第14話 崔は活動を始める!
特急電車で、ひたすら日本海へ。特急列車から見える海がキレイだった。
僕は教習所に着いた。
駅から見ると海がすぐ近くに見えていたのに、着いてみると教習所から海まで送迎車で15~20分くらいだった。
受け付けで手続きをすませて、寮へ案内される。
自分の名前の書いてある部屋を探す。……6人部屋だった。パンフレットには“快適な寮”と書いてあったのだが。まあ、来てしまったら仕方ない。2段ベッドが3つ。なんとか、上の段を確保することに成功した。この6人は、同じ日に入寮したので話しやすい。友人と来てる者も多かった。僕は1人で来た。仲閒がほしい。
この合宿で、絶対に彼女を作りたい!
僕はそう思っていた。それで、まず仲閒を探した。1人でナンパするより、2~3人で行動する方が良いという判断だった。要するに、グループ交際から始めた方が良いと思ったのだ。後になってわかるが、この“グループ交際”は裏目に出るのだった。
ちょうど、同室に2人の男がいた。同世代、話しかけやすい雰囲気を持っていた。僕は、ちょっと下手に出る感じで2人組に話しかけた。
「あの、お2人さん、ちょっといいですか?」
「うん? 何? 君は誰?」
「僕、一人で来たんで、友達いないんです。よければ友達になってくれませんか?」
「ああ、ええよ。俺、小倉高志、19歳。みんなからは“タカ”って呼ばれてる。タカって呼んでくれたらええで」
「俺、坂下雄樹、二十歳」
「坂下さんのことは“先輩”って呼んでるから。君も先輩って呼んだらええから」
「ほな、僕も高志さんのことをタカさん、坂下さんのことを先輩って呼ばせてもらいますね。あ、申し遅れました、僕、崔梨遙です。十八歳の高校3年生です」
「崔か、よろしくな!」
「よろしく~!」
「よろしくお願いします!」
「崔、俺達に敬語で喋らんでええから。堅苦しいのは無しにしようや」
「いや、僕、敬語の方が喋りやすいんです」
「そうか、ほな、まあ、ええけどな」
「ほんでね、僕、男ばっかの学校やから、今、彼女がいないんですよ。それで、ここで彼女を作りたいんですよ。タカさん達はどうですか?」
「おお! おおおお! わかる、わかる、気持ちはわかる! 実は俺も女を探しに来たんや。その為に合宿に来たんや。そうか、崔も同じやったんか」
「タカさん、マジっすか? 気が合いますね。頑張りましょう。出来れば、地元の女の子をつかまえて、2対2とか3対3のグループ交際の状況をつくりたいんですけど、どう思います? 1人で斬り込むのはちょっと勇気が必要なので」
「おお、それ、ええなぁ、ほな、早速、今日の学科でそれぞれ女の子の隣に座って声をかけようや。狙いは地元のお姉ちゃんやな。先輩もそれでええっすか?」
「いや、俺はええよ、お前等だけで遊べや」
「まあ、先輩には彼女がおるからなぁ、崔、俺達で頑張ろうや!」
「はい! よろしくお願いします」
僕達は最初の学科の講義で教室へ向かった。
「崔、タカに美味しいところを持って行かれないように気を付けろよ」
と、先輩が耳元で囁いた。気になったが、気を付ければいいことだろうと、その時は軽く考えていた。僕はタカの実力を見誤っていたのだ。それが、後の後悔の元になるとは、その時は想像もしなかった。
「ここで別行動や、それぞれ女の子の横に座って口説くこと! ええな?」
「はい! 頑張ります」
2人で誰をターゲットにするか物色したが、先にタカが動いた。どうやらターゲットが決まったらしい。めちゃくちゃメイクに凝った、お洒落な服装の二十歳くらいの女性の横に座った。美人だがメイクの濃さが気になる。ツンとした雰囲気、僕なら話しかけられない! タカは必死で何か話しかけている。だが、タカは遠くから見てもわかるくらいシカトされていた。あれはハードルが高いだろう?
僕は逆に薄化粧の女の子を気に入った。美人というよりもカワイイ感じ。華奢なせいか、“守ってあげたい”と思える雰囲気を持っていた。人の良さが顔と雰囲気に現れている。誰からも好かれるタイプだろう。何より優しそうだ。タカが食いついた派手なメイクのお姉ちゃんより、絶対にこの女性の方がいい。それに、この女性なら僕でも話しかけやすい。それでも緊張しつつ、僕はその女性に声をかけた。
「すみませーん! 隣、いいですか?」
「うん、いいよ」
「僕、大阪から来た高校3年生の崔です」
「京都の大学の1年生、大野素子。19歳だから、崔君よりも1つ年上かな。あ、敬語は使わなくていいよ。合宿で来てるの?」
「うん、合宿で来てる。あ、僕の連れが1つ上やから、僕の連れと同い年やね。僕は1つ下やけど年下は好き? 年下は嫌?」
「うーん、かわいい年下は嫌いじゃないよ」
「僕は? 僕、かわいくない?」
「結構、かわいいかも」
「良かった。京都から来てるん? ほな、合宿で?」
「地元がこっちなの。夏休みだから実家に帰って来てるのよ。合宿じゃない。通いで来てる」
「地元の女の娘(こ)なんや、じゃあ、こっちに友達は多いの?」
「うん。地元の友達は結構多いよ」
「ほな、女友達を呼んでくれへん? 僕達と遊ぼうや。こっちは2人」
「うん、いいよ。遊ぼうや」
「それで、いつ遊んでくれるん? 早い方がええんやけど」
「明日でもいいよ。友達を1人か2人連れて来たらいいんでしょ? 大丈夫だよ」
「おお! 連れて来てや。何人でもええで。多いほど嬉しいかも。彼氏持ちでもOKやから、僕達にチャンスをちょうだい」
「わかった。任せて、多分、期待に応えられると思う」
「ほな、任せるわ」
「明日は夕方からでいいよね?」
「うん、ええよ。夕方、何時に来てくれる?」
「5時に正門前で待っててくれる?」
「うん、僕等、2人で待ってるから!」
僕の吉報に、派手メイクに惨敗したタカも喜んだ。
ウキウキワクワク!
タカと2人、正門で5時を待つ。かなり早くから待っていた。待ちきれない。こんなに興奮したのは久しぶりだ。不安よりも期待が大きい!
「まだかなぁ」
「もし、ブサイクやったらどないします?」
「その時は、今日でサヨナラやな」
「もし、美人ばっかりやったら?」
「誰から落とすか悩むやろなぁ、まあ、それは嬉しい悩みや」
「タカさん、お手柔らかに。僕にも美味しいところを残しておいてくださいよ。僕もおこぼれが欲しいので」
「いや、女に関しては手は抜かん。崔、勝負やで!」
「そんなぁ、こっちにもまわしてくださいよ-!」
「おい、来たで!」
運命の車が僕達の前に停まった。僕達はどうなる? さあ、ドラマの始まりだ!
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