第一章
出会い
イスタルキャンパス。
その始まりは男爵家の倅でしかなかった少年が第三王女であるミュートス・アテネスに助けられるところからだ。
この世界では全ての貴族の子は十二歳の段階で一度、例外なく王都に国立の学園に集められて教育を施される。
だが、それはそれとして家格による差別は存在しており、男爵家である主人公は入学式が始まる前段階の時点でもう家格の高い貴族の息子に絡まれていたのだ。
「その……辞めてください」
「あぁ?男爵家の人間が俺に対して意見するってか、あぁ?」
「そうだそうだ!あまり舐めたことしてんじゃねぇぞ!」
僕が記憶を取り戻してから早いことでもう二年。
ゲーム開始時の年齢にまで成長した僕は第三王女の先回りをして、主人公の元へとやってきていた。
「よっと」
主人公が伯爵家の子供たちに絡まれていた路地裏に面する建物の屋上に座っていた僕は彼らの前へと降り立つ。
「……ッ!?」
「やぁ、こんなところで何をしているんだい?」
「あぁ!?俺たちはただ……教育を……」
特に相手の顔も見ずに僕へとつっかかてきた伯爵家の子供の一人が顔を確認するなりどんどん声が尻すぼみになっていく。
「なんだい?君たちが教育されるかい?」
当然のことながら、息子と現当主では格が違う。
僕は侯爵家の現当主であり、その実権も格もレベルが違う。
学園の中で最も格が高いと良いと言って良いだろう。王子、王女よりも上だ。
「す、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
そんな僕に睨まれた彼らは顔を手で隠しながら脱兎のごとく尻尾を撒いて逃げ出していく。
ったく……そんな無駄なことをしたって諜報に優れるエスカルチャ家の人間を相手に逃げられるわけがない。
後でしっかりと釘を打っておかないとな。ゲーム内で彼らは馬鹿やらかしたので。
「大丈夫か?」
僕は自分の後ろにいる茶髪に茶色の瞳を持った少し地味めではあるものの顔立ちの整っている一人の少年、イスタルキャンパスの主人公であるルス・アレイアードへと声をかける。
「あ、ありがとうございます」
僕が誰かもよくわかっていない様子のルスは困惑の表情を見せながらも深々と頭を下げる。
「……何があったの?怒号やら悲鳴を上げて逃げ惑う人とかいたけど」
そんなタイミングで声を聞きつけて来たであろう少女、第三王女であるミュートスが路地裏へと顔を見せる。
「って、ノア・エスカルチャ……ッ!?」
「これはこれは、ミュートス王女殿下。お久しぶりですね」
人の顔を見るなり驚愕の声を漏らして表情を引き攣らせる失礼なミュートス王女殿下へと僕は声をかけるのだった。
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