第20話 因縁の岡山 またもや雨

 5月、さわやかな青葉の季節に第2戦が開催された。だが決勝日は雨。ジュンは岡山で雨にたたらえる運命なのかもしれない。でも、朝のウォームアップでは、トップの中嶋から1秒落ちだった。前回のオートポリスではトップから2秒落ちだったから進歩したと言われた。だが、トップライダーとて本気で走っているとは思えない。セーブして走っていることに代わりはないのである。ただ、ジュンはこの岡山のコースを気に入っていた。J-GP3の時は、ポールスタートの途中、雨で転倒リタイアだったが、走りの感触はよかった。

 予選は9位。3列目のインだ。前には予選6位の青木がいる。今日は青木塾だ。ジュンは青木の後ろにつく金魚のフン走法に徹した。青木の走りは手堅い。早めのブレーキングで、そのコーナーにあったスピードで曲がり、横すべりしないところでアクセルをあける。ハインツのような派手さはないが、ミスをしない分だけ、コンスタントなタイムで走っている。

 雨のレースを終えると、青木は5位。ジュンは6位に入賞した。表彰台には上がれなかったが、初参戦のチームが第2戦で上位入賞は喜ばしいことだった。ジュリアだけは不満顔だった。ストップウォッチを見ていてもつまらないらしい。ほとんど変化がないからだ。(変化があったらそれも問題なのだが・・・)

 6月、梅雨に入ったので、レースは1ケ月オヤスミ。7月半ばに富士ラウンドが控え、後半には鈴鹿の8耐だ。ブルーベルKチームも初参戦だ。ライダーは青木兄弟とジュンだ。天気がいい日は、テスト走行にあけくれていた。

 ジュリアは大学のテストのためにミュンヘンにもどった。にぎやかなジュリアがいなくなって、ジュンの家はとたんに寂しくなった。そこに姉の景子から手紙が届いた。レースシーズンが終わった11月に挙式をするので、ドイツに家族で来てほしいという内容だった。ジュンと母親は喜んでいるが、父親の剛士は複雑な顔だった。娘を遠くの外国に嫁がせることに、いくばくかの不安と不満があったからである。どの父親も同じ感情かもしれない。


 次戦は、モータースポーツ祭りの富士。JSBは金曜日予選、日曜日決勝の日程だが、四輪のレースとの併催なので、ふつうのレースよりもタイヤマーブル(カス)が多い。要注意のレースだ。

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