第8話 街に到着。
お互いに自己紹介をすると賊の話になった。
「まさか、プレイヤーが混ざってるとは思わなかったな」
「そう! 道理で強いと思ったよぉ!」
戦っている間に賊達の死体の中で2体だけ、光の粒子になって消えたのだ。
粒子になって消えるのはプレイヤーだけだ。
魔物も住人(NPC)も、死んでも消えないようになっている。
勿論、18歳未満にはデフォルメ表示になっているらしいが。
ちなみに俺は現実感を楽しみたいのでリアル描写だ。
2人の話を聞くとゼロとヒヨコ姫は、配達と討伐のクエストをやっている最中で、既に討伐は完了し、配達先の街へ向かっていた所、プレイヤーが混じった盗賊に襲われたらしい。
色んなプレイヤーがいるもんだなと苦笑いを浮かべる。
俺は街の場所を教えてほしいと伝えると、一緒に行こうと誘ってくれたので街まで一緒に行く事になった。
道中話している中、2人とはフレンド登録をし何時でも連絡を取れるようにした。
時間が合えば一緒にクエストをやろうという話になり、これから行く街で暫く活動する事を伝えると、2人はクエストを受けた街に戻らないといけないらしいので、少ししたら俺がその街へ行く事にした。
「ほら、見えてきた」
ゼロの言葉で丘の上から前方に視線を向けると、白い家が建ち並ぶ大きく綺麗な街が見える。
外壁は無く、周囲にはポツポツと家が建ち、中心には太陽の光を反射し白く輝く高い塔が建っていて、それを囲うように家や高い建物が建っている。
ここは『タルフィア王国』の南に位置する『ロタリカ』という街だ。
マップにそう載っていた。
「綺麗だなぁ」
「私も初めて見たけど、綺麗だねぇ~」
魔物が居る世界なのに外壁が無くて大丈夫なのかと思ったら、魔物避けの魔道具が街の周囲に設置されているらしい。
ゼロ達がいた街もそうだと教えてくれた。
暫く歩き土の街道が石畳へと変わり街へと入る。
家の外で洗濯物を干している人や、井戸の水を汲んでいる人など、人々の生活が見えてちょっとテンションが上がった。
ここがゲームの世界だと忘れてしまいそうだ。
ゼロ達は冒険者ギルドに配達があると言うので一緒に行って、俺も登録を済ませる。
ラノベのような絡まれるというテンプレは起きず、すんなりと登録ができた。
受付で分かった事で俺は少し驚く。
「2人共もうクラスアップしてるのか、すごいな」
そう、ゼロは剣士の『見習い剣士』から『下級剣士』になっており、ヒヨコ姫は魔法使いの『見習い魔法使い』から『下級魔法使い』になっていた。
「そうでもないと思うけど? もうゲーム内だと半年以上経ってるしな」
「私も3ヶ月くらいでクラスアップしたよ?」
「うぐっ……」
その頃の俺は絶賛サバイバル中だったね。
どうやってクラスアップするのか聞くと、スキルレベルが規定に達するとクラスアップクエストを受ける事ができるらしい。
「私は魔導書に通知がきて、それで受けたよ」
「魔導書?」
ヒヨコ姫によると、魔法使いになると専用の魔導書を貰えるらしい。
説明を聞いて思ったのは、俺の巻物と同じ物だと分かった。
職業ごとにアイテムが変わるみたいだ。
剣士は西洋の剣を貰えるらしいが、武器としては使えないらしい。
しかし、ゼロが嬉しそうに……。
「クラスを最大まで上げると、そのアイテムが専用武器になるかもって噂があるんだ」
とは、ゼロが噂で聞いただけで、まだ誰も最上級クラスまでいっていない、本当にただの噂のようだ。
その後、少し話をして2人は街へ戻ると言うので再会を約束し、そこで別れた。
俺は森で狩った魔物の素材を買い取ってもらいやっとお金を手に入れると、その足で服を買いに行き、店を出た所で武器屋が目に入った。
いい加減刀が欲しいと思っていたので、そのまま武器屋へと入っていく。
ちなみに服装は、中世の村人のように簡素な服で、白シャツに黒のズボンと茶色いブーツだ。
武器屋は少し小さいが品揃えは良いみたいで、壁に色んな武器が飾られている。
入り口付近には、樽に無造作に入れられている剣類があった。
均一の品か?
そんなに金が無いので、樽の中を探って良い武器を見繕う。
ん~、やっぱ刀系は無いのかぁ。
一応、職業は偽装で侍にしてるから刀が欲しいんだが……。
悩んでいると、カウンターの奥から店主の男が出て来た。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
「俺は侍なんですけど、刀を探していたんですが……」
そう言って樽に目を向ける。
「あぁ、刀って東方から伝わった少し反った細い剣のことかい?」
「そうそう」
「あれは特殊な作りだからね、この辺りじゃ何処も取り扱って無いと思うよ?」
マジかぁ……。
自分で作るしかないか?
サスケも自分で作れるようになった方が良いって言ってたしな。
「ありがとうございます、参考になりました、じゃあ……このナイフ下さい」
解体用のナイフを買って店を出ようとした所で、店主が声を掛けてきた。
「職人街に行ってみるといいよ」
「ありがとうございます!」
お礼を言って店を出ると、マップを開いて職人街を探して向かう。
煙突から煙が出ている建物が並ぶ通りに出ると、あっちこっちから鉄を打つ音や、カタカタと機織り機みたいな音まで聞こえてくる。
通りを歩きながら全ての工房を見ると武器を作っている工房はあるが、刀を飾っているような所はどこにも無かった。
こうなりゃ自分で作るしかないと腹を決め、近くの工房に足を踏み入れた。
「すみませーん! どなたかいらっしゃいますか!」
『ちょっと待ってくれー』
と、低い男の声が奥から聞こえてきて、暫く待っていると背の低い筋骨隆々で髭モジャのドワーフが出て来た。
「おう、どういった御用で?」
手拭で手を拭きながら聞いてくる。
「あぁ……」
ザ・職人って感じのドワーフだ。
作業場を貸してもらうのは無理かな? と思いながら聞いてみる。
すると……。
「ほう、刀か……お前さんは知ってるのか?」
「何をです?」
「その刀の作り方だ」
まあ、ネットで見ながらやれば大丈夫でしょ。
「ええ、知ってます」
俺がそう言うとニヤッと笑い、工房を貸してくれる事を了承した。
「ただ、ワシにもその技術を教えてくれ!」
職人だねぇ。
俺は笑って頷く。
「良いですよ、ただ……知識として知ってるだけで、俺自身も上手く作れるかは分かりませんよ?」
「そんな事は分かっておる、誰でも始めはそうじゃ」
では、早速作ってみろと工房へと案内された。
って、今から!?
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