第8話 魔法と破壊の実験




「ん? 血が止まってないか?」

「あり得ないわ。あたしのカマイタチはそんなモノじゃない」

「いや、でもよ……」


 オレは直ちに魔力を使って出血を止めた。

 見た目の変化に、相手も驚いてるようだ。

 しかも、相手はそれが魔力によるものと理解していない。

 常識を疑わないとは愚かだな。


 非常時であるが、それができない村人たちには同情する。

 しかし、計画を止めるつもりもない。

 オレは魔力を感じながら、イメージする。

 運動能力の向上と片手剣の切れ味の向上をイメージする。


「よし、まずお前がもう一度さっきの技を撃て。その後に―――」

「遅い」

「……っ⁉︎」


 準備が完了したと同時にオレは駆け出し男の首を刎ねた。

 血は吹き出すこともなく、ドロドロと重力に従い溢れて落ちていく。

 その光景を見る女にオレは目を向ける。


「い、いやっ。い―――」

うるさい」


 横に一振りして先と同じく首を刎ねる。

 この女は魔力感知の助けになった重要な人物だったが、激昂して制御できそうになかった。

 本来は村をまとめる役を押し付けたかったが仕方ない。


 マサキは……終わったようだ。

 オレは魔力でマサキの戦闘が終わったことを知る。

 まだ数人残っているかもしれないので、警戒しながらマサキとの合流を行う。


「おいおい、顔の傷大丈夫か?」

「問題ない。これくらいあった方が裏に生きてる感じだろ?」

「ははっ。雰囲気ね、雰囲気」


 軽口を叩きつつ、オレたちは村長宅へと意識を向けていた。

 主要な戦力は何となくだがそこに居ると感じていたからだ。

 マサキも迷いなくそこへと足を運ぶ。


「マサキは何て言われて魔法を当てられたんだ?」


 オレはふと気になったことをマサキに尋ねた。


「ああ。弟の仇、だったかな。結構綺麗な女だったんだぜ?」

「そうか。オレは旦那の仇だったな。そそられる人妻だったよ」

「おいおい。突然の性癖暴露はやめてくれ」

「冗談さ」


 そうして、道中他愛もない話を続け、村長宅へと到着する。

 玄関前には、オレたちを村に入れた男たちが居るだけで、村長の姿は見えない。

 観察して状況を把握しようとしていると、それを察して男が口を開く。


「村長はこちらに居ないぞ。それに他の村人たちもな」

「なるほどな。それでおんな子どもの声が聞こえないわけだ」

「まあ、二人ほど耐えきれなくなった奴らが居たがな」

「貴様ッ‼︎」


 挑発をしてみると、男はすぐに気を昂らせ、オレを睨む。

 案外楽な戦闘になりそうだ。


 オレがふっと気を抜くと、マサキもそれを感じてか深呼吸をして緊張を解した。

 男たちはそれを何となく察したのか、更に気を奮い立たせる。


「舐めてんのかっ、ゴラァ‼︎」

「いい度胸じゃねぇかっ‼︎」

「殺す‼︎」


 計三人の男たちは、オレたちを睨みつけて怒鳴り、武器を手にして臨戦態勢をとる。

 そんな単純な行動にオレとマサキは肩をすくめ、お互いに視線をぶつけやれやれといった感じで相手することを決める。


「じゃあ、余りは早い者勝ちな」

「ああ」


 言葉を交わし、オレとマサキはターゲットを絞り地を蹴った。


「な、消えたっ⁉︎」

「いるよ」

「……‼︎ かはっ……」

「次……速いな」


 一人の首を刎ね、次の相手へと意識を向けるが、その時点でマサキによって処理されており、素直に感心して言葉を漏らした。


「ま、全力じゃなかっただろ? ヒロトは」

「まあ、コイツらに出すほどでもなかったからな」

「そんなんじゃ俺にレベル越されるぞ?」

「競ってないだろ。まあ、組織を作る際の基準になるかもしれないがな」


 マサキに言われ、自分のレベルを確認しながら返答した。

 文言を唱えずとも意識すれば、ステータスは現れた。

 どうやらレベルは結構上がっているようで、D3にまで上がっていた。


 感覚的には人間を討伐する方が経験値は多い気がする。

 これは外部に漏らさない方が今のところ得策だな。

 オレは確認が終わると、念じてステータスウィンドウを消して、マサキに次の行動をどうするか尋ねた。


「さて、これからどうする? 情報を聞き出す村人がいなくなっちまったが」

「んー、何処に逃げたかだけど、言わずもがなどっかの村だよな」

「まあ、そうだろうな」

「だけど、もしかしたら全ての村が結託してしまうかもしれないよな」

「そうなれば面倒だな」


 素直な感想を合いの手にしてマサキの思考を促す。

 オレだけで世界を楽しむのではないため、ここはマサキの考えに乗ることにしよう。

 そんな考えが過って、オレはサブ的立場に戻った。

 マサキはそんなことを知らずにオレの言葉に返答する。


「面倒ってだけなのかよ。強気だなぁ」

「それはそうさ。こっちは魔法もあるし、この世界の人間より圧倒的な知識と発想力を持っている。生み出されるものは兵器と変わりない」

「ははっ、確かにそうだ。とりあえず、数日魔法を試すって感じでいい?」

「ああ、時間を与えたところでアイツらは敵ではない」


 マサキの考えに賛同し行動を定める。

 オレはそうと決まったらすぐに行動を開始した。


「おいおい、何する気だよ」

「建物を一つにしようと思ってな」

「一つにって……マジかよ」

「これで、後は残された物を選別して、と」


 マサキが遠い目をしていたが、オレは気にせずそれを続けた。

 オレが行ったことは、バラバラに建てられた建物を壊し、村の中央に一つの大きな建物を建てたことだ。


 これは魔力を使用したため楽に行うことができ、その後の物の選別も同じように魔力を用いて行った。

 マサキはまだ、魔力が万能エネルギーであることを信用し切ってないようだ。

 まあ、今回のことで固定概念から解放できたんじゃないだろうか。

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