お着換え
「やっぱり見た目は普通に良いよなぁ」
僕は領内の服屋に仕立てさせた黒を基調とする貴族服を身に纏った僕は鏡の前でくるりと一回転してみせる。
未だ十歳故に幼さしかないが、それでもハンサムな香りは十分している。
少しだけ青みがかった綺麗な黒髪に金と蒼のオッドアイ。
耳元には魔法の発動を助長するためのピアスが幾つもつけられており、目元の泣きぼくろがチャームポイントな美少年だ。
今はまだ美少年だが、成長すれば高身長でかなり地雷臭のするイケメンへと変貌を遂げる。
最低最悪な悪役でありながら、その見た目だけ一定数の熱狂的なファンがノアにはついていた。
「ふふっ……普通にイケメンへと成長したことは良いことだよね」
鏡の前で幾つもポーズを取る僕は自分の見た目を自画自賛する。
今はちょっとお家騒動でそれどころではないが……すべてが片付いたらヤリチンにジョブチェンジしても良いかもしれない。
流石に今はちょっと生き残ることが先決だけど。
「……ノア様。着替えが完了しました」
一人でファッションショーをしていた僕のいた部屋にアンヘルが入室してくる。
「うぅん!……うん、良いではないか」
さっきまでの雰囲気を一変させた僕はアンヘルの姿に頷く。
今の彼女は青を基調とした動きやすそうなドレスを着ている。
元より美人な彼女は何を着ても似合う。
「ありがとうございます……」
僕の言葉にアンヘルが少し頬を赤らめながら頷いてくれる……別に言われ慣れているだろうに。何を今更恥ずかしがっているんだが。
「して、準備は出来たか?」
「もちろんにございます……何が前に来ようとも必ずやノア様の敵を殲滅して見せます」
「……別に戦いに出向くわけではないがな」
アンヘルは圧倒的な身体能力を持つキャラである。
非常に身軽で自由自在に短剣を使いこなすアンヘルは幼少の段階でもかなり完成された暗殺者としての技量を持っており、なおかつ彼女の
なんでお姫様が暗殺者として完成された実力を持っているのかという点は大いに疑問のあるところではあるが。
「それでは行くとしようか、王都へ」
「はい」
僕がわざわざ新しく用意させた貴族服へと袖を通し、アンヘルにまでドレスを着てもらったのは王都に向かうためだ。
無様にも逃げ出した伯父が持ってきた伝令には王都に来るよう書かれていたのだ。
父上であれば無視していたであろう案件を僕は素直に受け入れることにしたのだ。
まず、大前提として我が家は国防の要である諜報を一挙に担っている名家であり、散々戦犯をやらかしたゲームのノアの後も普通にエスカルチャ家は存続している。
それだけ重要視されているのが我が家であり、相手はどこまで行ってもあまり強く出ることが出来ないことを知っているうちの人間は基本的に自領から動くことはない。何を話し合うにしても自分の庭の方がやりやすいからだ。
王家であっても参上を無理強いすることは出来ないからね。
だからこそ、伝令としてやってきた伯父も僕は動かないだろうと勘違いして上にノアは動かないと報告してくれることだろう。
僕がわざわざ王都に行く理由はここにある。
我が領地を掌握するのは実に容易かった。
だが、こと話が広がって国全体にまでやってくるとやっぱり大きな問題である。
それを前にして何の問題もなく切り抜けるというのであればある程度の奇策は必要になってくるだろう。
「……はぁー」
少しだけ気乗りしないながらも僕は王都に向かうべく、伯父から送れること三日。
屋敷を出発するのだった。
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