第54話 レイアとの夏バカンス

 ジュンはミュンヘン郊外のジュリアの母親の家で夏のバカンスを過ごした。ベルギーの家は、メカの木村に任せてある。レイアは3ケ月で、笑顔を見せるようになり、かわいい盛りを迎えていた。ジュンは四六時中、レイアと過ごしていた。ミルクを与えるのも、お風呂に入れるのも、常にいっしょ。ジュリアから

「 Don't you have a training ? 」

(トレーニングしなくていいの?)

 とうるさく言われたが、ふだん会えない娘とラブラブできるのは、貴重な時間だった。それでもレイアを抱きあげたり、寝かして、その上で腕立て伏せをして、レイアにキスをするというトレーニングをしていた。そんなジュンの様子を見て、ジュリアは、あきれ顔だった。

 そこに、ハインツファミリーがイタリアからやってきた。母親の誕生パーティだ。ハインツの娘メイは、レイアを見てお姉ちゃんぶりを発揮している。

 ジュンとハインツが話をするのは久しぶりである。

「 I congratulate a victory by a German round . A factory machine is wonderful 」

(ドイツラウンドでの優勝おめでとう。A社のマシンすごいね)

「 Thank you . Mr. Okazaki's power of the chief mechanic is big . He responds to the request , I take out certainly . Doesn't Marquel's understudy send you nearly ? 」

(ありがとう。チーフメカの岡崎さんの力が大きいね。俺がだすリクエストに必ず応えてくれる。そちらこそ、マルケルの代役、ちゃんとやっているじゃないか)

「 Mr. Okazaki's pupil cares to the mechanic and it's saved . He makes me a machine which fits me . 」

(岡崎さんの弟子がメカにきてくれて助かっている。オレに合うマシンを作ってくれている)

「 You seen to suffer from your another rider a lot . 」

(もう一人のお兄ちゃんには、だいぶ手こずっているようだね)

「 He is a genius . If it can be a course , I think wonderful results are put in . But , there are a lot of requests so , I think that a team and a mechanic are serious . 」

(彼は天才だよ。コースに慣れたら、すごい成績をおさめると思うよ。ただ、リクエストがすごいから、チームとメカは大変みたいだよ」

「 I think so . 」

(だろうな)

 というふうに、久しぶりにレースの話で花が咲いた。でも、お互いに後半戦の話は切り出さなかった。この夏のバカンス中でもチームはマシンの改良をしているはずなのだ。

 会食後、姉の景子がジュンとジュリアの日本での結婚式の話を切り出してきた。日本ラウンドの前に結婚式をすることにはしていたのだが、具体的には何も決まっていなかった。そこで、景子が言い出したことにジュンとハインツは驚いた。

「RS SATOの佐藤眞二さんが言いだしたことらしいんだけれど、サーキットで結婚式をやろうということなの。今年は、3年ぶりにMOTEGIで開催じゃない。MOTEGIの親会社のH社も自分のチームのエースの結婚式だから乗り気みたい」

その話を聞いて、ハインツは身を乗りだしてきた。

「 It is good . That it's a wedding in the final race . If a champion comes , too , isn't it best ? 」

(いいね。最終戦で結婚式なんて・・・チャンピオンもとれたら最高じゃないか)

「 Isn't it the reason done on the weekend . I think on practice day . It seems not able to concentrate on race . 」

(土日にやるわけないだろ。練習走行日だろ。なんかレースに集中できなくなりそうだな)

「 It's protiable for me . I think Jun loses the pressure . 」

(俺にとっては有利だ。ジュンはプレッシャーに負ける)

「 No such things . I don't lose the pressure . 」

(そんなことはない。プレッシャーには負けない)

 その言葉を受けて、景子が言い出した日は、

「眞二さんは、曜日はジュンに任せるということだったわ。練習走行の金曜日の昼か、土曜日の予選の前か、日曜日のレース後か、どれかということだったけれど、どのみちパーティーは日曜の夜だって・・・今のジュンの話だと決勝の後でOKね」

ジュンは半開きの口で

「決勝の後・・・!」

 と放心状態になった。それを見たハインツは大笑いだ。どうやら景子とハインツがグルになって、決勝の後の結婚式を引き出したようだ。傍らでは、ジュリアがジュンのポカーンとした顔を見て、吹き出していた。

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