上級悪魔

 上級悪魔。

 その存在はエスカルチャ家にとって天敵と言ってもいい。

 何故か、それはこちらが悪魔の住まう魔界とこちらの人間界を自由に行き来出来る存在であるがために、影法師を用いても上級貴族の襲来を予知できないからだ。

 一応、上級悪魔が自分たちのことを認知できないようにする魔法などで対抗策も作っているが、それも未だ家として完璧に出来ているわけじゃない。


「そんな、怯えることはないとも。あまり、私としてもエスカルチャ家とは争いたいわけではないしね……むしろ、ここで暴れている下級悪魔どもを殺してもらいたいと思っているほどだ」


 上級悪魔が考えているなどただ一つ。


「人間を恐怖に叩き込み、悪感情を奪うのは良いが、不用意に人間を殺すのは頂けない。悪魔たるもの人間一人が生まれただけで小躍りしなければなるまい」


 自分たちの食事のこと。

 人間の生み出す悪感情についてだけ……悪魔とは、人間の悪感情を食べて生きているのだ。

 別に食べなくとも生きているらしいが。


「それに、あまり暴力による絶望はあまり私の好みではないのだ。恥辱の方が好きでね。そういう意味では従来のエスカルチャ家の当主が垂れ流していた悪感情こそが至高であった」


「他人が作り出した悪感情など大してうまくもないだろうに……別に、ここで手伝ってくれるなら、適当にプライドの高い女でも見繕ってくるが?」


「私に性別などない。別に君が食事対象でも良いが……今の、数多の悪感情を昂らせている君から私好みの悪感情は吸えないだろうな」


「……ちっ」


 悪魔どもは人間の抱く感情を完全に読み取ってくる。あいつら以上にやりにくい存在も中々いない。

 なおかつ、ちゃんと実力も強い。

 一部の、遥か高位の上級悪魔なんかはラスボスなんかよりも強かった。

 

 悪魔どもは人間の悪感情にしか興味なく、少しでも多くの悪感情を得るために人間をしっかりと生かし、滅びそうになれば助けるほどに人間の悪感情を好いているからこそ、何とか脅威にはなっていないだけ、とも言えるのが悪魔たちなのだ。


「だったら、何の用?わざわざ僕に」


 そんな悪魔、彼らの中でも高位の上級悪魔に対して、僕は何の目的か問いただすのだった。

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