第18話 早い別れと新たな冒険




 一夜明け、オレは進歩した集落を見渡すため起床する。

 横にはカミ子が寝ており、小さな寝息を立てている。


「そうだったなぁ……」


 オレは昨日のことを思い出して呟いた。

 昨日は夕食を共に作り、一緒に食事をした。

 その後、マサキと今後について話してすぐに眠りについた。


 そこまでは良かったのだが、カミ子が一人部屋から起きて来て布団に潜って来たのだった。

 一瞬警戒したが正体がわかればそれも無くなり、自然と受け入れてそのまま眠りについた。


 自分より小さい子。

 それに、カミ子は人間になって短い。漠然とした不安があってもおかしくないのだ。

 それを見極めれらなかったオレの失態だ。


「どうするかねぇ……」


 オレはそう呟きながら寝床を出て、建物からも出た。

 歩きながら小説や漫画でよく見た生活魔法、その中の清潔クリーンを真似して使い、現実世界で行う習慣をサッと終わらせた。


「建物は結構あるな。デカいのが此処合わせて四つ。衣食住関連なのは間違いないが……全体的に貧乏感漂ってるな」


 全部が木で作られた建物で石すら使ってない。

 いや、すぐにアップデートするからこれでいいのか。


 次は組織の者たちの家の改善が必要だろうが、そこはマサキに任せることで口出しはしないでおこう。

 アイツもやりたいことがあるはずだしな。


 ただ、何か違う気がする。

 裏の人間、支配者になることに文句はない。

 しかし、どこか気に食わない。


「ああ……そういう、ね」


 オレはその何かに気づいて思わず言葉をこぼした。

 少し考えればわかる簡単な問題だった。

 それは、オレ以外の誰かが混じってるのが気に食わない、ということだ。


 それはマサキでも関係ない。

 組織の運営を任せたものの、自分の思うように動かせないというのがストレスなのだ。

 できるだけマサキに合わせて来たが、もう限界のようだ。


 アイツの望みである無二の友人を作ることは、関係を持っていればいずれ叶うもの。

 これに関して、オレもマサキも少し勘違いをしていたのかもしれない。


 別に全てを曝け出すことが無二の友人になるとは限らない。

 それに、本当に無二の友人を欲しているのかすら怪しい。


 アイツの現実での状況は知らないが、今現在遊ぶ友人が居なくて寂しかったことを、無二の友人が居ないと勘違いしているのかもしれない。

 まあ、それはオレも同じかもしれないが。


「とにかくこの場所、人はマサキに渡して別に動くか」


 そう決意をすると同時に、小屋ぐらいの建物から三人組が起きて来たのが見えた。

 真面目だなと感心したのも束の間、その三人は寝ぼけていた顔をすぐに変化させ、敵を見る目でオレに突撃して来た。


「おっと、どうしたどうした」

「誰だ、貴様っ‼︎」


 初撃を軽く避けて、いきなりの攻撃に若干戸惑いつつ口を開く。

 しかし、返ってきた言葉は敵意剥き出し。


 マサキと同じくトップの立場にいながらどうしたものか。

 そう考えて対処に困ったが、オレの存在を尋ねる言葉で誤解されてることに気づいた。


「髪か……」


 白髪になった自分の髪を引っ張り確かめながら答えを口にする。

 しかし、今此処でそれに気づいているのはオレ一人。

 どうするべきか……。


「説明するのも面倒だし、組織の奴らはオレに懐いてないしな……今すぐここを抜け出すのが楽だな」


 答えを出すのにそこまで時間は掛からず、向かってくる三人を気絶させる。

 そこから一度建物に戻り、マサキにそれを伝えために部屋を訪ねた。


「マサキ。オレとカミ子はここを出て行くことにした」

「んあ? 何て言った?」


 寝ぼけたマサキは聞き返す。

 その姿を見てちゃんと伝えるのも面倒に感じたオレは、矢継ぎ早に理由を告げた。


「ここの人間たちはお前が好きにしろ。オレはカミ子と別の場所で組織を立ち上げる。後、連絡手段が手に入ったら一度顔を見せる。それじゃあ」


 言い終えると扉を閉めて自室だった場所に向かう。


「カミ子……起きてたか」

「うん」

「ここを出る。冒険に行くぞ」

「うん」


 どこか気のない返事に違和感を感じながらカミ子を背負い、建物を抜け出して集落を離れる。


 どうやら三人以外の組織の者たちはまだ起きてないらしく事件になっていない。

 今のうちに姿を暗ますのが良さそうだ。


「どこに行ってるの?」

「やっぱり寝ぼけてたか。あそこには戻らない。冒険するのさ」

「冒険。いいね」

「策は考えてるから面白くなるぞ」

「楽しみだぁ……」


 カミ子はそう呟くとまた寝てしまった。

 無理に起こしてしまったのと、もしかしたら安心したからかもしれない。

 ただ、マサキが理解できたかが心配だな。


 あんな感じでやっておいて心配とはおかしな話だが、こちらに気を取られず組織の運営をサボらずにやってくれることを願おう。


「とりあえず水と寝床ぐらいかな」


 カミ子の重みを感じながら森の中を走り、必要なものを考え口にしていく。

 最低限のものがあれば魔法でどうにかできるためそこまで心配する必要はないだろう。


 無属性魔法の可能性に気づいてしまったため、それに頼り切って怠惰になり過ぎないようにしないとはいけないが。


「今のところ順調だからなぁ……まあ、何も無いことがスムーズに進行できるからいいけど」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る