敵
僕が、爺やを死なせた。
だが、爺やが残したものもある。
「ノア様!今後はどのように致しますか!?わ、我々はどのように動けばいいのでしょうか?」
この、砦とそこに詰めかけている兵士たちである。
「……死者、十数名。負傷者数十名。戦闘可能は百近く」
僕は砦の中にいる人間の数を魔法で探知していく。
次に負傷者へと回復魔法をかけていき、放置されている死体を魔法で処理していく。
「それで?どうすればよいでしょうか?」
「全員、退却しろ」
僕は自分の方へと食い下がってくる兵士たちの言葉へと簡潔に答える。
「ど、どうしてですか!?こ、ここは我々で必死に守った地点なのです……どうか、このまま!我々と共に戦ってください!どうか、この先の民衆を……!」
「後は全部僕がやる」
切羽詰まったような、今にも泣きそうな兵士たちの声に対する僕の答えは簡潔。
「ぜ、全部ひとりでやるとは、ど、どういうことでしょうか……?」
「そ、そうです!」
「いきなり全部ひとりでやるなんて無理に決まっています!」
そんな僕の答えに対して周りの兵士たちが食い下がってくる。
「無理であることなどないとも」
それに対して僕は視線も一つあげることなく答える。
「ふふふっ……魔物の数が全部で三万ちょい。何も問題などないよ。僕ならね」
影法師は、何も見ることしか出来ないわけではない。
僕は自分の手札にある影法師を使えば三万の魔物など何の障害にもならない、影法師を展開出来る数ならとうに一兆に届くもかくやという勢いである。
「それとも、なんだ?お前らはエスカルチャ家の深淵を覗きたいのか?」
「は、ハッ!失礼しました!」
僕の言葉を受け、この場に詰めかけていた者たちが脱兎のごとくこの場から退却し始める。
「すぅ……」
死なせた。僕が死なせた。
これはすべて、僕が所詮、この世界はゲームでしかないと切って捨てたからに他ならない。
「はははっ」
だからこそ、やらねば。
「……おぇ」
僕が、己の行いに対して、責任を持ち、なんとか、せねば。
「はぁ……おぇ、おぇぇぇぇぇぇぇぇ」
何とか、出来るはずだ。
爺やの意思を受け継ぐくらいできるはずだ。
抗魔結界を無理やりにでも押しのけ、どんどん影法師を展開していく。
「同数までいればいいだろう……はぁ、おぇ……うぐっ」
僕はゆっくりと体を起こし、爺やの身体から手を離す……爺やの遺体は、後で家族の方に引き渡すことにしよう。
「はぁー」
そして、そのままふらふらと魔物の方へと向かっていくのだった。
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『ヤンデレストーカーな残念美少女ドジっ子お嬢様がポンコツ過ぎて逆に可愛くなってきた件』
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