副生徒会長と

「ようやく、僕の出番が来たわけだね」


 アンバー、レイナ、ミュートスの三人と来て、最後は生徒会の副会長であるセーラである。


「ふふっ……だが、僕はここで数年。君が生徒会に入るのを今か今かと待っていたのだ。今更少し待たされるくらいわけないとも」


 セーラは仮面の下で恐らく笑みを浮かべていそうな朗らかな声で自分の番が最後になってしまったことに対してのコメントを漏らす。


「最後には福があるって僕の故郷では言うんだ。それに従って欲しいね」


「……そんな言葉、僕は知らないけどね。僕が知らないだけで君はこの国出身じゃなかったのかい?」


「エスカルチャ家には夢が一杯なんだ」


「……レイナとの交流も思ったのだが、エスカルチャ家ってだけで情報に関する信頼がカンストしてしまうのどうにかならないかい?ズルいと思うのだが」


「そんなこと言われても割と困るのだが」


「まぁ、そうなんだけど……それでは、君が言っていた通り、最後には福があるという言葉にありがたさをもって依頼を選ばせてもらうよ」

 

 未だ数多く残っている依頼の数々。

 その中でセーラが選択したのは多くの依頼の中で最も長い時間がかかるであろう依頼、王都の方から遠く離れ、国境。

 そこに建てられている砦へと物を届けて欲しいという依頼だった。


「うわぁ、その長いやつを選ぶと言うのか?」


 依頼の中で最も時間のかかるやつであり、その割に面白さなども何もない依頼。

 ただただ長い距離を移動するだけという依頼をセーラは選択する。


「えぇ。僕とノアの出会いはワクワクドキドキだっただろう?君との日々は未だ色あせないほど強く僕の中に残っているとも。だが、刺激的なものよりも僕としては君とまったり馬車に乗って楽な時間を過ごしたいと思ったのだ」


「……確かに、僕とセーラの記憶は刺激的なものしかなかったが」


「そうだろう?だからこそ、ここで一つ落ち着いておきたいんだよ、ダメかね?」


「別に駄目とは言っていないとも」


 僕は少しだけ不安そうな表情を浮かべながら尋ねてくるセーラの言葉に対して軽い言葉を返す。


「そうであるよな!」


 僕の返答を聞いたセーラの瞳が輝いた……ような気がした。

 残念ながら、彼女の表情は仮面によって隠されてしまっているので、実際のところどうなのかを確認することは出来ないが。


「それじゃあ、いつ出発にする?遠出になるだろうし、準備はいるだろう……僕は明日でもいけなくないが」


「それじゃあ明日にしよう。僕は既に準備など終わっているからな」


「あっ、そうであるか」


 僕は自信満々なセーラの言葉に何とも言えない感情を抱きながら頷くのだった。


 

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