我が名は!
「その提案!行幸!我も賛成である!!!」
焦ったような生徒会長の言葉それに対して強く反応したのは僕たちの三人ではなく、また違う別の声であった。
「うぉ!?」
そして、そのまま声と共に天井から降りてきた一人の少女を前にミュートス王女殿下が驚きの声を上げる。
「はぁー、いつものことながらあなたは何をしているの?」
「理解不能。君は僕のようにもっと常識を持つべきだ」
「いや、常に仮面をつけているセーラに常識なんてないと思うぞ?」
それに対し、僕やアンバー、セーラはさしたる驚きもなくさらりと流す。
「むっ、いつも見ているアンバーやセーラならともかくとして君も驚かないのか」
完全に気配を消しながら天井にずっと潜み続けていたその少女は驚かなかった僕に対して不満げな様子を見せる。
「天井に潜んでいることは元からわかっていたからね。驚く理由はないよ」
「なんと!?さすがはエスカルチャ家と言うべきか」
「我が家を前に誤魔化しは聞かないとも」
元よりエスカルチャ家は気配の読み取りなどは生まれながら得意とするものである。
その上で僕は過去視も使えるのだ。
意気揚々と『新入生を驚かせるぞぉ』とか言いながらいそいそ誰もいない生徒会室の中で壁を登って天井に貼り付いているのも見ている。
これならば原作知識がなくとも把握出来る。
「……もしかして、気づかなかった私は、鈍い?」
「いや、割と通常だよ。この子ってばボンクラなのに隠密性能は著しくたかいからね」
「僕たちだって慣れているから驚かないだけで気づけないよ、気づいているノアがすごいんだ」
「まぁ、これでも僕は調査のエキスパートなのでね」
相手の気配も掴めない諜報係とか普通に使えないだろう。
カスみたいな家で、どんなゴミでも諜報だけはしっかりと出来るようにするのが我が家である。
ゲームのノアだってしっかりと諜報活動は出来た、悪用しかしてなかったけど。
「まぁ、我の隠密と好敵手たるエスカルチャ家の次期当主の呪われし運命の話はもういいだろう……そうそうに自己紹介へと入ろうでは無いか」
己の手にも短めの杖をクルクルと回したながら少女は時間の空白を、沈黙を作る。
そして、ビシッと体勢を整えたところで口を開く。
「我が名はイスタル・フォン・レービック・シュタイン・ラスティーク!!!天明を受けし過去の大魔道士であり、現代でもまた、大いなる定めを持つもの!」
「「「……」」」
そして、僕たち全員から言葉を奪うような自己紹介を堂々たる態度でしてみせるのだった。
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