第41話 近くの町へ
朝日が昇る頃、オレは一部のゴブリンたちを連れて集落跡地に来ていた。
⦅楽園の結界まで領域を広げろ⦆
⦅はい!!⦆
念のため確保していた土地を早くも活用することになり、本当に上手く行き過ぎだ、と心の中で思う。
ゴブリンたちに領域拡大を告げ、その間にゴブリンリーダーにダンジョン作成の為にかなりの数のゴブリンを送らせる。
⦅これで限界だと思います。警備などもありますので⦆
⦅いや、十分だ。ありがとう⦆
転移して来たゴブリンたちは早速取り掛かり始める。
かなりの数が一気に動く為、地面も揺れて迫力があった。
⦅結界まで到達完了です⦆
⦅よし、よくやった。後は徐々に生活圏を広げていけ。今日は休んでいいぞ⦆
⦅ありがとうございます!!⦆
新天地で生活させるゴブリンたちは、半日も経たずに領域の拡大を終わらせた。
その間にもダンジョンは作られていき、かなりの高さまで到達していた。
入れ替わり立ち替わりで途切れることなく進むダンジョン建設。それはあっという間に築き上げられ、半日で完成した。しかも二塔。
⦅建設ありがとう。後はゴブリンリーダーに従ってくれ⦆
ダンジョンを作りに来たゴブリンたちに念話をして、ゴブリンリーダーに後は任せる。
残りの時間を有効活用する為、オレはダンジョンに登り近くの景色を眺めることにした。
地図ばかりに気を取られて、直に大地を見る事をしてこなかった。外壁にある所々の出っ張りを使って登って行く。
「よし、この辺でいいだろう」
景色を見る位置を決め、壁を背にして周りを見渡す。
広大な森と草原、所々にある小さな集落群と幾つかの大きな町。それらの存在を初めて知り、一番近くの町へ行くことにする。
「冒険者から奪った金があったような……よし」
外壁を降り、転移でダンジョン内の部屋に行き準備を済ませる。カミ子にはお土産を買って来ることを告げ、早速町に向けて出発した。
一度新ダンジョンに戻り、そこから更に北に向かって進む。
小鬼ダンジョンの近くにもあるにはあるが、そこまで大きな町ではないため、先にこっちを優先する。
相変わらずな森を進み、鳥の魔物を使って進行方向を調整する。魔力、魔法の万能さに有り難みを感じつつ、止まることなく進んで行く。
だんだんと日も落ちていき、関所に着く頃には完全に日が落ちていた。だがそれで制限されることはなく、しっかりとした検査を受けて町へ入ることができた。
ただ、白髪黒眼、左半身の傷痕や氷の右腕を見てかなり用心深くチェックされた。結果何も無かったが、この情報がどうなるかは分からない。それなりに警戒しておこう。
町に着くと、その賑やかさに驚かされた。
露店市場は活気にあふれ、何処からともなく笑い声が聞こえて来た。
「こんなのもいいね」
現実にはない光景に胸打たれ、記憶に刻むようにその景色を見続けた。ただ、次第にその状態も終わりを告げ、何をするか考え始めた。
「とりあえず、食事と宿かな。表記は日本語だしすぐに分かりそうだな」
看板を見つけてそれを把握する。
食事処はすぐに見つかり、一番初めに見つけた場所に向かう。
「いらっしゃいませ〜」
扉を開けると迎えられる。
席の案内を期待したがそれは接客ルールにはないようだ。適当に一人席に着いて、手を上げ店員を呼ぶ。
「お待たせしました。ご注文はどのようにしましょう」
「オススメの料理と飲み物をお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちくださ〜い」
紙に注文を書いて、その女店員は厨房へ向かっていった。それを眺めつつ、姿が見えなくなると店内を見まわした。
誰もが
しかし。
「邪魔するよー。今日も頼むわー」
ファンタジー世界の鉄板も訪れる。
オレの胴のように太い足に腕、それより大きな体を揺らしやって来た男が、目の前まで歩いて来る。
「坊主。そこどいてくれ。俺の場所だ」
男は傲慢な発言をしてオレを退かせようとした。
目立たずに生活しようと思えば、ここはさっさと空け渡すのが常識。しかし、別にそうやって生きるつもりはない。
支配者、世界の王という目的はあるが、目立たずになんてものは考えていない。答えはNOだ。
「今座ってるのはオレだ。この場所は今、オレの場所だ」
瞬間。ざわっ――――と、店内から音が聞こえ緊張感が走る。
目の前の男は体を硬直させ、もう一度尋ねて来る。
「坊主。もう一度言ってくれ。そこは誰の場所だ?」
ゴクッ――――という音が微かに聞こえる。
静寂に包まれる中、オレは同じ言葉を言い放つ。
「今、座ってるのはオレだ。この場所は今、オレの場所だ。耳も人よりデカいのに聞こえないのか」
今という部分を強調して憎たらしい感じで男に告げる。
瞬間。男の拳が眼前に迫る。
しかし。
「キャーーーーーー!!!!!!」
それが届くことはなく、男は氷に包まれる。
悲鳴を上げた女店員は、吹き飛ばされた音が鳴らないことを不思議に思い、恐る恐る目を開けていた。
「え?」
その驚き顔は100点のもので、周りの客も顎が落ち、空いた口が塞がらないという感じだ。
このまま大きな氷を店内に置いておくのもどうかと思ったため、魔力で持ち上げ通りの真ん中に設置し、食事に戻った。
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