第22話 ダンジョン
カミ子にオレ個人の組織にする獣人集団を任せ、一つの目的としていた洞窟へと足を運んだ。
少々道に迷いつつも、何とか拠点とする場所まで戻り洞窟まで向かう。
「マップを作成する必要もありそうだ……連絡手段もか」
道に迷ったことで地図が必要であることを認識し、そのついでにマサキや仲間に連絡する手段がないことに気づく。
マップを開発するのであれば共有機能を搭載させたい。
そうすれば、数人の偵察隊が地図を作成すれば、組織で有効活用できる。
連絡手段は現実世界の機能を超えたものを作れそうだし、先にその辺を着手するのもアリかもしれない。
「とりあえずは探索だな」
足を動かしながら今後の活動を考え、洞窟の入り口が見えてきたところでその思考を止める。
数時間しか経過してない為、変わった様子は何もなく警戒心を少し上げて入り口を潜った。
「視界も悪く壁は土。獣の棲家の可能性が出てきたか?」
入ってすぐに情報を口に出しながら整理する。
言葉にした通り洞窟内には光が無く、入り口付近の陽の光が照らす範囲しか見ることができない。
「光を……よし」
生活魔法に分類される
指先から光の球が浮かび、イメージするとその通りに動くため、自分より少し先の空間に等速で動くイメージをする。
「獣の棲家や洞窟にしては人工的だよなぁ……ダンジョンの可能性があるか?」
暗がりを進んで行き、偶に出くわす石柱を見てダンジョンである可能性が高まっていく。
その為、オレはそこで到着前に考えていたマップ作成を試みることにする。
「何魔法だろう。まあ、何でもいいか」
マップ作成をするにあたって該当する属性魔法を考える。
しかし、地図を作るため作図なのか、道を調べるため探知なのか分からない。
オレはいずれスキルとして使われることを思うと、それについて考えることをやめ、地図が広がっていくイメージをして魔力を込めた。
「はーはーはー、こんな感じね」
意識することで目の前に薄らとウィンドウが表示され、これまで辿ってきた道や場所が記されていた。
正にゲームと言ってもいい代物だ。
洞窟の入り口から今に至るまでの道はまた別でマッピングされており、地上とは別の分類で自動表示されている。
そこまで強くイメージしてなかったため、これは無意識が反映されたと言ってもいい事かもしれない。
そんな風にして、思わぬ収穫もありつつオレは洞窟探索を進めて行った。
「ここも行き止まり」
幾つかの別れ道を進み、奥へ奥へと向かい全ての道を踏破した。
結局どれも行き止まりで、下の階層に向かう階段だとか、そんなものはなかった。
「ただなぁ、これだけ人工物感出してるとさ……」
別の階層がないと逆に不自然。
等間隔にある石柱。別れ道にも必ずあるそれと、それを照らす魔道具。
人が暮らした時代に道に迷わないようにする工夫にも見て取れる。
ダンジョンであるとは断定出来ないが、怪しさは残り続ける。
どうなることでダンジョンになるのか、どういう発生方法があるのかオレは知らない。
「大規模な魔法は使いたくないからなぁ。マップでも……あれ?」
破壊する行為はしたくなかったため、魔法で出来ることはないか考える。
ただ、何となく開いたマップを見て、オレは違和感に気づいた。
「……ここだけ区切られた表示されてないな」
行き止まりであったはずのマップをよく見ると、その場所だけ薄い線で記されており、他とは明らかに違う。
それは続きの道、もしくは階段があることを示すとオレは考え、その場に着くなり壁の破壊を試みた。
「やっぱりか」
掌を壁につけ、純粋に魔力をぶつけて破壊する。
すると、ボロボロと壁が崩れ、その先の空間を露わにした。
マップには階段のマークが示され、道が続いていることを知らせた。
「行くか」
オレは崩れた壁を通り抜け階段を降りて行く。
使われてなかったためか、上の階より薄汚く魔道具がある感じもない。
それに、マップに記されていく地図が一部屋しかないことを示す。
「何のための部屋だ……?」
先程のように薄い線で囲われていないし、先への道は一つしかない。
上の階の倍以上はあるこの一部屋は、何のために存在するのか。考えてみても答えに辿り着く気がしない。
「先の道は……どうするべきか」
先へ続く道の方へ歩いていくと、そこは掌を
それに、先の道には魔力反応があり、その数の多さと魔力量から人ではないことは理解できた。
「この先がダンジョンの可能性があるのか。いや、地下一階にあるんだ。ダンジョンで間違いない」
数少ない情報からダンジョンであることを断定する。
間違っていてもどうってことはない。
ただ、挑戦前に少し整理したいことができた。
ダンジョンに繋がる洞窟があり、その先には質素に暮らす村人たち。繋がりがないとは言えない。
恐らく、ダンジョンの入り口は別のところにあり、その近くに街があるはずだ。
そこで冒険者をしていた者たちが逃げ延びたのが、この閉ざされた辺境の地。
魔物が出ないよう狩りに行く者たちに魔法を扱わせないというのは、その冒険者たちからの知識の可能性がある。
魔物に恐怖心でも植え付けられたのか、戻ろうとさえ思わなかったのか。
なにしろその結果、ここら一帯はかなり平和で安全な場所になったのかもしれない。
「ふぅ……行くか」
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