第45話 ベルギー 緊張のスパ
8月末、ジュンたちはベルギーのスパにいた。しばらくぶりのベルギーGPだ。スパウェザーといわれる変わりやすい天候がライダーを悩ませる。今年もあぶなっかしい天気だ。ハインツはMoto3時代に急坂のオールージュで転倒し、ドクターヘリで運ばれたところなので、いつにない緊張の顔をしている。
金曜日は晴れたが、予選の土曜日は雨。気温15度と肌寒い。どしゃぶりではないが、レインタイヤだ。予選は大荒れだ。いつものトップ集団とは様相が違った。
1列目は、ザルケ・ミールのD社勢にルッシ。
2列目は、リンツ・ミロのS社勢とべンダー。
3列目に、ハインツとジュンとマルケル。
初めて、ハインツとジュンが並んだ。
4列目に、岩上・クワンタロそしてアゴスティーニが入った。アゴスティーニは、ジュンの後ろにつく「金魚のフン走法」をしていたのだ。ピット内では、まるでポールポジションをとったような喜びを表していた。
日曜日は、スパウェザーの心配がない晴天になった。気温20度、路面温度25度と、フランスGPとほぼ同じ状況だ。タイヤは前回と同じソフトタイヤを選択した。
1周目、スタートから第1コーナーのラ・スルスまでは距離がない。みな団子状態で右にターンしていく。そこから下りが続き、オー・ルージュで一気に登る。ここからケメルストレートで最高速がでる。ストレートエンドは一番難しい。ここで順位が大きく入れ替わる。ザルケ・ミール・ミロ・マルケル・ハインツ・ジュンと続く。ルッシとリンツ・ベンダーはストレートの伸びが今ひとつだ。
低速の下りの右コーナーであるリバージュを抜けると高速の左コーナー、いくつかの中速コーナーを抜けて、またもや左の高速コーナーのブランシモン。この2つの高速コーナーのセッティングでスパの勝敗が決まる。最後はシケインを抜け、フィニッシュライン。トップ集団は6台に絞られていた。
2周目、マシンの差はほとんどない。6台がほぼ等間隔で走っている。ここスパではミスをしないこととタイヤの温存ができるかがポイントだ。ジュンは、久しぶりにハインツの後ろで走れることが嬉しかった。
5周目、オールージュを抜けたところで、ミラーがザルコを抜いた。同じD社のマシンだが、チームは違う。ライバル心ありありだ。ところが、ペースを上げたミールはストレートエンドのレコームでバランスを崩し、スリップダウンしてしまった。トップ集団は5台に減った。
10周目、ザルケとミロのトップ争いになった。レース後半になり、様子見が終わったようだ。ところが、左高速コーナーのブランシモンが過ぎたシケインのところで、前輪ががたついている。タイヤに無理をかけたのだろう。直線で、この2台のペースが落ちてきている。マルケル・ハインツ・ジュンのトップ争いとなった。
15周目、ハインツがマルケルにアタックを始めた。同じH社だが、チームは違うので遠慮なしだ。コーナーごとにラインを変えて、コーナーで抜きつ抜かれつをしている。何度かハインツがトップにでたが、ピット前ではマルケルがリードしている。
18周目、ファイナルラップ。ストレートエンドのレコームでハインツが勝負をかけた。マルケルのインに飛び込む。そしてレイトブレーキング。タイヤスモークがあがっている。観客が悲鳴をあげている。しかし、2台とも曲がりきれずに、オーバーランでショートカットした。そのスキにジュンがトップにでた。その後のリバージュや高速左コーナーで、ジュンの後ろに2台がせまったが、タイヤを痛めたのか、マシンがぐらついている。ジュンはタイヤを温存してきたので有利だ。トップでチェッカーを受けた。続いてマルケル・ハインツ。3台とも予選3列目からの表彰台獲得。まずまずの結果で、ハインツも納得の3位だった。
ジュンのピットは大騒ぎとなっていた。今シーズン2勝目。これでスイスGPの優勝がまぐれではなかったことが証明されたのだ。ましてや、次はホームコースのオーストリア。多くのファンが集まることうけあいだ。
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