生徒会長と

「ということでまず、ノアと一緒に依頼をこなすのは私になったわ。よろしくね?」


 公正なあみだくじの結果、中二病娘であるレイナがソロとなり、副生徒会長であるセーラと王女たるミュートス王女殿下が一つにペア。

 そして、僕と生徒会長であるアンバーが一つのペアになった。


「せっかく私たち二人になったことだけ……真面目に仕事はやらないとね?」


「そうであるなぁ……問題として、レイナとセーラ、ミュートス王女殿下ペアは少し、頼り


「……えぇ、そうなのよ。レイナはともかくとしてセーラはかなりまともな部類だったはずなんだけど、何故かミュートス王女殿下と常にギスギスしててぇ……はぁー、生徒会運営も楽じゃないわ」


 ギスギスしている理由の大半は僕だろうけど。

 ちゃんと原作主人公の動きに沿って攻略は進めている。


「何かのトップになるとはそういうことだとも……僕とて、常に領地運営には頭を悩ませておる。経済活動と格差。自由と不自由。実力主義と才能。ありとあらゆる物事の中間、バランスを取るのが非常に難しい。すべてを自由とし、実力主義の名のもとに格差を容認するわけにも、またその逆を進むわけにもいかない。何が正解で、何が良かったかなどわからない……永遠の問がない中で進むことほと難しいものはない」


 異性関係で拗れるように誘導し、それをなお攻略のために半ば放置している僕が言えることではないことを、堂々とアンバーへと語っていく。


「えぇ……わかっているわよ。私の進む道が簡単なことじゃないくらいね。だからこそ、楽しいみたいなところもあるしね」


「それは違いない」


 僕はアンバーの言葉に頷く。

 最初の頃は、内政ゲームのつもりで気楽に領地運営を携わていた僕であるが、それでも政策によって救われる者、そして───命を失う者。

 その両極端な人が生まれる。


「僕たちには数多多くの人たちの命がのしかかり、其れを前にしても潰れずに多くを導く必要がある。きつく、辛い道だが進むしかないのが我らよな」


「えぇ……そうねぇ」


「して、上に立つものとしての話は置いておいて、一体どの依頼を受けるのだ?かなりの量があるが」

 

 既にレイナとセーラ、ミュートス王女殿下ペアにやってもらう依頼は割り振っている。

 後は僕たち二人の依頼である。


「どれにしようか?」


 僕の前に立つアンバーが自分の前にたくさん並べられている生徒たちから寄せられた依頼書を見ながら悩む。


「ねぇ?後輩君」


 そして、一つの依頼書を手に取ったアンバーが僕の方に視線を送りながら口を開く。


「はい?……あと、後輩君???」


「君は実力に自信があるかい?」


「あるが……そんなことより、今。僕のことを後輩君と呼んだか?」


「良いねぇ。それじゃあこの依頼にしようか。さぁ、行こうか、後輩君。厳しい戦いになるけど覚悟してね?」


「いや、だからその呼び名は」


「さぁ!行こうか!」


「だから、その呼び名は……ちょっと、待て!?歩くのが早い!」


 自分の後輩君呼びに対する己の疑問を無視して、意気揚々と生徒会室から出ていく生徒会長を僕は慌てて追いかけるのだった。

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