第二章
第10話 闇の探索者たち
第一の村に滞在すること五日。
オレたちは近場に棲みつく獣たちを狩ってはレベル上げを行っていた。
お互いに試合をして技術を磨くことも行い、オレたちはレベル、技術を数段上げることに成功した。
「もうそろそろ行くか?」
「そうだな。この辺で暴れると魔獣が強くなり過ぎて手に負えなくなる」
「ふっ、確かにな。魔法の使いすぎで獣たちに影響を与えるとは思いもしなかったよ」
「村人がいたらそこら辺もすぐに分かっていたかもな。とりあえず、村々を襲撃して人を探す」
「おう」
オレとマサキは建物を後にして、第一の村から一番近い村へと足を運ぶ。
第一の村周辺に比べ、獣たちも穏やかに暮らしており、道中を警戒することなく進むことができた。
オレたちは少しやり過ぎたのかもしれない。
お互いが強者への憧れや、人を支配することに欲を抱いているからか、強くなることに余念が無かった。
もし村人の男たちも魔法が使えても問題ない。そう言い切れるほどに強くなった感覚がある。
オレはそんなことを考えながら周囲の観察を行った。
「生活感が無い。というより、薄れている感じか……」
「ああ、やっぱりそう思うか? 俺も何となくだけど村人居ないんじゃないかと思ってるんだが」
「考えられるのは、各村々が結託して何処かに集落を築いているぐらいか」
「なるほどなぁ。なら一番遠いところか?」
「まあ、そうなるよな。でも一つ一つ潰して行こう。どこにいるかわからないし、残骸の中に何かこの世界のヒントがあるかもしれない」
「んじゃ、早速探すか」
話していると第二の村に辿り着いた。
マサキはすぐに村の柵を飛び越え、奥の村長宅へと走っていった。
オレはそれを見て門の近くから探索することにした。
「やはり目ぼしいものはないか」
ある程度探して成果が無く、オレはボソッと呟いた。
猶予を与えたため、急いではいても何かを残すことはなかったようだ。
あったとしてもちょっとした布や壊れた物ばかり。
それらは第一の村でも見かけたようなもので、目新しいものや何かの手掛かりになるものではなかった。
オレはこれをあと数回しなくてはいけないと思い、溜息をついてマサキが戻ってくるのを待った。
「……終わったか?」
「ああ。何もないや。すぐ次だな」
「ここからだと、あっちだな」
「さっさと終わらせよう」
「賛成だ。」
マサキも若干気を落としており、次の村へと急いだ。
それにオレも賛成し、すぐに行動を開始した。
「ここもか……」
「次だ。」
第三の村へ到着する。
しかし、探索しても成果無し。
「無いか」
「次」
第四の村でも、そして、
「はぁぁ……」
「何も無かったな」
第五の村でも何も見つけることができなかった。
第五の村に関しては、建物すら壊され何もない状態。村人たちが知恵を絞ったのだろう。
オレは何をしていたのだろうと自問し、村人が居なければすぐに次へ行くべきだったと反省した。
人が居ないなら生活が少し見えるぐらいだ。
それも、森に囲まれた村なら大体が同じ生活をしているはず。
オレは改めて考えそれを認識し、今後の活動に活かすことを決めて気持ちを切り替えた。
「この先、かなりの魔力を感じるな」
「全ての村人が集中している。ここに来る前に話した通り。」
「意外性がないというか、一度考えついたことが現実で起こるってのもなぁ……」
「大した集団でもないんだ。数人残して壊滅させるぞ」
「了解」
オレとマサキは多くの魔力が存在する場所に向けてゆっくりと歩いて行く。
五日という時間があれば、少しは丈夫なものを作り対策しているはず。であるなば、それを破壊して精神的に追い詰めることも有効だ。
絶望を与え、その中で救われた者の中には忠誠を誓う者も現れるかもしれない。
マサキには言わず、オレはそんなことも考えながら足を進めた。
マサキは今後のことを考えているのか、表情を見るだけでは分からない。
コイツの目的は疑いのない友人を作ること。
前にお互いに話したが、これはほぼ達成している。
それは、ここ数日一緒に生活して苦になることはなかったことからも分かる。
新たな目標、計画が必要だ。
裏で生きると決めたから、オレらは隠れて部下たちを表に立たせるのも一つの手。
オレとマサキは自由にやるが、組織を作りそっちが表の顔を担い幅を効かせる。
そんな感じでいいかもしれない。
現実世界ではできない非人道的なこともこの世界では許される。
やりたいことをやりたい時にできる世界を目指す。
これが一番大きな目標かもしれない。
他はその時その時に必要なことをやればいいし、結果が楽しければ問題ない。
オレはそこまで考えてマサキに話を振った。
「この戦闘が終われば組織を作るつもりだが、どう思う?」
「おお! いいな、それ! やっぱり裏の組織は作らないとな」
「ただ、それを作って得られるのは自由な生活だ。正直、やりたいことはそこまで多くない」
「そうか。俺は結構あるぞ。いろんな景色を見たいし、現実じゃ出来ないことやあり得ないことを体験したい。それに美味いものをいっぱい食いたい」
マサキは目を輝かせ、やりたいと思っていたことをスラスラと口にした。
オレとは違い健全で綺麗な願望ばかり。
ただ、美味いものを沢山食べることには賛成だ。
組織を結成して上手く運営できれば、後は美食の旅になりそうだ。
まあ、絶対一緒に行動することが良いとは限らないため、そこはまだ考えなくてもいい。
「それじゃあ、さっさと目の前の件を片付けるか」
「そうだな。さっさと堕落した日常を送りたい」
「え?」
「え?」
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