日常

 最初はノリノリで始めていたミュートス王女殿下主導で様々なゲームを行っていた生徒会メンバーであったが、最終的にただの雑談へと落ち着き、みんなでダラダラと会話するような空間が生徒会室内に出来上がっていた。


「……んなぁー」


 女子四人が楽し気に会話している中、僕は領地の方から送られてきた報告書を読み進めていく。


「ねぇ、ノア」


「はい?」

 

 そんな中で突然ミュートス王女殿下から声を掛けられ、疑問の声を上げる。


「その恰好で仕事するの辞めてくれない?」


「……ふぇ?」

 

 僕はミュートス王女殿下の言葉に首を傾げ、自分の姿を見下ろす。

 だらしなくソファに体を倒し、来ている服をしっかりと着崩して完全に怠けている。


「うん、何が?別にいつものことだよ?」


 よくある僕の仕事風景だ。

 何も問題ないだろう。


「……それでも私としては違和感が強いのだよ。貴方がそんなラフな姿で仕事しているの」


「でも、罰としてこの素で居続けろと命じたのはミュートス王女殿下の方では?」


「……ぐぬぬ、確かにそうだけど!この姿に私は負け続けたのかと思うと悔しいんだよ!」


「良いじゃないか、そんな過去のことなんて。僕は素手に満足出来ているからね。もう忘れて目を瞑ろう、ね?」


「忘れられるわけないじゃない!?」


「じゃあ、忘れなくともいいけど、少なくとも目だけは瞑っていてよ。別に僕がどんな格好で仕事していても自由でしょう?」


「まぁ、そうなんだけどね?それでも複雑なものは複雑でしょう?」


「そんなこと言ったら常にそうだったみたいなところあるし……」


 僕はミュートス王女殿下の不平不満を良い感じに交わしていく。


「私としては後輩君がこんなだらしない姿でいてくれていいけどね?私としては素まできっちりかっちりしていたらもう委縮しちゃいそう。実務の面であそこまでの神業を見せられたら」


「完全無欠のノアの素がどうしようもないほどにだらけて可愛いところがあったというのはギャップで良い感じだったな……これは、確かにそそるし、実際に来たわね、はかどったわ」


「ふっ、我とノアの関係で重要なのは魂の繋がりであり、血の契約である!いかような性格であっても、その絆にヒビを入れるようなものじゃない!」


「……完全にアウェーな空気じゃない……た、確かに別に私もノアの素があれだからと言って、嫌いになったりはしないけど……むむぅ」


 僕を味方とする三人の言葉を聞いたミュートス王女殿下は呆然と言葉を漏らすのだった。

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