アンヘル
父上を殺し、当主としての道を進んでいる僕は今のところ何の問題もなく息をすることが出来ていた。
元より我が家において、当主はひたすらに腐敗するけれども、部下が不正を働くことは許さなかったため、まともな人が多いのだ。
そんな彼らとしても上はまともであった方が嬉しいだろう。
そして、民衆も当然である。
というか、我が家における領地運営は中々にカオスなことになっており、年貢九割とかいうバグみたいな高税率だったのだ。
それを一般的な税率である五公五民に引き下げるだけで民衆からの支持はバッチリである。
減税における財源不足は何も心配することはない。僕が少しの贅沢を我慢するだけで財源はかなり余裕となる。
他にも処女税とかいう名前だけでヤバいとわかるカスみたいなものもあり、少しだけまともな政治をするだけで評価はうなぎのぼりである。
問題は親戚筋やその他の貴族に海外。
十歳というあまりにも若い当主の誕生に周りがどう反応するかどうかである。
だが、そこら辺の問題が起こるまでにはまだ少しばかりの時間的猶予があり、考えるのは後で良いだろう。
「とりあえずはアンヘルの方だよね……」
ゲームでは性奴隷として悲しい未来が待っているアンヘルに破滅の未来が待つその部下たちは現在、全員が無事の状態で我が家の屋敷の離れに滞在している。
「入るぞ」
離れの前にまでやってきた僕は玄関の戸を叩きながら声を上げる。
「ど、どうぞ!」
そんな僕を少しだけ緊張した面持ちのアンヘルが出迎えてくれる。
「部屋の中へと、どうぞ……」
「うむ」
アンヘルに迎え入れられた僕は離れの建物の中に入っていく。
そして、やってきたのは応接室である。
「さて」
上座に腰掛ける僕はゆっくりと口を開く。
「君が僕の父上を直接的にかけたのは今より一週間前のことだったか……時が流れるものは早いものだな。それで、一週間前。何を言ったか覚えているか?」
「はい。一週間以内に今後どうするかの方針を部下と共に話し合って、と申されました」
アンヘルは僕の言葉に頷くと共に、一週間前に僕が告げた言葉を復唱する。
「あぁ、そうだ。他に流れるもよし、我が家に寄り付くもよし。僕はそう言ったはずだ。他に流れるで苦難の道だろうが、こことしてもお家騒動が起こることが予想される故にあまりお勧めも出来ない、と酷な選択を迫ったはずだ」
「いえ、酷なものでもありませんよ……私は、もっと大きなことだって決断してみせたのですから」
僕の言葉をアンヘルは否定しながら、こちらの方へと力強い視線を送ってくる。
うーん、ゲーム内ではほとんど感情の色は見せないようなキャラだったが、性奴隷となる前はこれだけ強い少女だったのか。
「どうか、私たち部下一門。すべてノア様のお慈悲をあずかりたく。お家騒動が起きたとしても、粉骨砕身の覚悟でお支え致します」
そんな風に僕が意外だなぁーっ、なんて割とくだらないことを考えている間にも
何か、アンヘルの覚悟が強すぎて、なんやかんやでなんとかなるでしょ、と楽観的に考えている僕が温度差で風を引いてしまいそう。
「ならば迎え入れよう」
内心でクソ下らないことを考えながらも僕はキリっとした態度で鷹揚に構えながら力強く頷くのだった。
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