第15話  崔は揉む!

 一台の白い普通車が止まった。運命の車だ! 当たりか? ハズレか? 緊張。 

 ドアを開けてびっくり! 女の子が4人も乗っている! 運転席、助手席、後部座席に2人、しかも、タイプは違えど美人ばかり! 大当たりだった-! 車の中はハーレムだ。僕が喜んだのだから、タカもきっと喜んだだろう。


 しかし、後部座席にに既に2人。僕達はいったいどこに乗るのだろうか? 


「乗って! 乗って! 早く乗って!」


 後部座席のドアが開かれる。とりあえず僕等は乗り込んだ。挨拶は後回しだ。

 普通車の後部座席に4人! 密着具合がスゴイ。僕は、奥に座っている女の子に膝枕してもらう形になった。僕はこの時、初めて膝枕というものを味わった。


「後ろ、大丈夫?」


 助手席の素子が振り向く。やっぱりかわいい。


「大丈夫、膝枕が、ごっつ気持ちええわ~!」

「コラ、そんなこと言わないの! 恥ずかしいでしょ、H!」

「しゃあないやんか、狭いんやから。僕のせいとちゃうで」

「もう少しで私の家に着くから、狭いけど我慢してね」


 運転手が振り返った。残念ながら、運転してくれている女の子だけブーちゃんだった。運転してくれてありがとう。でも、あなたはターゲットじゃないよ、ごめんね。


 ブーちゃんの家に着いた。普通より少し大きめの一戸建て。金持ちなのか?

 僕達は中に連れ込まれ、そのままブーちゃんの部屋へ。広めの部屋だったが、6人が入るとさすがに狭く感じる。


 スグに、素子から女性陣を紹介された。


 僕に膝枕をしてくれていたのが英美子、ポニーテールで茶髪、メイクが上手い。目つきが少しだけキツイが、笑ったときはとてもカワイイ。あだ名はわかりやすく“えみりん”らしい。身長は160あるかないか? くらい。パッと目立つ美人タイプ。美人特有のオーラを放っている。ちなみに、残念ながら彼氏がいる。彼氏が羨ましい。英美子と付き合えるなら、僕は腹を切ってもいい。


 もう一人、後部座席でギュギュウになっていた女の子は繭、あだ名はこれまたわかりやすく“まゆりん”。英美子より少し小柄。長い髪にパーマをかけていた。英美子のように目立つタイプではないが、目鼻立ちは整っている。繭もモテそうだなぁと思ったら、やっぱり彼氏がいた。なんだ? 本当に彼氏持ちが来るとは! 素子ちゃん、彼氏のいない娘(こ)を用意してくれたらいいのに。英美子と繭を目の前にして口説けないのは地獄だ。


 運転手は小柄で全体的に丸い。茶髪のショートカット。やっぱり、あだ名は“ブー”だった。彼氏がいないらしく何かと積極的だが、僕もタカもブーを相手にするときは引き気味だった。何故、彼氏がいないか? 聞くだけ野暮だろう。だが、以前は彼氏がいたらしい。その彼氏は内面を重視するタイプの人だったのだろう。


 そして素子。改めて見ると、思ったよりも背が高かった。169センチとのこと。僕の身長と同じだ。顔が小さくて足が長く、スリムなのでカッコイイ。やっぱり薄化粧だったがかわいい。長い髪を昨日は後ろでくくっていたが、今日はくくらずにおろしていた。どちらもよく似合っている。素子には彼氏がいないのだ。


「今日来れなかった娘(こ)があと二人いるけど、また今度紹介するわ」


 と、素子が言った。ということは、まだ期待できるようだ。一体、何人の美人を紹介してくれるのだろうか? 素子と仲良くなって良かったと心から思った。これは僕のファインプレーだろう。タカ! 僕に感謝しろよ! してないのがわかるけど。


 僕は、“このメンバーなら素子がいいなぁ”と少し思っていた。


 3人も美人がいて、やる気が出ないわけがない。僕もタカも場を盛り上げようと頑張った。僕も、当時の人生で1番と言えるくらい頑張った気がする。


 場は盛り上がった。盛り上がりすぎて、僕は何度も英美子に膝枕をしてもらった。そういうノリになるように誘導したのだ。膝枕をしてもらっても、それが笑いになる。無礼講とはこのことか?


 ところが、遂に言われてしまった。


「崔君って、弟みたいでカワイイね-!」


 しかも、ブーに言われてしまった。最悪だ。


「本当だ-!」

「弟みたい-!」


 困ったことに、他の娘まで賛同し始めた。確かに僕以外は全員が1つ年上だが、たった1つじゃないか! “弟扱い”にはトラウマもある。みんなに僕のことを“男”として認識させなければならない。もう“弟扱い”はさせない!


「弟扱いしたら、乳揉むでー!」

「やんちゃな弟だね-!」


 英美子が言った。


「あ、早速、弟扱いしたな!」


 僕は英美子の後ろから乳を揉んだ。勿論、服の上からだが、英美子は怒らずに笑ってくれた。思ったよりも柔らかく、思ったよりも大きかった。


「弟やったら、乳揉んでもええやろ。乳を揉まれたくなかったら、僕を弟扱いするな。僕を男として見てくれ-! 年上って言っても、たった1つやんか!」


 僕はノリで繭と素子の胸も順番に揉んでいった。

 英美子が1番大きくて、素子が1番小さかった。


「崔君、揉んでばっかり、どうして揉むの?」

「弟やから、服の上から揉むくらい、ええやろ? どうせ僕は弟ですよー!」

「ちょっと! なんで私は揉まないの?」


 ブーからクレームが出てしまった。


「なんや? もしかしてブーも揉んでほしいんか?」

「露骨な仲間はずれが嫌なだけだけど」

「OK、ブー! ほな、揉むわ」


 ブーの胸が1番大きかった。


「おお! でかいなぁ!」

「でしょ? 胸は私の自慢なの」


 “お腹も出てるやないかい”というツッコミは無しにした。大切な運転手だ。機嫌を損ねてはいけない。僕達は、一応、ブーにも気を遣った。


 胸が思っていた以上に揉み心地が良くて、思わず“胸揉みマシーン”になりかけていた僕だったが、ブーの胸を揉んだら急に冷めた。ブーの破壊力はスゴイ。僕の気分を何もせずに害してくれたのだ。


 夜、また6人組で教習所まで送ってもらった。スグに帰るかとと思ったが、みんな車から出てきて立ち話。美人達とお喋りするのも楽しい。僕は浮かれていた。


 すると、タカが真面目な顔で話しかけてきた。



「2人で素子ちゃんを誘おうや。15分ずつのツーショット勝負でどうや?」







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