第25話 現実世界へ帰還




 ダンジョン運営を始めて早二ヶ月と数十日。

 今日活動を終えれば現実世界へ帰還することになっている。


 まずオレは、日課となっているダンジョン内の観察から始める。

 あれからゴブリンたち、それもオスたちが精力的に働いている。

 生け捕りした猪や鹿、その他動物の肉を持ち帰ってオレたちの食料を充実させてくれている。


 他には生け捕りした動物たちを地下から地上へと移動させ、魔法を駆使して家畜化を成功させた。

 それらを、主に獣人の女たちに世話をさせている。


 ゴブリンたちには殺害して持ち帰った獲物と、こちらが提供する家畜化した動物を与えている。

 魔力の影響か、家畜たちの成長も速く、供給が追いつかないなんてことはない。


 最近はゴブリンたちも家畜化に興味を持って試行錯誤している。

 そのため、食料に関して頭を抱えることは無くなった。


 ゴブリンたちの交配も順調のようで、殆どの者たちが日夜行為を行い数を増やしている。

 先の通り、魔力の影響か魔物であるゴブリンの成長速度も速く、生後二週間で一人前の個体となる。


 ダンジョンから生成したオスゴブリンたちは既にレベルを上げ、数体は進化まで果たしている。

 メスは、行為の回数や子をどれだけ産んだかで経験値が増えるようで、生成した者たちはその分早く経験して飛び抜けた魅力を放っている。


 そんなメスゴブリンたちは、可愛さ、綺麗さ、美しさといった概念を理解し、それを共有して集団全体のレベルを底上げしていた。


 それにより、オスゴブリンたちは更に奮起するようになり好循環が起こっている。

 これにはオレも驚かされた。


 また、ゴブリンたちの増加に伴いダンジョンの階層も増やした。

 それにゴブリンのみ使える転移魔法陣も用意し、どの階層にいてもすぐに移動できるように改良した。


 それがどんなものか興味を示し、研究を始めた者もいる。

 今後は身体能力のみに頼らない多様性が生まれそうで楽しみだ。


 そこでオレは観察を切り上げ部屋を出る。

 大体次に行うのが、獣人の訓練を視察すること。


 一つ下の階層に降りて行き、ダンジョンによって作られた森林を眺める。

 訓練をしない者は底の深い森林地帯には赴かず、壁に沿った外周の上でそれを見守る。


 外周には魔法で映し出される画面があり、それを見て見学者は盛り上がっている。

 それは一種の娯楽のようになっており、見学者を楽しませながら、そこで訓練する者には称賛が贈られている。


 訓練する獣人の男たちは、早くも「探知」、「マップ作成」のスキルを覚えた。

 今ではそれらを使用しながら自分の強みをどう活かせるか試行錯誤している。


 暮らしの安全や食料不安が無いため、それぞれが訓練に集中できる。

 その環境があったためか、獣人たちは見違える程に強く、賢くなっていった。


 獣人の女たちの中には身籠った者たちもおり、他の女たちでサポートに周り万全の体制を整えていた。

 それにプラスして、カミ子による創造魔法や生活魔法の指導も順調に進んでいた。


 何者からも襲撃のない秘境のダンジョン。

 ここまで楽に成長させることができたと考えるとかなり運が良い。


「ヒロトっ」

「おはよう」


 オレを見つけるとカミ子は走って近づいてくる。

 今まではその後何もなかったが、最近は抱きついてくるようにもなった。

 カミ子も少しばかり変わった。まあ、それもそうか……。


 勿論オレも変わったと言っていい。

 魔力操作に磨きをかけ、雷魔法の創造、取得を成功させた。


 世界には雷魔法を発現させた者もいるが、どういったものなのか理解している者がいないという。

 そのため、使用した者は居らず、実質オレが一人目の使い手となった。


 これらの情報はステータスを開き、項目をタップすることで得られた。

 そこまで教えてくれるとは思っていなかったため、新しい魔法やスキルを得るごとに開示していこうと決めた。


 ちなみにだが、この世界での過去の話も出てきて、この世界の楽しみ方が一つ増えた。

 世界を支配しながらそういった話を深掘りしていくのも面白そうだ。


 そういえば、マサキと連絡を取ってないがどうしているだろうか。

 瞬間転移や念話など、連絡手段を開発したがマサキとは接触していない。


 現実世界で実際に会って話すのもいい。

 そう考えてあえて接触はしなかった。


 寝ぼけたマサキに集落を出ると言ってここまで来たが、向こうの生活はどう成長しているのか気になる。

 時折り獣人たちに森の偵察を行わせたが、集落ごと消えていたようで、消息不明状態に陥っている。


 この辺境と秘境ダンジョンはオレの本拠点として貰うことになるが、出て行ったのなら文句は言われないだろう。


 マサキは美味いものやいろんな場所に行きたいと言っていた気がする。

 もしかしたら、集落の人間を連れて商人的な暮らしを始めたのかもしれない。


 まあ、その辺も現実へ戻って聞いてみよう。

 それに約束通りダイブ時間を伸ばして、こちらの世界を謳歌できるようにしてもらおう。


 今は大丈夫だが、学校が始まればこの世界へダイブする時間も減るだろう。

 それまでは楽しく遊ばせて貰う。


 オレは部屋のベッドに横になり、この期間で最後の眠りについた。

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