初登校
オワイオス王国の子供たちが集められる学園、オルグイユ貴族学園。
ここでは基本的にすべての貴族が平等であるという建前が存在し、クラス分けは完全なる実力差によって振り分けられる。
だが、基本的に魔法は血筋が優れた者に微笑む傾向にある。
そして、幼少期の頃からどれだけ栄養を得られたかで保有魔力量も変わってきてしまう。
それらの理由より生活もかつかつなことが多い下級貴族よりも圧倒的に裕福な上級貴族の方が実力は上である。
教育面でも当然雲泥の差があるしね。
「随分な疎外感なことで」
そんな中でただ一人、伯爵家以上の上級貴族が集まるAクラスにおいてただ一人の男爵家の人間としてクラスで孤立していたルスへと話しかける。
僕が休んでいた登校初日の段階でボッチがほぼ確定的になってしまったようだ。
そんな彼に話しかけて上げる僕は優しいね……存分に恩を感じ取ってくれ。
「……し、仕方ないだろう。俺だけ男爵家だからな。受け入れられるものも受け入れられない」
クラスでポツンと座っていたルスは僕の言葉に対してそっと視線を逸らして情けない声を漏らす。
「違いない」
それに対して僕は笑みと共に頷く。
「むしろ、お前が俺に話しかけに来てくることこそがおかしいんだ」
「僕だってただの男爵家の倅なら話しかけにいかないとも。男爵家の倅でありながらここに立っている。それだけで僕が目をつける理由として十分であろう」
「……俺には、ただの実力しかないさ」
僕の言葉に対してもルスは肩をすくめながら自嘲気味に呟く。
「結局のところ、世界を決めるのは実力だ。どんな法にも、秩序にも、その根底には実力があるのだよ。だからこそ、エスカルチャ家は特別扱いされているんだ。他家とは格別した実力、得意分野があるが故にね」
結局、実力があったルスは主人公として男爵家の生まれでありながら英雄としての地位を確固たるものにしたからな。
最後にあるのは実力だけだ。
「確かに、そうかもしれないが」
「誇っていても良いことだよ」
「えぇ、確かにそうね。だって現侯爵家当主と王女である私とも会話出来ているんだもの!最強に決まっているわ!」
僕とルスの会話にミュートス王女殿下が意気揚々と混ざってくる。
「……昨日、俺のことを完全に無視していたけどね」
それに対してルスは吐き捨てるように呟く。
「わ、私は割と完璧な美少女だけど……それでも色々な拘束があるのよ。世間体を気にしなくていいエスカルチャ家と比べないで頂戴よ」
それを受けて一気に勢いを失いながらしどろもどろになって言葉を返す。
「自分で言うかね」
そんな自信満々でありながらも全然自信ない彼女の言葉に僕は苦笑いしながら言葉を返すのだった。
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