脱出
「……何をしているんだろうね?」
大広間から脱出するには大量の下級悪魔と戦わなければならない。
だが、アルベルトとミュートス第二王女殿下は下級悪魔を一人相手するので精いっぱいであり、大量にいる下級悪魔を相手して勝つことは中々に難しい。
そして、僕もほとんど魔力がないせいで行動不能。
まさに八方ふさがり。
そんな状況で、僕たち三人が選んだ決断が……出口がないなら作ればいいじゃない。そんな思考の元で行った作戦。
それは天井を掘って、地上を目指して進んでいこうという発想の逆転とも言える手段であった。
「まったくだ!これが王族二人と侯爵家の当主だと考えると、何とも情けないことか!」
「……えぇ、そうね。私たちは何をやっているのかしら」
そして、そんな作戦をやり始めているのだが……。
はた目から僕たちが何をしているのかというとミュートス第二王女殿下が魔法で作り出した宙に浮く土台の上に三人で乗って上昇。
アルベルトは魔法で、僕は手で。
天井を掘っているという図である。
これが二人に王族と侯爵家の当主、三人が集まって行っているとは誰も思うまい。
「……手が痛い」
「もう休んでくれていいんだぞ?ここに来るまででかなり頑張ってくれているだろう?後は私たちに任せてくれても」
「いや、出来るだけ先に進みたいじゃん」
「それも、そうだが……!天井を掘るのがここまで大変とは」
「下の方に土を捨てないといけないしね」
「……申し訳ないけど、二人には出来るだけ頑張ってほしいわ……私の方も、かなりきついから、これ」
僕とアルベルトの会話に冷や汗を垂らすミュートス第二王女殿下が割り込んでくる。
「……これで、ミュートスが動きを止めたらどうなるだろうか?」
「落ちて大けがでしょ。空中でうまく魔法を使えたら別だけど」
「私は怪我するの嫌よ?」
「……急いで頑張るか」
「……そうだね」
僕とアルベルトはもぐらのように一生懸命地面を掘って地中へと向かっていくのだった。
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