第48話  崔は整理をする!

 僕はまず、爽子と会った。落ち着いたカフェで、落ち着いて話をしようと思ったのだ。出来れば円満に別れたい。でも、爽子とは簡単に別れられる気がしていた。


「爽子」

「何? 今日は何か話がありそうね」

「あ、雰囲気でわかった? 爽子は、僕のことをどう思ってる?」

「それが、難しいのよね」

「今日は、正直な意見が聞きたいねん」

「正直、戸惑ってる。7歳下、二十歳、学生、この条件で本気で恋愛しても大丈夫なのかな? っていう不安があるねん。将来のことも、崔君が学生やったらイメージ出来へんし」

「僕は卒業したら大企業に就職するで。それまで、待たれへんのかな?」

「うーん、卒業して社会人になってもらわないと、イメージが湧かへんかも」

「そう、じゃあ、僕とデートしててもつまらないよね?」

「デートは楽しいで。もう、体の関係もあるし。だから、なかなか別れを切り出されへんねん」

「僕と別れたら、スッキリするんとちゃうの?」

「そうやけど、情が湧いてしまってるから、困ってるねん」

「ほな、別れよう。僕達は、出会うのが早すぎたんやと思う」

「本当に、そうやねん。出会うのが早すぎたんやわ。もし、崔君が社会人やったら、また違う結果になってたと思うわ」

「ほな、どうしよか?」

「社会人になって、彼女がいなかったら、また連絡ちょうだい」

「わかった。僕の連絡先は知ってるやろ? そっちから連絡してくれてもええよ」

「じゃあ、それまで、しばらくお別れやね」

「うん、お別れや。でも、爽子と一緒にいられて楽しかったで」

「ありがとう、幸せになりや」

「おおきに、爽子もね」


 爽子とは、傷つけることもなく円満に別れることが出来た。楓との約束を守れた。僕は、“女の子を泣かさない”。



 次は、詩音だった。駅前で待ち合わせ。詩音は車で迎えに来てくれた。そのままホテルに連れて行かれる。まだ、倫子と付き合ってはいない。まずは、性欲が膨らんだ詩音を落ち着かせるために、成り行きに任せて詩音を抱いた。


 満足した様子の詩音が言った。


「何かお話があるんやろう?」

「わかる?」

「雰囲気でわかるわ。今日、崔君ずっと真剣な表情やし」

「詩音さんから見て、僕って何?」

「え? セ〇レやろ?」

「ですよね。詩音さん、今の交友関係は? 男性に限定して聞きたいんやけど」

「旦那がいて、彼氏がいて、セ〇レの崔君がいる」

「旦那様と彼氏がいるなら、僕はいなくなっても大丈夫ですよね?」

「なんで? なんで、いなくなる必要があるの?」

「僕、彼女が出来るんです」

「あら、おめでとう。それで? それがなんで私達の関係に影響するの?」

「え? だって、真剣に付き合う彼女が出来たら、セ〇レは許されないでしょう?」

「私だって、旦那も彼氏もおるやんか。でも、崔君を求めるからこうして会うわけやろ? 崔君も、私と付き合いながら彼女と付き合ったらええやん」

「いや、詩音さんの場合は、旦那様も浮気していて干渉しないことになっているからでしょう?」

「旦那はそうだけど、彼氏には彼女がいるで」

「え? そうなんですか?」

「うん、彼氏は上手に彼女と私の相手をしてるで。崔君もそうしたらええやんか」

「いやぁ、僕は不器用なんで、そんなに上手くやれる自信は無いですわ」

「一途でいたいの?」

「はい、彼女一筋になりたいんです」

「崔君らしいなぁ、でも、それでは私が困るねん」

「セ〇レなんて、またスグに出来ますよ」

「そうやないねん、セ〇レを作るのって難しいんやで」

「詩音さんほど魅力的な女性なら、寄ってくる男性は多いでしょう? その中から選んだらいいですやん」

「そうやないねん、これは相性の問題やねん。相性の合う男性って、意外に少ないねんで」

「じゃあ、僕が合格点をもらえたのは光栄なことやったんですね」

「そうやで、崔君みたいな人、滅多におらんねんから」

「じゃあ、彼女と別れたら戻って来ます」

「ほんまに? ほんまにほんま? しゃあないなぁ、ほな、それで良しとするわ」

「許してくれるんですか?」

「許すも許さないも、もう崔君の中では答えが出てるんやろ? その答えは変わらへんのやろ?」

「はい、すみません」

「別れたらスグに連絡してや」

「はい、すみません」

「ほな、最後のお願いだけ聞いてほしいねんけど」

「何かな?」

「明日の朝まで、私を抱き続けてちょうだい、何回でも。私が本当に満足してフラフラになるまで。そのくらい、いいでしょう?」

「わかりました。全力で愛します」


 とにかく、詩音とも別れることが出来た。“彼女と別れたら連絡します”。それは、明らかにその場しのぎのトークなのだが、それで相手を傷つけずにすむならそれでいい、僕はそう思っていた。楓からの言葉、“女性を傷つけたらアカンで!”が頭の中に響く。



 最後は、茜だった。茜が1番手強いような気がする。

 その日、僕は茜のマンションに呼ばれた。


「早く、早く!」


 よほど楽しみにしていたようで、部屋に入ると茜はスグに服を脱ぎだした。僕も同じペースで服を脱いだ。


 2回連続で抱き合って、ようやく茜は落ち着いたようだった。


「茜さん」

「何? 崔君。もう3回目するの?」

「いや、そうやなくて、お話があるんですけど」

「何? なんで今日は敬語なん?」

「真面目な話なので敬語になるんです。僕、彼女が出来るんですよ」

「いつ出来るの?」

「来週から、正式にお付き合いします」

「あら、おめでとう。って、彼女ってどうせ倫子ちゃんやろう?」

「どうしてわかるんですか?」

「最近、職場でも倫子ちゃんが崔君を見る時の目が違うもん」

「そうだったんですか」

「倫子ちゃんが告白したら、きっと付き合うことになるやろうなぁって思ってた」

「そうだったんですね」

「それで?」

「え?」

「それが私達に何の関係があるの?」

「僕と茜さんって、何なんですか?」

「うーん、セ〇レって言うと生々しいから、Hもするお友達」

「僕は、茜さんとの関係を終わりにしようと思っています」

「なんでやねん」

「だって、付き合うってことは、一途に相手を想うことだと思うので……」

「私だって、彼氏がおるやんか。崔君も、彼女と私、両方と付き合ったらええねん」

「いや、そこはキッチリしておきたいなぁ……」

「私、崔君から離れへんで。崔君がいないとずっとモヤモヤしてしまうから」

「いや、それなら他にセ〇レを作ったらよいのでは……?」

「簡単に言わんといてや、セ〇レを見つけるのって大変やねんで」

「茜さんほどの美人なら、寄ってくる男は多いでしょう? その中から選べばいいだけですやん」

「それやったら、何人もの男に抱かれて相性を確認せなアカンやんか、そんなん嫌や」

「でも、茜さんは僕を見つけましたよ」

「それは、聡子さんから夜の崔君のすごさを聞いていたからやんか」

「お願いです、僕を自由にしてください。解き放ってください」

「もう、私の体には飽きたってことなん?」

「いえ、何度抱いても飽きることはありません。茜さんは、すごくイイ女です」

「ほな、私にはまだ興味あるねんな」

「あります」

「わかった、別れてあげる。その代わり、倫子ちゃんと別れたら、スグに私のところに戻っておいでや」

「はい、戻って来ます」

「崔君」

「はい」

「早く別れろ!」

「えーっ、勘弁してくださいよ。



 とにかく円満に別れることが出来た。これで僕は自由だ。堂々と倫子と付き合うことが出来る。みんなを傷つけないで別れるのは大変だった。だが、気を取り直して、僕は買い物に行った。







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