中二病と

 アンバーと共に依頼を行ったその三日後。

 次の依頼はあみだくじの結果、僕は中二病娘であるレイナと共にすることになった。


「ふわっはっはっはっは!我ら闇に潜み、闇を狩る者!そんな我らに相応しき天より下りし定めが今宵もまた一つ……」


「然り!して、統領よ。此度、我らが前に舞い降りし定めはなんであるか?」


 生徒会として大々的に活動しておきながら闇に潜みってなんやねん、とレイナの言葉に内心でツッコミを入れながら彼女の言葉に答える、中二病全開で。

 ちなみに、彼女は中二病すぎるその性格が当たり前のように問題となって基本的にぼっちである。

 だからこそ、こうして適当に中二病ワールドに同調しておくだけで好感度を稼げるのだ。

 

「ふっ、さほど難しいものでもないとも。我らに下された使命は奥深き森林が最奥に咲かす一輪の恵みの採取である」


「なるほど、尊大にして明瞭なる天鳳の果実を天はお求めになるか……」


「ふっ、天も酷なものよな、されど……これは我らに託された試練。否は許されず、天には常に仕えなくてはならい」


 さてはて……さてはてさてはて、奥深き森林が最奥に咲かす一輪の恵みの採取って何?全然わからないのだけど。

 奥深き森林……王都から少し離れたところにある少し深い森か?あそこで採取難易度の高いものと言えばなんだ?

 月華草か?それの採取が今回の依頼か?

 

 中二病空間。

 それは、元々前世で中学二年生を経験した僕としては楽しいとも言えるワールドではあるが、それはそれとして現実の話が絡んでくるとなるとそれはもはや難解な暗号と化してしまう。


「……あぁ、そうだな」


 僕はどんな依頼で、何をすればいいのかまったくもって理解出来ていなかった。


「さて、それでは定めをこなしにいこうではないか。天に仕え、天を愛しながらも、呪われた運命をもって生まれ、闇に潜みて闇を狩ることを宿命とされた我ら二人で」


「えぇ……尽きぬ天より与えられし我ら二人だけの運命に従って。我らは常に隣立つのだ」


「う、うむぅ!」

 

 そして、そんな状態で勝手に話が進んでしまいそうだった。

 いや、その、うーん……ちょっと不味いか……?

 いや、でも適当にレイナへとついていけばなんとかなるか?まぁ、なんとかなるやろ、ならなかったらその時に考えるかぁ。


「では、行こうか……大海原へと」


 森林なの?海なの?どっちなの?

 そんなことを考えながら二人で無意味に集まっていた黒のカーテンで暗くして蝋燭を中心で灯しただけの空き教室から僕たちは移動を開始するのだった。

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