第14話 異世界の支配者〜禁忌の獣人計画〜




 魔力感知が終わった村人たちに、次はステータスを開示させて適性ごとに振り分けたい。

 それをマサキに伝え、振り分けさせる。


 オレは、その振り分けさせた集団ごとに事情聴取を行っていくことにした。


「さて、初めてだから名乗っておく。オレはヒロト。マサキの同僚だ。よろしく」


 振り分けられ集まる集団に近づき挨拶を行う。

 しかし、反応は薄く予想通り。


 マサキに対しては一緒に村を壊滅させたこともあり、素直に話す程度はある。

 そのため、オレは村長たちに使った魔法を使用する。


「はぁぁ……」


 無属性魔法。派生・操作魔法。開示。

 イメージし魔力を元に発動し、村人たちのステータスをオレの前に展開させる。


「「っ……⁉︎」」


 その集団の者たちが息を呑む音が聞こえた。

 流石に村長でもこんなことはしなかったのだろう。


 しかし、裏組織でボスの一人であるオレにあの態度はダメだ。

 上下関係はしっかりしないとな。


「お前たちが村を壊滅させたことについて聞きたい。言っておくが、お前たちの同意を得ずに聞くこともできる。だが、自分の口で話す機会を与える。それじゃあ、お前から」


 オレは指を差してこちらから見て一番右の人物を当てた。

 そこから理由を聞いていき、集団を移しては同じように事情聴取を行っていった。

 聴き取りを行い分かったことは幾つかあった。


 村の中で生きて行けば自分の居場所が変わらないこと。機会を平等に与えてほしいこと。シンプルに暮らしが嫌。押さえつけられてる感じがして腹が立つ。など、分かりきったことばかりだった。


「終わったか?」

「ああ。まあ、大方予想通りだ」

「へぇ〜。ま、細かいことは任せる。次は……各集団に活動させる感じだな」

「ああ。まだお前にしか心は開いてないだろう。アイツらの指揮は任せる」

「了解。また後でな」


 そこでオレとマサキは分かれて行動を開始する。

 と言っても、マサキは指示を出し、オレは世界観の確認や価値観を把握したりと細かいことを行う。


 この世界に来て分かったこと。

 それを整理し、オレたちの知識を使って急速な発展を行いたい。


 まず、この世界には魔力がある。

 万能なエネルギーとして存在するが、村人だけを見れば使いこなせていない。


 ただ、ある程度何でも出来るため、そのせいで生活の質が酷く低い。

 都市部は発展していると思われるが、それでもレベルはそこまで高くないはずだ。

 改善の余地は大いにある。


 次に、人間の能力についてだ。

 村人や村長の体捌きを見るに身体能力は現実世界より優れている。だが、それだけ。


 社会性に関しては、現実世界の昔の人たちと殆ど変わらない。

 一部の人間が決まりを作り、大事な部分や多くの者が望むことは難しいと告げて秘匿する。

 どの世界もそれは変わらないようだ。


 後は建築や衛生面、服装などのレベルも低い。

 そういったところを底上げし、まだ見ぬ街より暮らしやすい環境を作りあげる。


 今の所はこのぐらいしか思い浮かばないが、生活していく上で少しずつ問題は出てくるはず。

 その度にマサキとオレの知識でこの組織が暮らす集落を発展させていこう。


 オレは情報を一応まとめ終え、何をするのかじっと村人たちの行動を眺めていた。


 ボロボロな布を繋ぎ合わせただけの服に、簡素な草履。

 入っていく住居は奥行きの無いワンルーム。

 手に持って齧っているのは干し肉。


 オレはすぐにやるべきことが見えた。


「マサキ。衣食住を最優先に改善だ」

「だよなぁ……でもコイツら想像力ないし期待できねーよ」

「馬鹿かお前は。まず手本を見せればいいだけだろ。そんなすぐにオレたちの望むことが出来る訳ない」

「……確かにな。考えてなかった。悪い」

「いや、いい。ただ、これじゃあ効率が悪い。何とかしないと……」


 マサキの考えてない言動に注意し、すぐにオレは改善するための策を考える。

 ただ、構わずマサキが口を開く。


「衣食住の改善だよな」

「あ、ああ……」

「一度には無理だろうから段階を踏む感じで教えて来る」

「分かった。オレは他のことを考えたい。任せる」

「おう! 任せとけ」


 そこで会話を終え、オレはすぐにその場から離れた。

 一人で静かに考えたかったこともあるが、何か引っ掛かりが出来て気持ちが悪かった。


 恐らく効率が悪いという話だが……何に対してだ?

 マサキに行動を伝えることか?

 それともすぐに取り掛かることが出来ないことか?

 いや、両方か……うん。そうだな、両方だ。


 一人納得したオレは、それを解決するために一つの策を思いついた。

 それは、オレたちが直接関わらずに済むやり方。それを実現することだ。


 裏の支配者も、考えはするが実行部隊を使うはず。

 その答えに辿り着いたオレは、世界の禁忌に触れる。


「狼的な獣はいないか……」


 考えがまとまりすぐに森に入った。

 探すのは強そうな獣。

 それもヒエラルキートップになり得るもの、狼だ。


 何故狼か。

 それは肉食獣であること、素早いこと、見た目が良いことが重要だったからだ。


 狼から狼人間、獣人を作り出そうと考えた。

 だから、禁忌に触れるというわけだ。

 オレとマサキにのみ従う補佐的な生命体が必要と考えた結果、そこに辿り着いた。


 性別の無い、オレの記憶を引き継がせた新たな戦力。

 生み出すソイツに組織の運営を任せることが、最効率になるだろう。


「いた」


 オレは狼のような獣を見つけ、思わず呟く。

 すると、その獣は耳を立てて音がした場所を探し始める。

 しかし、オレは見つかる前に先制する。


「ふっ」


 一瞬で迫り、拳で殴打して気絶させる。

 倒れたその狼を見つめ、オレは早速行動に移した。

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