アンバー
既に時刻としては太陽が沈んだ暗く寒い夜。
「もぉー、酷いよね。私を囮にするなんて、上級生への敬意が足りないよね。それにみんなもみんなだよ!なんか私だけ疎外感が強かったんだけど!確かに私は上に立つ者としてしっかりとし、みんなからは一歩引かなきゃいけない立場だからと言っても、それでもあの疎外感は凹むよぉ?まったく、信じられないよね!」
そんな夜であっても学園の生徒会室には光が灯り、その中で生徒会長であるアンバーが一人で愚痴をこぼしながら事務作業を行っていた。
生徒会は確実にキャパオーバーとも言える業務を、生徒たちから任される大量の業務を背負っており、それらをこなすためにいつもアンバーは必要以上に頑張っているのだ。
「……はぁー、寒いなぁ」
そんな彼女が残る生徒会室へと入る扉へと寄りかかって廊下に立っていた僕はゆっくりと動き出してその扉を開ける。
「うぇぇぇぇぇぇぇ!?後輩君!?」
「あれ?まだ残っていたのか」
生徒会室へと入ってきた僕に対してアンバーが驚きの声を上げながら、書類からこちらの方へと視線を送ってくる。
「こ、ここに何の用で?」
「忘れ物を取りにな。というか、さっむ……暖かくするぞ」
僕は魔法を発動させ、ここの温度を上げる。
「ありがとう。それで、忘れ物はしないようにね?」
「……うむ。して、アンバーは何をやっているのだ?」
「いや、ちょっとだけ仕事をね……あはは」
僕の疑問に対してアンバーは苦笑を浮かべながら言葉を話す。
「なるほど。それでは手伝おう。少しもらうぞ」
「あっ!?ちょっと……!別に良いのに、これは私の仕事だから」
「アンバーは一人じゃないではないぞ?いくらでも僕を頼ると良い。君にだけ背負わせるわけにもいかぬ」
アンバーという少女は正義感が強く、何もかもを自分で背負い込んで苦しくなっちゃう女の子としてゲーム中に描かれている。
そんな中で、主人公は彼女を支えるかのように立ち、色々なことを積極的に助けていく。
「これでも僕は現当主なのだな。書類仕事であれば手慣れたものよ」
「あ、ありが、とう」
「こういう時はお互い様なのだよ」
自分の隣に立って手助けしてくれる。
そんな頼もしい姿を前にアンバーは主人公へと徐々に惹かれていくことになる……ってのがゲームの感じであり、それを今。
僕が代わりにやっているところなのだ。
「ふむ」
「……」
当主として培ってきた事務作業能力、それをフル活用してアンバーの隣に座る僕は作業を進めていくのだった。
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