固有魔法
多くの者たちが僕の家系魔法を見て奮起させられたのか、既に多くの教育を受けている上級貴族の子供たちが各々好きなように魔法を使って修行に励んでいる。
だが、それでも粗削りであったり、ツッコミどころが満載だったりと、問題があるところも多い。
「……」
そんな様子を熟練の教師であり、明確な強者でもある先生が観察している。
各々の生徒たちの能力を図り、今後の授業の組み立て方を考えているのだろう。
「待って!?これ……普通に強い!?ただ見るだけじゃないの!?」
そんな授業の中でミュートス王女殿下が悲鳴を上げる。
今、彼女は自由自在に動き回る影法師と白熱の戦いを繰り広げている。
「僕の場合は未来視付きであるからな。数秒先の未来を見て回避行動を取ってくるから普通に強力である」
「い、意味が……ッ!」
ミュートス王女殿下が放つ魔法をすべて回避し、その小さな体でもって迫って拳と蹴りを繰り出してくる影法師を前に彼女は非常に苦戦していた。
そして、その果てで。
「……ッ、って?あれ?」
とうとう避けられないタイミングで自分の前に立った
「影法師はただの影だ。実際に叩くことは出来ないぞ?ついでに言うと攻撃も当たらない」
「何よそれ!?全然模擬戦にならないじゃない!なんで影法師と模擬戦をするように告げたのよ!もー!」
自分の体内の中に入って華麗な踊りを見せる
ちなみにではあるが、そんな影法師は僕の選択次第で実体化させられるし、普通にその子から攻撃魔法の山をぶつけることも出来る。
「……なぁ、俺に汎用魔法を教えてくれないか?俺ってば固有魔法くらいしか使えなくて……」
不満げなミュートス王女殿下の様子を見て内心で笑みを見せていた僕へとルスが話しかけてくる。
「固有魔法くらいって言っているが、固有魔法一つでこのクラスにまで来ているのだ。普通に脅威的であろう」
主人公であるルスの持つ固有魔法は非常に強力である。
その魔法とは『魔転宿体』と呼ばれる者。
自分の魔力をそのまま一切の無駄なく身体能力へと変更するのだ。
世によくある身体強化系とは一線を画した上昇幅であり、これによって得られる圧倒的な身体能力だけで大体のものを殺せる。
石を投げるだけで銃の弾丸のように出来ると言えばそのヤバさもわかるだろう。
「既に固有魔法だけでもルスは完成してそうだが?」
「それでも俺は汎用魔法を学びたい。もっと強くなりたいんだ、ノアのように」
「……良いだろう」
しょうがないにゃぁー!僕はこちらへと熱心に見つめながら誠心誠意頼んでくる彼の言葉に頷くのだった。
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