第33話 崔は、生まれ変わる!
“女を忘れるには、新しい彼女を作れば良い!”
僕は楓の言葉を信じてみることにした。楓を失った心の隙間が、別の女性と付き合うことで埋められるのか? 試してみないといけない。ちなみに、僕が楓と付き合っていたことは、まだ誰も知らない。風俗嬢と付き合っているなどと、友人・知人にも、バイト先のスタッフにも、勿論、家族にも話せていなかったのだ。だから、友人や知人は僕のことを、まだ誰とも付き合っていない童貞だと思われている。バイト先では、“崔君は遊んでるのか? 遊んでないのか? わからない”という評価だった。
バイト中、よく会う女性は3人。副店長の風間聡子、23歳。チーフの天野茜、21歳、バイトの短大生の佐倉倫子さん20歳。聡子は長い茶髪を後ろで束ねた、身長160センチ弱のカワイイ系、顔が小さい。朱美は肩より少し上の髪にパーマをかけた、168センチの長身(最初は165~166だと思っていたのだが、もっと高かった。ちなみに僕は169だ)、モデルみたいな体型。一番色気がある。倫子は160センチちょっとのカワイイ系、華奢な身体で、守ってあげたくなる。この3人の誰かと付き合いたい。だが、3人とも彼氏がいる。しかし、亜子は“彼氏がいても関係無い”と言っていた。さあ、どうする? 崔!
チャンスは、或る日突然やって来た。聡子と朱美の会話が聞こえてきたのだ。
「え? 聡子さん、彼氏と別れたの?」
「うん、別れた」
「いつ?」
「1ヶ月くらい前」
「なんで別れたん?」
「友達から人数合わせで合コンに呼ばれたんやけど、合コンに行くって言うたら急に暴れ出してん。ビックリしたわ」
「聡子さん、大丈夫やった? 殴られたりせえへんかった?」
「うん、それは大丈夫やった。けど、八つ当たりで花瓶を壊したりしたから、後片付けが大変やったわ」
「それで別れたん?」
「うん、前から異常なほどヤキモチ焼くから、私の方が疲れてきてたし、もうアカンなぁって思ったから。もっと早く別れても良かったと思う。もう、恋愛じゃなくて、情で一緒にいたみたいなものやったから」
「そやね、前から彼氏が異常にヤキモチ焼くって言うてたもんね」
「そやねん。今度付き合う人は、あんまりヤキモチ焼かない人がええわ」
「せやけど、全くヤキモチ焼かないのも嫌やろ?」
「まあ、そうやけど、適度なヤキモチっていうのがあるやんか。普通のヤキモチ。普通のヤキモチがええやん、そう思わへん?」
「じゃあ、聡子さん、今度は年上と付き合ったら? 年上の方が良さそう」
「うん、そうやね」
「でも、聡子さんは年下が好きやからなぁ」
「そやなぁ、でも、年下ってカワイイやんか、年上と付き合うのにも憧れるけど、私はまた懲りずに年下と付き合いそうな気がするわ。これがアカンのやろうね」
「ヤキモチ焼き過ぎない年下を見つけてや、応援するから」
「わかった。あんまり独占欲の強い男の子はパスするわ。多分、今度は大丈夫!」
交代で休憩をとる関係で、聡子と2人きりになる時間が出来た。僕は勇気を出した。間違いなく、聡子は今、彼氏がいないのだ。早く誘わないと誰かに聡子を取られてしまう。もう、誰かに先を越されるのは嫌だ。
「聡子さん」
「ん? 何?」
「聡子さん、明日と明後日、お休みでしたよね」
「うん、そうやけど」
「突然ですけど、明日、食事に付き合ってくれませんか?」
「え! 崔君が誘ってくるなんてビックリ! でも、突然やな」
「美味しいフレンチの店があるんですよ」
「え? そうなん?」
「ランチが充実してて、人気の店なんですよ。既に、1時で予約は取っておきました」
「急に強引やなぁ、どうしたん? 崔君って、そんなキャラやったっけ?」
「以前から、聡子さんと食事したいと思ってたんです。僕が奢りますから、昼飯、付き合ってください」
「わかった、ええよ。ほな、行くわ」
「じゃあ、12時半に〇〇駅前で待ち合わせお願いします」
「うん、楽しみやわ」
思ったよりもあっさりデートに誘うことが出来た。こんなに簡単にOKされるとは思わなかった。まあ、彼氏と別れてフリーだからだろうけど。
「めっちゃ洒落てるやんか」
「気に入ってもらえましたか?」
「うん、私、これからもこの店に来ると思う。友達を連れてきたい」
「その時は、また僕も一緒に来たいですね」
「本気で言うてる? また私と食事したい?」
「聡子さんと一緒なら、何回でも食事に行きたいです」
「それ、誰にでも言うてるんやろう? やっぱり崔君、遊び人なんやな?」
「そんなことはないですよ。好きな人にしか言いません。ちなみに、経験人数は1人です。信じるかどうかはお任せしますが」
「ほんまかなぁ、でも、そう言われたら、崔君は一途っぽいけど」
「僕は一途ですよ」
食事は最高だった。僕は未成年なので酒は控えたが、聡子にはワインを飲ませた。
デザートとコーヒーが出て来たところで、聡子はほろ酔いになった。
「聡子さん、これ、今日付き合ってくれたお礼です」
僕は、ポケットから小箱を出した。
「何? これ」
「開けてください」
「うわ、ネックレスやんか、高かったやろ?」
「そうでもないです」
「でも、食事に付き合ったくらいで、こんな高価な物は受け取られへんわ」
「でも、受け取ってもらわないと困ります。女性向けのネックレスなので。僕が身に付けることも出来ません。ええやないですか、受け取ってくださいよ」
「もらってもええの? 彼氏でもないのに」
「じゃあ、僕を彼氏にしてください」
「え? それ本気で言うてるの?」
「本気ですよ。さあ、ネックレスをつけてみてください」
「うん、つけてみるね……どう?」
「すごく似合ってます」
聡子は鏡で確認する。笑顔だ。
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