第24話 MOTEGI ワイルドカードなるか
9月初め、MOTEGIにやってきた。得意の90度コーナーがあり、ジュンは意気揚々だった。今回は、日曜日だけの決勝だ。予選は3位になった。ポールはH社の高木、2番手は中嶋、4番手に青木弟が入った。野田は前回のSUGOの転倒でケガをしたらしく、今回はエントリーしていなかった。だが、10月のMotoGP日本ラウンドにはY社からワイルドカード参戦が決まっているということだった。シーズン前半の活躍が認められ、今回は無理をしないということなのだろう。中嶋は、年間チャンピオンになるために気合いが入っていた。ジュンがあいさつをしても、素っ気ない返事しか返ってこなかった。
決勝スタート。案の定、4台のトップ集団だ。前半は、高木・青木弟・中嶋・ジュンの順番だった。青木弟の調子がいい。時には高木を抜き、トップに出ることもあった。中嶋はスキを見せない。90度コーナーもジュンとほぼ同じラインどりだ。表彰台は難しいかと思っていたら、ファイナルラップでアクシデントが起きた。V字コーナーで青木と高木が接触し、コースアウトしたのである。どうやらアウトにいた高木がマシンをかぶせてきて、インにいた青木にぶつかったようだ。どちらが悪いというわけではなく、真剣勝負ゆえの結果なのだ。おかげでジュンは2位を獲得できた。これでMotoGP日本ラウンドにワイルドカード参戦できることになった。
表彰を受け、ピットにもどると青木弟が病院に行ったことを知った。後で知ったことだが、足を骨折していたとのこと。今回の2位は、青木弟のおかげでもらったようなもの。
ジュンは鈴鹿への帰り道、病院に見舞いに行った。
「青木さん、いかがですか?」
「ご覧のとおり、しばらく歩けん。全治3ケ月だそうだ」
「では、次の鈴鹿は?」
「むろん無理だ。代わりに兄貴がでることになった」
「そうですか。しばらくぶりのJSB参戦ですね」
「ところで、年間ポイント4位になったそうだな」
「はい、中嶋さん、野田さん、高木さんに続いての4位となりました。これも青木さんのおかげです」
「俺の転倒のおかげだな」
と言って、青木は豪快に笑った。ジュンもつられてしまった。
「S社の丸山が年間5位でジュンに勝ちたいと思っている。油断するなよ。高木は、今回の転倒でどこかにダメージを受けているかもしれない。ジュンが年間3位になるチャンスはある。がんばれよ」
「はい、青木さんの分もがんばります」
次戦は今年の最終戦の鈴鹿。青木弟のためにも頑張らねばと思うジュンであった。
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