第38話 崔は抱く!
「僕、どうやった? 茜さんから見て合格? 不合格?」
それが1番気になっていた。僕は全力を尽くした。終わったらベッドに仰向けで寝転がる。激しかったので、少し肩で息をしている。茜は僕の腕枕。僕には、茜が今までにどんな男と付き合ってきたのかわからない。僕のテクニックは茜に通用したのだろうか? 不安だった。僕よりも上手い男と過去に経験があれば、僕は不合格になってしまうだろう。 こういうのは、過去の男達と比較されてしまうと思う。
「スゴイ……」
「え?」
「こんなにスゴイの初めてやわ。崔君、最高」
「良かった、満足してもらえたんやね?」
「大満足やわ。今、私、グッタリしてるもん。余韻に浸ってるねん。それにしても、聡子さんはよく崔君を手放せたなぁ、不思議やわ」
「もしかして、茜さん、僕を手放したくないって思ってくれてるの?」
「私、もう崔君を手放されへんわ」
「ほな、僕は茜さんの彼氏として合格点なんやね?」
「ごめんやけど、崔君は私の彼氏にはなられへんで」
「え? なんで?」
「彼氏はおるから」
「別れて僕と付き合うとか、無理なんかな?」
「無理やねん。彼氏、金持ちのボンボンやから、将来のことを考えたらキープしておきたいねん」
「じゃあ、僕は?」
「ごめん、セ〇レになってくれへん? 彼氏、めちゃくちゃ下手くそやからストレスが溜まるねん。時々、崔君が抱いてくれたら嬉しいねんけど」
「でも、それやと茜さんが浮気してることになるんじゃないの?」
「大丈夫、彼氏も一回浮気してるから、これでおあいこ」
「なんか僕って、微妙な立場やなぁ」
「なんで? 時々私を抱けるんやから、悪い話ではないやろ? それとも、私、そんなに魅力が無いんかな?」
「いやいや、めちゃくちゃ魅力的やで。茜さんキレイやし、スタイルも良いし、正直、めちゃくちゃ抱き心地がええねん」
「また抱きたいと思う?」
「思う。千回でも一万回でも抱きたい」
「じゃあ、セ〇レということで」
「わかりました。もう、それでいいです。また茜さんを抱くには、セ〇レになるしか無いんでしょう?」
「ほな、早速もう一回」
「わかりました。全力で抱きます」
彼女を作りたかったのに、セ〇レが出来てしまった。正直、ガッカリだったが、これからも茜を抱けるのは嬉しい。複雑な気分だった。だが、まあ、損はしていないだろう。いや、もしかして得をしているのだろうか? しかし、ラブラブな恋愛を望んでいたのに、これでいいのだろうか? と思うこともある。茜が僕と付き合ってくれたら解決するのに。僕は茜の彼氏の金持ちボンボンに腹が立って仕方が無かった。金持ちボンボンにヤキモチを焼いても仕方がないのだが。それでも焼いてしまうのが男心だ。いや、女性でも同じかもしれない。2番目というのは嫌なものだ。
僕達は、身体だけの関係を続けた。月に二回くらい、茜から誘われるので、その度に手を抜かず全力で応えた。聡子といい、茜といい、僕のテクニックに満足してくれる。女性を満足させるなんて、一年前では考えられないことだった。僕は、いろいろ教えてくれた楓に感謝した。そして、楓のことはまだ忘れられなかった。
だが、念願の花見デートは茜によって実現した。彼女ではないので複雑な気分だったが、桜も青い浴衣の茜も美しく、僕は花にも茜にも見惚れたのだった。浴衣には早い季節だったが、茜の浴衣姿を見たかったので僕がリクエストしたのだ。浴衣の上に、羽織を着てもらった。勿論、浴衣姿の茜の写真を撮りまくった。全部、青春の思い出だ! その時、正直、僕は茜と夏まで関係を続けられるか自信が無かった。だから夏を待たずに浴衣を着てもらったのだ。“浴衣は夏やろう?”と言われたが、僕が頼み込んだので茜はOKしてくれた。茜は、悪い人間ではない。
「崔君、桜、めっちゃキレイやなぁ」
「キレイですね。素敵な女性と花見に行くのが夢だったんです。夢が1つ叶いました」
「崔君の夢を叶えてあげられたのなら、良かったわ」
「桜よりも、茜さんの方がキレイですよ」
茜は笑っていた。そして、ジロジロ見られる。また“なんでこんなイイ女が、こんな冴えない奴と一緒にいるのだろう?”と思われているのだろう。もう、そういう視線にもスッカリ慣れた。僕がイケメンだったら、人生は変わっていただろう。だが、イケメンじゃない男が素敵な女性を連れて歩くのも楽しいのだ。世の男共よ、僕を見ろ! 僕は(多分)勝ち組だ! まあ、この時期に浴衣というのも目立つ原因だったような気もするが。
花見の次は、屋内プールに行った。勿論、茜の水着姿を見たかったからだ。青いビキニ姿の茜の姿は何枚もの写真におさめた。彼氏になることは出来ないが、茜は僕の様々なリクエストに応えてくれた。
しかし、セ〇レという立場は微妙だ。セ〇レという立場にまだ不満を抱きながらも、茜との関係を続けていると、倫子に話しかけられた。僕は楓と別れてから、女性スタッフと会話をすることが増えたので、話かけられるのは珍しいことではないが、その日の倫子は真剣な表情だった。
「崔君、今日、バイトが終わったらすぐ帰るん?」
「いやぁ、特に予定が無いので、何も無ければ帰りますが、何かあるなら帰りませんけど、何かあるんですか?」
「バイトの後、一緒に食事とかどうかなぁ?」
「あ、いいですよ。行きましょう」
「じゃあ、行こうね」
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