第30話 他ダンジョン捜索
自室に戻り体と頭を休める。
ダイブしてすぐに動き過ぎた。
少し休憩して次の行動に移ろう。
「何してるんだ?」
「休憩」
「そうか」
カミ子は部屋に入って来てオレを見るなり尋ねて来た。
そのため、返答しようとしたが、答えることすら億劫に感じて単語で返す。
我ながら怠惰にも程がある。
ただカミ子は咎めることもなく、ただそれを把握して自身も寛ぎ始めた。
まだ固い椅子ではあるが、ずっと立っておくことよりはいい。
カミ子もそう感じているためか、今も脱力してだらりと座っている。
むしろオレよりもだらけきっている。
それからオレたちは無音の中でボーッとする。
ただ数分後には動きたくなり、オレは休憩を終えることにして行動を開始した。
「カミ子。黒狼と灰狼の長たちを呼んできてくれ」
「動きたくないからか?」
「いや、獣人を動かす準備のためだ」
「わかった」
始めは疑ったカミ子であったが、理由を告げると雰囲気を変えて部屋を出て行った。
念話で伝えてもよかったが、面と向かって召集されれば少しは重要度が上がる。そんな気がしてカミ子を行かせた。
まあ、まだ直接指示を出せるほど信用していないし、関係がないのもある。
実質カミ子が組織のトップでそれをオレが操る形に近い。
無駄な人間関係はカミ子に任せて自由に行動する。
かなりクズっぽさがあるが問題ないだろう。
そうやって身を隠して支配するのが目的でもあるからな。
「連れて来た」
「ありがとう」
「失礼します」
カミ子が扉を開けて入ってくる。
オレは感謝を伝え残りの二人に視線を向ける。
二人は同時に畏まって入室した。
「急に呼び出してすまないが、お前たちに任務を与える」
「任務、ですか?」
「ああ。領域外に出向き大陸の地図作成と、ダンジョンの捜索だ」
「……それは重大ですな」
初めてにしてはかなり重要な任務内容。
二人の長たちはそれを理解して重い雰囲気を醸し出す。
正直やめて欲しいが仕方ない。
「そんなに気を張るな。食料はこちらで用意するし、
「はあ……」
「嫌か?」
納得のいかない二人の態度に少しばかりイラッとする。
やはりオレには統率力が足りないらしい。
少し八つ当たり気味になりながらも二人の長たちの返答を待つ。
「いえ、一つ疑問がありまして」
「何だ?」
「ヒロト様は何を目指しているのでしょうか」
ふとそこで自分が何も伝えてないことを思い出した。
言われた通り、目的を全く説明していなかった。
オレはそれに気づき、二人の長に宣言する。
「この世を支配する。それがオレの目的だ」
「それは、まぁ……」
「これでいいだろ? 話を続ける」
何か言いたそうな含みを持たせていたが、そこは無視して話を続けた。
黒狼の集団をブラックとし、灰狼をグレーと命名し呼びやすくした。
他にも領域外に向かうのは男だけとし、行きだけで最高七日の制限をかけた。
近場が分かればそこから徐々に広げていけばいい。
そこから情報収集をして次、また次と進めばいい。
それにそこまで急いでいる訳でもないため、向かう男たちに気張らなくて良いことを伝えるようとも告げた。
二人の長が部屋を出ていく。
「失礼しました」
それをオレは眺め次の行程に移る。
獣人を領域から出すともしもの時の戦力が減る。
後々ゴブリンたちも街へ向かわせるため、手薄になった領域を守るものが必要だ。
それを考え、オレは結界を張ることでこの問題を解決することを決めた。
効力は認識阻害と侵入者通知を兼ね備えたもの。
オレとカミ子にのみ扱えるものにして悪用を防ぎ、混乱が少なくなるように設計する。
共有してできた領域内の地図を見ながら結界を張るための装置を設置していく。
円で囲むように、等間隔に地中深く陣を刻む。
地上には分かりやすく大樹を生やすことで目印とした。
その際に新たな魔法、成長促進を取得した。
地面に植え替えた木を大きくしなければならず必要だったが、他のことにも使えそうで得した感じだ。
結界を発動させる頃には既に空も暗くなり始めており、その日の作業はそこで終了した。
翌日。
結界が機能しているか確認し、ゴブリンたちの状況を確かめる。
昨日のことがあって映る者たちの顔つきは皆気力に満ちている。
歩く速度も心なしか速く前傾に見える。
やる気は十分にあるようだ。
恐らくゴブリンリーダーのゴーサインを待ってる感じだ。
今日は一日ダンジョン運営に集中できるため、ゴブリンリーダーと共に計画を進める。
まずは、いつもの捜索範囲の中間地点に小拠点を幾つか設置すること。
オレは念話でゴブリンリーダーに実行開始を告げる。
「⦅いつもの捜索範囲の中間地点に小拠点を幾つか築け⦆」
「⦅侵攻ですか?⦆」
「⦅そうだ。言った通り徐々に広げていけ。ダンジョンモンスターであるお前たちが生息する範囲は、オレの力が使えるようになる。以上だ⦆」
「⦅なるほど。了解しました。すぐに号令を掛けます⦆」
ゴブリンリーダーは念話を切り近くのゴブリンに侵攻開始を告げた。
水晶から見えているため、そのゴブリンが他の伝令役に伝えているところもバッチリ見えている。
やはり統率力が違うな。
次々と広がっていく話が熱気を生み、それは映像越しでも伝わってくる。
「ちゃんとしてるな。中間で指揮する者もいる」
外に出たゴブリンたちの様子を眺め、命令がちゃんと伝わるような動きになっており感心する。
周囲を見張る者。指揮を取る者。材料を集める者。建築する者。
多くの者たちが役割を与えられ、効率よく動き拠点が作られていく。
ただ拠点が作られることに時間はかからず、ものの数十分で完成した。
同じような時間に他の場所の拠点も完成する。
気力と体力、統率力など、様々な力が働いた結果途轍もない速さで第一目標を達成する。
「いいね……いいよ、このまま次だ」
オレはその速さに高揚し、更なる段階へと移行することを決める。
「⦅もう一段階進める。そこで様子を見る⦆」
「⦅分かりました⦆」
ゴブリンリーダーに早速念話をして行動を開始させる。
先程と同じように、ゴブリンたちは素早い動きで進軍していく。
前を進むのは強者たち。
その後ろに指揮者、拠点建築者、護衛兵、偵察隊と続く。
指揮者が前に止まるよう告げ、全体の進軍も止まる。
そこでもう一つ声を上げ、拠点作りが開始された。
オレはその間に手前の拠点へダンジョンから伸びる通路を作成する。
「⦅通路を完成させた。ヒヨッコたちを移住させろ⦆」
「⦅了解です。メスたちも同行させます⦆」
「⦅ああ、それでいい。強者は交代で最前線とダンジョンに配置しろ⦆」
「⦅分かりました⦆」
念話で指示を出して数秒。
すぐにゴブリンたちは動き出した。
配置は完璧、住み心地も良さそうだ。
このまま数日置きに領域を広げていこう。
ゴブリンの成長スピードは速い。それも桁違いに。
だから街近くに強者は配置しない陣形を取る。
今は成長させるために最前線にも配置するが、どうしたって頭打ちになる。
そうなればダンジョン内で互いに高め合ってもらう。
それまではこのまま突き進む。
偵察隊も居るため、近くの地形や街の近辺まで地図を作成できる。
時間はあるためじっくりやっていこう。
最終的には街に近づきそこからは地下を掘るように進め、地下都市を密かに築く計画を発動させる。
街のスラムにも道を繋ぎ食うに困る連中を攫う。
その者たちには食事を与え教育を施し、ある程度教養が身につけば街へ戻し活動させる。
情を使って懐柔する作戦だ。
世話は獣人たちに任せ、数人の人間はオレと契約して金を儲けさせることで街を牛耳っていく。
これと同じことを他ダンジョン付近でもやっていき、大陸の殆どの街や国をオレの支配下に置いていく。
大陸の地図は獣人のおかげで徐々に完成に近づいている。
着々と目的に近づいているのだ。
オレはそれを再確認して大陸を支配した未来を思い描いた。
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