第46話 オーストリア 連勝なるか
9月半ば、KT社の地元、ザルツブルグリンクに集まった。今回はチームスポンサーのカール・メルケル氏も決勝を見にくるということで、ジュンはいつも以上に緊張している。何を言われるか分からないからだ。
予選の朝、日本から大きなニュースが入った。関東地方で震度6の地震が発生したとのこと。10人ほどが家や壁の崩壊で亡くなったと報じている。高速道路はいたるところで通行止めになっている。レース関係者にショッキングなことは、MOTEGIのサーキットに支障がでたということだ。MOTEGIに本拠をもっているH社のチームは、結構大わらわだ。もしかしたら日本ラウンド中止かという噂が聞こえてきた。
そんな中、KT社のマシンは絶好調だ。ストレートの伸びは抜群だったし、コーナリング性能も文句なしだった。さすが、ホームコースの利だ。これは、テストライダーの貢献度が高いことを如実に示していた。ジュンが、テストライダーに挨拶に行ったら2人のうちの一人が青木拓人だった。日本人がやっているとは聞いていたが、以前日本で同じチームだった青木とは驚きだった。日本語で話が盛り上がったのは言うまでもない。
土曜日の予選。ジュンはコースレコードの1分23秒11をたたきだした。マルケルがもっていたタイムを0.1秒縮めたのだ。
決勝も一度もトップを譲ることなく、文句なしの優勝を決めた。ジュンにとっては初のポール・トゥ・ウィンだった。
ピットにもどってくると、カール・メルケル氏がピットクルーに混じって、ジュンに抱きついてきた。大男に抱きつかれて、ジュンは倒れそうになったが、涙を浮かべているカールを見て、驚きさえ感じた。怖いイメージしかなかったからだ。ジュリアもピットの傍らで、涙を浮かべながら喜んでいた。本当ならジュリアが抱きつきたかったのだろうが、父親に譲った感じになってしまっていた。
年間ランキングは、マルケル・ルッシに続いて、ジュンが3位に上がった。このままいけば、目標の年間3位になれ、カールとの約束を果たすことができる。ジュリアが人一倍喜んでいた。
次戦は、ドイツ・ホッケンハイム。ハインツ得意のコースだ。H社勢の巻き返しが予想された。
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