奇襲

 地中をどんどん掘って進んでいく僕たち三人。


「まだかしら?」


「まだだね」


「まだかなぁ?」


 三人で一緒に泥へとまみれる中で。


「まだかしら?」


「まだだね」


「まだかなぁ?」


 僕たちはひたすらに上へと上へと登っていく。


「まだかしら?」


「まだだね」


「まだかなぁ?」


 どれだけ繰り返したかわからない僕たち三人の……静かな会話。短い応答。


「……って、うん?」


 何度目かの応答を僕の言葉で終えた次の瞬間。

 自分の耳が捉えた言葉に疑問の声を上げる。


「上から……音が聞こえる。後少しかも」


「ほんとっ!?」


「ほっ」


 僕の言葉を受けたミュートス第二王女殿下が喜びの声を上げ、アルベルトはほっと一息をつく。


「……問題は、今自分たちがどこにいるかだよなぁ」


 いくら影法師がいようとも地下の情報まではわからない。

 だからこそ、僕たちの今がどうなっているのかは僕でも把握できていなかった。


「それは敵だってそうよ!別に恐れるに足らず!私たちはこのままさっさと地上に戻りましょ!私の魔法だって無限じゃないのよ?」


「……そうだね」


 ミュートス第二王女殿下にも限界がある……ここで、止まっている余裕はないか。


「それじゃあ、穴堀りを再開するよ」


 僕たちは特に深く考えもせずに地上を目指して天井を掘っていく。


「……はっ?」


 アルベルトの魔法によって地面が完全に消滅すると共に自分の元へと入ってくる地上の光。


「はじめまして」


 そして、光と共に見えたのは自分たちが作り出した穴に顔を覗き込ませている一人の男の顔。


「まっずっ!?」


 僕はすぐさま動き出し、反射的にミュートス第二王女殿下の身体を押し飛ばして───それでも間に合わなかった。


「あぁぁぁっ!?」


 ミュートス第二王女殿下が敵の攻撃を受けて、鮮血を飛び散らかせ、魔法の発動を止めてしまう。


「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!」


 そんな中で、僕は魔力を振り絞りながら魔法を発動させるのだった。

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