第11話 魔法の戦い




 予想外な発言にマサキが困惑したのか、一言発して反応した。


 オレにとってはいつも抱いているような願望を口にしようとしたつもりだった。

 しかし、全くの範囲外の答えだったらしく、マサキの反応にびっくりして反応した。


「堕落したいってお前なぁ」

「いいんだよ。オレにはオレの生き方がある。ダラダラと好きなことを好きな時にできればいいんだよ」

「そんなもんかぁ」


 オレは自論をマサキに伝え何とか理解させが、納得はしていないようだ。ただ、人それぞれという便利な言葉があるため呑み込む他ない。


 オレはそんな風に面倒な問答を回避して、目の前に築かれた砦を見上げた。


「五日でよくやったなぁ」

「魔法があるからな」

「そうだった」


 魔法の存在を一瞬忘れたマサキに、それが可能であることを教えた。


 一つ一つの村はかなり質素、というか貧乏な暮らしをしていたにも関わらず、人が集まればここまで立派なものを作るのかと感心した。


 しかし、築かれた砦も木製で、この世界の人間のイメージ力が乏しいことが露呈していた。


「これを燃やしてもいいか?」

「ああ、やってくれ」


 知らないということ。ぶっ飛んだ発想をしないこと。

 これらが無いため、この砦も一瞬で破壊される。


「んじゃ早速。ファイア」


 マサキが掌から炎を放つ。

 魔力が炎に変換され、一定方向に途切れることなく放たれ続ける。


 火炎放射。

 それがいつでもどこでも放てるのだ。村人にとっては面倒なことだろう。


 水魔法で消火しても次から次へと放たれるのだ。

 それに、炎を消す前にオレが風で援護するため、消火するにしても労力を割かれる。


「ウインド」


 魔力を風に変えて、マサキの放った炎を運び広げていく。


「消えない!」

「まだまだ呼んできて!」


 顔は見えないが女の慌てる声が響いて来る。

 オレとマサキはそれを聞くと、正面から距離を取り再び砦を燃やし始めた。


「はぁぁ……手応えないな」

「まあ、相手が向かって来てないしな」

「そろそろ行っていいか?」

「ああ」

「女はやらない方がいいとかあるか?」

「そうだなぁ……」


 考えてなかった質問をされ、オレは少しの間考える。

 正直どうでもいいこと。


 ただ、村人の中にも不満を持っている奴は必ず居るはずだ。ソイツらは生かしておいた方がいい。

 それも家族や友人との絆が浅い奴だ。


 マサキは「女は」と言ったが、もしかしてオレがそんな奴だと思ってる訳じゃないだろうな。

 もしそうだとしても数人で十分だろ。


 ここは先に考えた方を伝えるのが良いだろう。

 オレはそうまとめて口を開く。


「攻撃意思の無い者。嫌々従わされてる者。手助けする者が居たら命は奪うな」

「手助けする者がいるかは分からないが、了解した」

「それじゃあ、また後で」

「おう!」


 会話を終わらせ、マサキは砦を軽く飛び越え集落の中へと身を投じた。

 それを眺めた後、オレは砦の見張り台の上に移動し、村長たちが居る場所を探した。


「どっかにあるはずなんだよ。権威を誇示する建物が……あー、あれか」


 口に出しながら目当ての建物を探し、それを見つけると向かって来る村人たちを無視してその場に直行した。


 剣を握り切り掛かって来る者たちを魔力で高めた身体能力で躱し、置き土産としてカマイタチをお見舞いする。


 初めて受けた魔法を強化し、必ず致命傷になるほどの威力でそれを放った。

 後ろからは断末魔が広がり追っ手は誰一人として来ない。


「よし。終わらせてここら一帯を貰うとするか」


 目的地に到着し、独り言を呟く。

 移動中に考えた新たな案。


 この森を拠点に、栄えた街や都市に間者や商人を送る。

 情報と共に送り込んだ者たちの信頼を重ね、後々そこへ赴く策。


 オレたちが動かずとも支配する領域を拡大できるため、バレずにいたいオレたちにとって良い案だ。

 しかし、これには一つ穴がある。


 それは、動かせる駒があるかどうか、だ。

 今回のこの戦闘で誰も村を見捨てないのであれば、この計画は破綻し、自ら赴いて行動していかなくてはならない。


 まあ、今は村長たちの首のことだけ考えればいい。

 オレは建物に近づきながら考え、玄関が目の前まで来ると頭を切り替えた。


 取手に手をかけ、引いて扉を開ける。


「あれ、待ってるなんて意外だな」


 オレは目の前に立つ六人の老人を見て言葉を溢した。

 どこかの一室に固まって会議してるのだとばかり思っていたため、予想外の登場に若干焦りが出てしまう。


「待っていたのじゃよ」

「そうか。それはありがたいな」


 第一の村の村長が口を開き返答した。

 それにオレは探す手間が省けたことを感謝し、素直に告げた。


「戦闘員が意味を成しとらんのぉ」

「我々の出番か……」

「我々だけであるのが幸いでしょうな」

「そうですな」

「気張らなくても良いでしょうに」


 他の老人たちはオレを見据えて会話を行う。

 話を聞く限り、相手は村長たちがするようだ。

 見るからに弱そうであることと、オレが魔法を使えることを考えると、一瞬で勝敗がつきそうではある。


 しかし、村長たちに焦りは微塵も無い。

 オレは何か見逃しているのではないだろうか。


「魔法に対応できたそうじゃないか」


 誰か分からない老人が尋ねて来る。

 第一の村でのことが知られている。

 オレはそれ理解して素直に答える。


「ああ。違和感を感じてな。一度当たってみたんだ」

「ほう。魔力感知のカラクリに自力で気づくかぁ」

「ん? 今の話では辻褄が合わないのぉ」


 鋭い奴が居るのかオレたちの存在に違和感を覚える者が一人現れた。


「どういうことじゃ?」

「いえいえ。族の二人は森で道に迷われたと聞いてます。ですが、それでは初めから魔法を使えるはずですよねぇ」

「……確かにのぉ」

「考えてみればそうじゃなぁ」


 油断したせいか、バレてしまったようだ。

 ただ、オレたちが異世界から来た何てことには気づかないだろう。

 それだけ隠せば問題ない。


 いや、殺すことでバレても問題ないか。

 オレは答えを見つけると疑問を持つ村長たちへ話し始める。


「その違和感は当たってるよ。まあでも、敵なのは変わらないよ」

「そうじゃな。じゃが、儂らを舐めとると痛い目を見るぞ?」

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