第34話  崔は強キャラになる!

「ありがとう。実は、彼氏からもあんまりプレゼントって貰ったことないねん。だからめっちゃ嬉しい。でも、受け取ってもええんかなぁ? 申し訳無いわ」

「だ・か・ら、受け取ってくれないと困ります。女性用のネックレスなので、僕は身に付けることは出来ません。聡子さんへのプレゼントとして買ったので、他の女性に渡すような失礼も出来ません」

「だって……彼氏でもないのに」

「ほな、僕を聡子さんの彼氏にしてください」

「うーん、どうしようかなぁ…」

「考えておいてください。じゃあ、コーヒーを飲み終えたらカラオケでも行きましょうか」

「カラオケ? うん、ええよ」



 聡子は歌が上手かった。基本的に女性は歌が上手いような気がする。気のせいだろうか? 楓も歌が上手かった。そういえば真亜子も上手かった。僕は歌が下手だったけれど、わざとラブソングばかり歌ってみせた。この想い、歌に乗せた。


「聡子さんに捧げるラブソングやで!」


 僕は下手だが、メジャーな曲からマイナーな曲まで幅広く歌える。あえて、聡子が知ってるであろう有名曲と、知られざる名曲をミックスして歌った。露骨なラブソングしか歌わなかった。聡子は笑いながら聞いていた。


 

 2時間のカラオケが終わった後、聡子が言った。


「今日はプレゼントもらったり、いっぱい奢ってもらって申し訳ないわ。何かお礼がしたいんやけど、何がいい?」

「聡子さんの手料理が食べたいです。好きな女性の手料理、憧れです。リクエストさせてもらえるなら、カレーがいいなぁ」

「ええよ、いつにする?」

「今から」

「え? 今から? まあ、ええけど」

「聡子さんの家ってどこにあるんですか?」

「△△駅の近く」

「ほな、ここから近いじゃないですか、タクシーに乗りましょう」


 僕達はタクシーを止めて乗り込んだ。僕は車を持っていなかったので、タクシーを使うことが多かった。タクシー代をケチって電車と徒歩となると、歩き疲れて雰囲気が悪くなるのではないか? そんなことを考えていた。それに、2人分の料金だと思えば、近距離のタクシーはそんなに高くない。


「あ、駅に止めて。駅前のスーパーで食材を買うから」



 聡子とスーパーで買い物。悪い気はしなかった。


「こうして2人で買い物してると、新婚さんみたいですね」

「もう、崔君、今日はそんなことばっかり言うねんなぁ」

「こういう話は嫌いですか? 夢があってええやないですか」

「そりゃあ、私もラブラブな新婚生活とか、憧れる時はあるけど」

「そのラブラブな新婚生活の相手が僕って、どうですか?」


 なんだかんだ言って、聡子も、悪い気はしていないようだった。



 聡子の家は、ワンルームマンションだった。僕は、聡子が一人暮らしをしていることを知っていた。聡子の家に入るために、“手料理が食べたい”とリクエストしたのだ。実は、これは作戦だった。部屋に入れてもらえたのはポイントが高いはずだ。僕の心の中にまた勇気が湧いて出て来た。さあ、ここからどう攻めるか?


「まだ、夕飯まで時間があるからコーヒーでも飲もうか?」

「いただきます」

「あ、座る場所が無かったら、ベッドの上に座ってくれてもええから」


 ベッドの上に座る。コーヒーカップを受け取り、一口飲む。


「今日はありがとうね、崔君と一緒にいると楽しいわ。崔君、職場とプライベートでは全然キャラが違うんやなぁ」

「そうですね。仕事モードに入ると、仕事以外のことはしないようになりました」

「ネックレス、ありがとうね。大切にするわ。手料理だけじゃ足りへんなぁ、なんかお礼がしたいんやけど」

「ほな、膝枕してください」

「え? いきなり? なんか恥ずかしいわ」

「ダメですか?」

「ううん、そのくらい、ええけど」

「うわっ、聡子さんの膝、めっちゃ気持ちいいです」

「そんな感想言わんといてや、照れるやんか」

「めちゃくちゃ落ち着きます」

「私は、ドキドキして来たわ」

「お酒のせいですか? 食事中もカラオケ中も飲ませてしまったから」

「ううん、お酒のせいやないよ」

「ほな、僕にドキドキしてくれてるんですか? 嬉しいなぁ、男として見てくれるようになったんですね。今まで“弟みたい”って言われていたから嬉しいです」

「弟扱いしてきたこと、もしかして嫌やった?」

「嫌でしたよ。聡子さんには、ずっと前から男として見てほしかったんです」

「でも、崔君はまだ19歳、私より4つも年下やからなぁ、ごめんやけど、弟で我慢してくれへん?」

「弟で我慢することは出来ません」


 僕は起き上がって、聡子をソッと抱き締めてキスをした。聡子は拒まなかった。


「キスしたから、これで男として見てもらえるんじゃないですか?」

「アカンよ、崔君、まだ学生やし」

「スグに社会人になりますよ。僕と付き合ってくれませんか?」

「えー? どうしよう……」

「予定では大企業に就職するつもりです。安定した生活が出来ますよ」

「崔君、ずるいわ、そんなに真剣に見つめられたら困るやんか」



 僕は、聡子の唇を唇で塞いだ。それから、ゆっくりと聡子をベッドに押し倒した。聡子の身体から力が抜けていくのがわかった。







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