討伐依頼

 特に意味もなくノリでレイナに合わせて彼女のように厨二病が如き自己紹介をしてみせた僕。


「わ、私は第二王女のミュートスよ。よろしく頼むわ」


 そんな僕に対してミュートスは一切そのノリに乗ることはなく真面目かつ簡潔に自己紹介を終えてしまう。


「「……」」


「な、何よ……ッ」


 そんなミュートスに対しては当然、僕とレイナは抗議の視線を送るのだが、彼女はたじろぎながら視線を逸らす……まぁ、普通に考えればそんな反応にはなるよな。


「とりあえず自己紹介の話は置いておきましょう。もう良いわ……えぇ、本当に。他の生徒会メンバーはおそらく、しばらくこっちに来ることはないでしょうから。これで完全に自己紹介は終わりね」


 勝手に僕とレイナがミュートスを責める空気感を作っていた中で、その流れに割り込むようにして生徒会長であるアンバーが口を開く。


「さて、それでは次の話をしておきましょうか。私達生徒会も多忙……何故かはわからないけど、学園の便利屋のような立ち位置になりつつある私たちのもとには今日も生徒たちから寄せられた依頼があるわ。それをさっさと解決していきましょう」


 そして、上手く話を切り替えてみせる。


「了解だよ……それで?どんな依頼が来ているの?」


「アホみたいな量来ているわよ?生徒たちには私たち生徒会をなんだと思っているのか聞きたいくらいに。百はあるわね、一つずつ地味に解決していくしかないわね」


 依頼の数が百……?どう考えても多すぎだろ。正気の沙汰じゃないんだけど。

 うちの領地の冒険者ギルドに寄せられている数よりも多いが。

 マジでこの学校の生徒は生徒会のことをなんだと思っているのか尋ねた方が良いやつじゃん。


「まぁ、良い機会よ。このままみんなで協力して行きましょう。個々人の関係を強めるために新入生と私たち三人が必ず一回はペアになるように組んでいきましょうか。上級生は一度、単独になってしまうけど、別に良いわよね?うちのメンバーなら一人でも問題なく依頼を完遂できるでしょう」


 僕が内心で驚いている間にも手際よくアンバーが物事を決めていってくれる。

 うん、楽だし。このまま全部任せてしまおうか。


「それじゃあ、とりあえず面倒くさそうな依頼から片付けていくとして……最初のペアはどうしようかしら。あみだくじにでもしましょうか」


「お任せします」


 いそいそとあみだくじを作り始めるアンバーをぼけーっと眺めながら僕は適当に言葉を返す。

 自分が仕切らないってなんか新鮮だなぁー、なんて考えながら。



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