第51話 入学
早速四日間を利用して、どこの学校へ行くべきか検討を始める。
チャヤナには複数の教育施設があり、子供から大人まで学ぶことができる。
初等部から中等部までをどうやら義務化しているようで、サキはここに住むことになれば最初から学校へ行くことになっていたようだ。
「どこに行きたい?」
「う〜ん」
役所で探した紹介パンフレットを並べ、サキは悩んでいる。
まあ、分からんでもない。というかどこも一緒に感じてしまう。何を基準に決めればいいか分からない。
俺の通うところは決まっており、後はサキだけ。出来れば近いところがいいんじゃないかと考え、オレは指を差しながら提案してみる。
「こことかいいんじゃないか? すぐ帰っても来れるし」
「じゃあ、そこで」
悩んでいたのが嘘のよう。
まあ、勉強出来るやつはどこでもできるからな。
サキの入学場所も決まり、二人で入学手続きの書類を書いて行く。
サキには文字を教えながら、ゆっくりとそれを完成させる。まだ少しヨレヨレではあるが、読めないこともない。
確認が終わり、いよいよ提出に向かう。
サキの手続きは一瞬で終わり、三日後からのスタートとなった。オレの方はまだ時間が掛かるようで待ちの状態。
自由学習がモットーのような学院に入学するため、そういった確認も少し優先順位が低いのかもしれない。
気長に待って、サキの入学を見届けるのもいい。
その日はそれ以降やることもなく、ダラダラと家の中で生活した。
三日後。サキの入学日。
俺とサキ、一人の部下が出発準備を行う。
この三日のうちにオレの方の学院から通知が届き、同じ日に入学が決まった。そのため、サキの方には部下をつけて心細くならないように配慮した。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「うん」
サキに行って来るよう告げる。
家の前から道が逆で互いに背を向け歩き出す。
上手く溶け込めばいいが、正直分からない。
「ま、何とかなるかな」
賑やかな通りを歩き、今後通うことになる学校へと到着する。
事前の資料などでは、現実で言う大学的な教育機関の触れ込みで紹介されていた。それに卒業という概念は無くなり、学び終えればそこでお終い。
学籍を消して終わり。また学びたくなれば登録して通う。そんな感じだ。
現実とは違う拘束力のない設計は、とても魅力的に感じる。
「マサキさん。話は聞いております。あちらで少しお待ちください」
「はい」
敷地内に入り、事務に向かい今後の説明を受けるために通知書を提示する。
事前に説明を頼んでいたため、スムーズに事が進んで行く。
「お待たせしました」
「案内お願いします」
「ええ。では早速行きましょう」
案内の担当が到着すると、すぐに学院の案内を頼む。
嫌な顔一つせず、その男性は俺の先を歩き出した。
それから三時間ほどで案内は全て終わり、その日はそれで終了。
明日から学校生活が始まる。
俺はそのことをヒロトに報告する。
(ヒロト。俺チャヤナで学校へ行くことになったから)
(へぇ〜、面白そうだな)
(現実とは様式が全く違くてめちゃくちゃ自由なんだよ。お前も来るか?)
(そうだなぁ。今やってることが片付いたら顔を出す。話を聞いてから決めるよ)
(そうか。じゃあ、来る時連絡くれ)
(了解)
ヒロトも乗り気のようで、俺は学校の敷地から出て帰路に着く。
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