第14話 続く試練 イタリア・ムジェロ
フィレンツェから車で1時間ほどで、ムジェロサーキットに到着する。ザルツブルグにあるKT社の寮を朝8時に出ると、昼には到着するという近さである。途中の飛行機から見るアルプスがとてもきれいだった。ここは、KT社向きの高速サーキットで、距離が5245mと長く、ストレートが1000mある。高低差も結構ある。一番の抜きどころは、最終コーナーのプーチネという左コーナーだ。ジュンはSUGOと MOTEGIを合わせたようなこのコースが気に入った。
ハインツは絶好調で、予選でポールをとった。初ポールだ。でも、当然のような顔をしている。なにせ、ポイントリーダーだからだ。ジュンは、ハインツのスリップストリームにつけたので予選3位となった。2位は佐伯だ。シュワンツマンも6位に入ったので、ジュンの後ろについている。
決勝は晴れ。スタートでジュンは遅れた。やはり1列目は走りにくい。第1コーナーでシュワンツマンに並ばれた。ジュンは無理をせず、シュワンツマンに譲り、1周目を6位で通過した。中盤は6台でのトップ集団を形成していた。KT社4台、H社2台の戦いである。後半もそのままのトップ集団で、最終コーナーで順位を入れ替えて走っていた。
ファイナルラップで、ジュンは第1コーナーでH社の1台を抜き、最終コーナーでシュワンツマンを抜いた。シュワンツマンのタイヤがたれていたようだ。4位でフィニッシュ。優勝はまたもやハインツ、2位に佐伯、3位は鈴木だった。
岡崎夫人が表彰台のハインツを見ているジュンに近づいてきて、
「4位ならまずまずじゃないの。監督のジムも満足していたよ」
「でも、予選3位でしたから、表彰台に上がりたかったす」
「勝利の女神が来ていないからかしらね」
と笑って去っていった。ジュリアは学年末で大学の試験で苦しんでいるとのことだった。ハインツはジュンに
「 I won . Because no Julia . Jun is lonely , but she will come here at next time . 」
(私は勝った。なぜならジュリアがいないからだ。ジュンは、さびしいね。でも、彼女は次は来るだろう)
と、ウィンクしながら去っていった。ジュリアが来るのは、嬉しい方が強くなってきたジュンであった。
次戦は、初のモナコラウンド。ガードレールに囲まれたコースで無茶はできない。
テクニカルコースだ。低速コースなのでKT社には不利と思われた。でも、レースの聖地。ジュンはモナコに行けるのを心待ちにしていた。
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