけだ。くだらないことで笑いあえるのが嬉しかった。これは、僕がイメージしていた“男女交際”なのかもしれない。僕は、普通の交際が新鮮だと感じた。
今度は、友人や知人に“彼女が出来た!”って言ってもいいのかな? 楓の時は、“風俗嬢と付き合ってる”とは言えなかった。聡子の時は、短すぎて言う間も無かった。茜や詩音の時は、“セ〇レが出来た”なんて言えなかった。爽子の時は、“バツイチ子持ちと付き合ってる”とは言えなかった。ソフィアの時も、短かったので言う間が無かった。早くみんなに“彼女が出来た”と言いたい。けど我慢。ちょっと様子を見てみたい。多分、倫子なら大丈夫だと思うのだけれど。
バイト中は真面目に仕事をする。だが、お客さんのいないときは、ちょっとだけイチャイチャしてしまう。そんな僕等を見ている茜の目が怖い。
だが、これこそ僕が求めていた普通の恋愛だ。バイト先が一緒なのも、一緒にいられる時間が長くて嬉しい。それは、聡子も茜も同じだと思われるかもしれないが、ちょっと違うのだ。
屋内プールのデート、ピンクのビキニの倫子に僕は興奮した。写真を撮りまくった。倫子は華奢なのだが、出るところは出ている。スタイルがいい。顔は美人と言うよりもかわいい感じだ。正直、顔だけなら聡子や茜、ひいては詩音やソフィアの方が美人かもしれない。だが、僕は倫子がいいのだ。倫子の笑顔がすごくかわいいから、それでいいのだ。僕は、倫子を気に入っていた。
倫子も僕を気に入ってくれているようだった。前の彼氏が酷すぎたので、余計に僕が良く見えるのだろう。比較の対象が酷い元彼で良かったと思う。僕は倫子から、よく“崔君は紳士的やね”と言われていた。これも前の彼氏が酷かったからだ。おかげで、倫子は普通のことで喜んでくれる。ああ、僕も同じだ。僕も普通のことがたまらなく嬉しい。僕と倫子は、少し似ていたのかもしれない。
プールでもイチャイチャしていた。最初は周囲から浮いていた僕達だったが、その内、多くのカップルが僕達に刺激されたのかイチャイチャするようになった。
ウォータースライダーが良かった。何回も滑った。更に2人を盛り上げてくれた。僕は倫子を後ろから抱きながら滑った。倫子の胸を揉むのを忘れなかった。
「もう、崔君、胸ばかり揉むんやね」
「嫌やないやろ?」
「まあ、嫌ではないけど……恥ずかしいやんか、アホ!」
昼食は、倫子の手作り弁当だった。僕は感激した。
「これ、全部倫子が作ったの?」
「そうやで」
「スゴイ、今すぐお嫁に行けるなぁ」
「どこに嫁に行こうか?」
「僕のところに決まってるやんか」
「良かった。そう言ってくれて」
「手作り弁当、めっちゃ嬉しいわ。ありがとうな」
「沢山食べてね」
「いただきます……うん、美味しい!」
「ほんまに?」
「うん、ほんまほんま、倫子も食べなよ」
「良かった、前の彼氏は、手料理作っても何も言うてくれへんかったから」
「そうなん? なんでやろう?」
「“不味い、外食の方がいい!”って言われてん」
「倫子の料理は美味しいよ。元彼のことは、早く忘れた方がええで」
「うん、今、大切にせなアカンのは崔君やもんね」
「そういうこと、美味しい、美味しい、外食よりこっちの方が絶対に美味しい」
「崔君、ありがとね」
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