レイナ
月華草。
その採取依頼を無事に完了させたレイナは一人で誰もいない王都の屋敷へと帰ってきていた。
「ふ、ふふふ……」
地方権力者であるラスティーク伯爵家が保有する屋敷。
人見知り気味であったレイナのことを考慮して、その父であるラスティーク伯爵家当主が屋敷の維持を魔法に任せ、使用人を置かなかった屋敷が一角。
怪しげな物品で埋め尽くされた真っ暗な部屋の中で、一人。
レイナは不気味な笑い声を漏らしていた。
「……我が同胞、きぬ天より与えられし我ら二人だけの運命に従って。我らは常に隣立つ……ふふふ」
彼女には悲劇的な過去などなく、特殊な状況など何もない。
ただ、何処にでもある多感な時期に少しだけ変な方向に進み、孤立してしまっているような子である。
「男の子……男の子かぁ、我は天より与えられた闇の使命を持つ者なりて、色恋などという下賤なものにうつつを抜かしていられるほど暇ではな……暇ではないのだがなーっ!そう!暇じゃないんだけどねぇー?」
男の子と付き合ったことはなく。
婚約者もいない。
その特殊な言動によって?
見た目の可愛さの割に男の子との縁はない。
学園生活においては。
基本的に生徒会くらいしか居場所のないぼっち。
自分で変なことをして。
孤立して。
それで勝手に悲しんでいるのがレイナである。
「むふふ……」
レイナを一言で表すのであれば、ただちょっとだけ個性的な思春期の女の子である。
そして、そんな思春期な女の子が夢中になるものと言えば、色恋沙汰が筆頭に上がるだろう。
「むふふぅー」
大前提としてノアは異常なまでにイケメンである。
少しナンパすれば女の子を簡単に手玉に取れるほどの超絶イケメンである。
そんな子が自分と仲良くし、孤立気味の女の子に対して優しくし、常に邪険にされていた自分の思う世界。
中二病世界に同調してくれるのだ。
「ノア……ノア、実に可愛い後輩だよな、うん。我とも同じ定めを持つものでもあるし、何よりもあそこまで言ってくれたからなぁー……我には厳しい定めがある」
異性として、意識しないわけがないだろう。
何よりも、どこまで行ってもノアはイケメンなのだ。
レイナとしてはそこまで交友が深くもないというのに、既にもうノアへと気持ちを寄せ始めていた。
ゲームにおいて、世紀の大チョロインとまで言われていた彼女の攻略のしやすさはそう舐められるものではない。
「でも……あの子に言われたのなら?いい寄られたのなら?考えなくても……って感じだよね?」
彼女は一人、ベッドの上で頭の中をピンク色にしているのだった。
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