輸送依頼
この世界における長距離の移動手段は基本的に馬車となる。
だが、馬車と言っても地球における馬車とは大きく違い、車の部分も魔法で補強され、馬も魔法によって強化されている。
その速度も、移動の快適さも全然違う。
「ふわぁぁぁぁ」
ガタガタと一切舗装されていない道を元気な馬が御者もなしに駆け抜け、その振動に揺れる馬車の中は魔法によって完全に振動が吸収されることもあって、酔うことはない。
「ふふっ、眠そうであるな」
大きくあくびを浮かべる僕を見て目の前にいるセーラは口を開く。
「……昨日は寝れなかったからね」
「おかしいな?別に僕は変なことしていないのだが」
「嘘つけ、常に夜這いを仕掛けようとしてきやがって……もう少しおしとやかさを持つべきだろうに」
セーラと共に王都を出発してから三日。
彼女は毎晩のように僕の方へと夜這いを仕掛けにきていた。
これまでハーレムだ、攻略だなんだと言いながら、ピュアな空間で済ませていたところにいきなり夜這いを仕掛けて雰囲気をピンク色に染めてこようとするな。
一気にR18になってしまうわ。
一回、その女を抱くとその時点でそいつの固定エンドに繋がってしまうから……ハーレムエンドが固定化されるまで僕は誰ともしないと決めているんだよ。
僕の目的は主人公のようなハーレムを作ることだからね。
「えぇ?良いだろう?僕のような可愛い女子から迫れられて……嬉しくない人間はいないと思うのだ。
「ざっけんな。厳つい仮面姿に迫られる僕の身にもなれ」
「おかしいな……確かに僕は仮面で顔を隠しているが、それでも体はムチムチ。こ、個人的にはちょっと体重のこともあって好きじゃないけど、殿方はこれくらいが好きなのであろう?なら喜ばしいことじゃないか」
「ほざけ、女。僕は面食いだ。体がエロくとも顔がブスであれば萎える」
「ふふっ。それなら……この仮面を、外してあげようか?」
ブスは帰れと告げる僕に対してセーラはいたずらっ子ような笑みを浮かべながら己の仮面へと手を付ける。
「無理するではないぞ」
「……うん」
だが、そんなセーラは僕の一言を受けてあっさりと沈静化する。
セーラの相貌は非常に美しい……その様はまさに傾国の美女というべきレベルであり、それが故に少しばかり、昔に彼女のトラウマとなった出来事が起きてしまっている。
いくら、相手がその出来事を最終的に解決に持っていった僕であったとしても、あまり気持ちが晴れるようなものではないだろう。
「ということでもう夜這いは辞めろよ?」
「あっ、それは嫌だ」
「おい」
頑として夜這いだけは辞めようとしないセーラに対して僕はツッコミの言葉を入れるのだった。
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