第49話 方針転換
新人が取っていた宿に向かい、各拠点からの報告を受ける。
まずは第一拠点。
「こちらは特に変わった様子はないですね」
「そうか。噂や小さな変化も無いか?」
「あー、噂が一つありました。森に向かった冒険者の性格が変わる。という噂なんですけどね」
「そんなかことがあるのか?」
噂であるため追及してもあまり意味はないと思うが、少しでも情報を得るため話を聞く。
「僕も最初は何を言ってるのか分かりませんでしたが、交流のある冒険者パーティーが噂の出所ですので、信憑性は高いと思います」
「どんな状態から変化したとかは分からないか?」
「すいません。そこまでは分からないです」
「了解。一度冒険者に依頼して調査をしてもいいかもしれない」
聞いた感じ、まだ一組のパーティーからの情報であるため疑わしい。
確証を得るためには何組か森に行かせないといけない。性格が変わってしまう可能性があるため心苦しいが、冒険者には調査を行ってもらおう。
「分かりました。何組か募って、バラバラの日程で調査させます」
「ああ。報告は以上かな?」
「はい。以上です」
「そうか。今後は緊急事態や、俺からの指示があっての結果報告以外は念話で報告しなくていいようにする」
「了解です。次は調査報告で」
そこで念話をやめる。
一番最初に拠点を置いた町。そこは仮拠点から南から迂回して東に向かったところにある。
ヒロトが真東に向かったため、何かあればと思ってその方角に決めた。ただそれは徒労に終わったがな。
「何かあったか?」
気を取り直して第二拠点のリーダーと念話を繋げる。
「お疲れ様です。そうですねー…………人が増えた、ぐらいでしょうか」
「何処からか分かるか?」
「それが不明なんですよね。聞き込みをさせましたが気づいたらという感じです」
「そうか。盛んになり始めた業種を調べてくれ。そこに入って来た人間たちがいるかもしれない」
「分かりました」
その後は第一拠点のリーダーに言ったように、今後の動きを伝えて念話を終える。
最後に少女たちがいる町の商会と念話を繋げる。
「問題は起こってないか?」
「問題はないですね。皆意欲的で冒険者の方とも仲良く過ごせています」
「そうか。なら一つ探って欲しいことがある」
「何ですか?」
「新しい食べ物や飲み物が、何処から仕入れられているか探ってみてくれ」
「了解です」
それで毎日行っていた報告会を終えた。
報告会を辞める理由は幾つかある。一つは、単純に疲れるから。もう一つは、楽しめなくなって来ていたからだ。
この世界に入ったのも、旅を楽しむ、美味しいものを食べる、無二の友人を作るということ。
どれも進行中ではあるが、急ぎ過ぎた感があり楽しめなくなっていた。ヒロトはそこが上手いのか、かなり楽しそうだった。
任せることが出来る部分は甘えよう。そう決めて、町に定住する期間を作ってもいいと考えた。
「もう一度学校に行くのも面白そうだな」
現実世界では既に終わった学生生活をもう一度味わうのもいい。
それに、サキもどうやら着いてくるみたいで、正直このまま旅を続けても良くない気がした。
親心が自分の中にあるのかもしれないな。
「サキに伝えるか」
俺は部屋を出て、下で飲み食いしている仲間の元へ向かった。
「サキはいるか?」
「何だ」
「お前に話がある」
そこで一瞬張り詰めた空気が流れる。
「学校に行ってもらいます」
「学校?」
「「おお〜」」
部下たちの揃ったリアクションを無視して続ける。
「この町で暮らして、いろいろ勉強するってことさ」
「そうか」
「マサキさん、旅はどうするんで?」
「ここで人材を集めようと思ってる。この町を本拠点にして販路を繋いだりしようかなってね」
「おお〜、いいですねぇ」
今後の動きも伝え、話は盛り上がって行く。
サキは学校に行くことを拒否するでもなく簡単に了承した。
深い話をそこまでしていないため、サキのことはよく分からない。
ただ気が合うのは確か。それもゆっくり知っていこう。
「明日は物件探しからだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます