第35話  崔は頑張る!

 僕達は、朝まで抱き合った。それは、とてもとても幸せな時間だった。

 朝、僕達は恋人になっていた。



 付き合ってみると、聞いていた話と全然違った。聡子の方が、僕にヤキモチを焼くことが多かった。


「今日、朱美と楽しそうに話してたやんなぁ?」

「今日は、倫子ちゃんと楽しそうにしてたなぁ」

「本当に学校に女の子おらんの?」


 毎日のようにチェックされる。そして、楓の時と同様、聡子の家に頻繁に泊まるようになった。また、半同棲生活。聡子の家に行くのは、聡子からのリクエストだった。合い鍵も預かった。“来れる日は来てほしい”と言われた。


 この理由は、スグにわかった。独占欲と性欲だ。どうやら、聡子はいままで抱き合うことで喜ばせてくれる男性に恵まれなかったらしい。付き合ってきた男との営みは、男が一方的に満足するだけのものだったらしい。その点、僕は楓に育てられた。最初に抱き合った時から、聡子を夢中にさせることが出来た。だから、泊まりに行く度に、何度も激しく求められた。僕はそれにことごとく応えた。


 僕は楓と付き合っていた時、いつもヤキモチを焼いていた。それが、今回は立場が逆になった。僕は、ヤキモチを焼いてもらえるのが嬉しかった。愛されているから、ヤキモチを焼かれるのだと思った。だが、少しでも聡子がヤキモチを焼かずにすむように注意することにした。



 クリスマス。ケーキ屋は忙しい。だから、夜に聡子の家でケーキを食べることになった。ピザやチキンなどが、ローテーブルに並べられた。


「はい、プレゼント」

「え? この前、ネックレスをもらったところやのに、ええの?」

「うん、開けてみて」

「わあ、今度は指輪やぁ。大切にするね。ありがとう。似合う?」

「うん、似合ってるで」

「はい、私からもプレゼント」

「何これ? あ、ネックレスや、ありがとう」

「そのネックレスを私やと思って、ずっと身につけていてほしいねん」

「うん、聡子やと思って大事にするわ」

「浮気したら許さへんで」

「せえへんよ。聡子の方こそ、モテるやろうから心配やわ」

「私は浮気せえへんよ。浮気なんかしたこと無いもん」

「僕、クリスマスを女の子と過ごすのも初めてなんやで」

「そうなんや、女慣れしてるから毎年クリスマスは女の子と過ごしてると思ってた」

「ううん、聡子が初めてやで。今までに付き合った女性って1人だけやもん。聡子が2人目」

「ほんまに? ほな、なんで夜になると、あんなテクニシャンになるの?」

「僕、テクニシャンかな?」

「ビックリするくらいテクニシャンやで。自覚は無いの?」

「今まで1人しか知らんかったんやからわからへんよ。まあ、満足してくれてるならええけど」

「崔君には沢山抱いてほしいねんけど、せっかく付き合ってるんやから、時々は外にも出よか」

「屋内プールとか、テーマパーク」

「テーマパークは賛成やけど、屋内プールって何?」

「聡子の水着姿が見たいねん。それに、テーマパークも行きたい、花火も彼女が出来たら行ってみたいと思ってた」

「ほな、プール行こか? ええよ、水着姿、見たいんやったら見せてあげるわ」

「ほな、次の休みは屋内プールで」

「その代わり、プールの後は抱いてや」

「うん、何度でも抱くで。メリー・クリスマス、僕は仏教徒やけど」



 聡子とのプールは楽しかった。流石に、水着姿を彼氏に見られるのは慣れているようで、あまり恥ずかしがらなかった。聡子の白いビキニ姿、僕は何枚も写真を撮った。撮りすぎて叱られるくらい撮った。


 聡子は、水着になると身体の線がよくわかる。めちゃくちゃスタイルが良い。痩せているのだが、胸はボリュームがあった。そして、男達から“なんで、あんなイイ女が、あんな冴えない男を連れているのだろう?”という視線を浴びる。だが、楓と付き合っていた時に、そういう視線には慣れてしまっていた。


 ウォータースライダーを何回か、子供のように楽しんで、休憩している時に聡子が言った。


「初詣の代わりに、今年はテーマパークのカウントダウンに行こうか?」

「あ、それええなぁ、ほな、チケット取っといてくれる? お金は出すから」

「お金は私が出すで。いつも奢って貰ってばっかりやし」

「アカン、女性にお金を出させるのは嫌やねん。奢らせてや」

「うーん、ほな、お言葉に甘えるわ」

「今日は、宝物を沢山もらったし」

「何? 宝物って」

「聡子の水着写真」

「H!」


僕は、聡子の水着姿を堪能した。裸はよく見ているが、裸より逆に新鮮だった。



 大晦日の夕方からは、テーマパークでカウントダウンのイベント。僕は、初めて女性と新年を迎えた。テーマパークは良い! アトラクションだけで聡子を機嫌良くしてくれる。


「楽しかったね、そろそろ、ホテルに移動しようか?」


 聡子が言った。

 プランには、ホテルの宿泊も含まれている。ダブルの部屋をとっていた。


「うん、ホテルに行こうか」



 カウントダウンイベントは、旅行会社のプランだったので、乗る新幹線が決められていた。朝、その年の最初の営みをして、時間を忘れて激しく抱き合い過ぎたので、もう少しで指定の新幹線に乗り遅れるところだった。



 聡子との恋愛は、僕にとって新鮮だった。楓の時とはいろいろと違う。付き合う女性によって、付き合い方や雰囲気が変わるのだと知った。僕は聡子とのデートが楽しくて仕方が無かった。勿論、夜も充分満足していた。この時、多分僕は幸せだったのだと思う。幸せだと思う度、“いつまで続けられるのか?”不安になる。でも、今は幸せを噛みしめていればいいじゃないか! そう思うようにしていた。







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